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自遂  作者: 安宰
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彼と出会った日二

彼と、出会った日二




 家々の間から覗いた青年は

『人? 大丈夫?』と目を細めながら聞いてきた。

私が逆光で顔が見えずに顰めっ面で凝視しているとあぁ、見えないかとこちらに近づいて近くに腰掛けた。

『なぁ、あんた大丈夫か?』と質問を繰り返す。私が『大丈夫』と言うと同時にそれはまぁ随分と大きく腹の虫が騒ぎだしたもんで、不穏な空気は一転、青年は笑い過ぎて私の話など聞けるほどではなくなってしまいました。

 どれほど笑っていたでしょう、落ち着いた青年は左手で涙の溜まった目をこすり

『腹が減っただけかい。安心したよ、家によるかい?』とはにかみました。

私はこの街に来て久しぶりに人と会話をした気がして、いえ、会話はしていましたよ。でもなんだか自分が人になれた気がして嬉しかったんです。

『おい、泣いてんのか?』

あぁ、そうです、私は安心したのです。

『今ご飯を食べると嚥下障害を起こすので、なにか汁物をくれませんか。』

自分でも驚いた。喉を通って出たその音は私の声と思えませんでした。長年人と話さなくて疲弊しきった体から出た声はとても小さくて、きっと彼じゃなかったら聞き取ってはくれなかったでしょう。

『汁物か……豆のスープでよけりゃすぐできるんだがいいか?』

彼は少し考えてから聞いてきました。私はもう声を出すのも億劫だったものでこくりと一度だけ頷きそこで意識は途切れました。







 物音に目が覚めて知らない天井に焦っていると奥から『あ、今スープを作ってるから安静にしてて』と青年に話しかけられ先程までの詳細を思い出す。

『失礼した、私はどれくらい眠っていたのですか?』

と聞くと鍋を見ながら背中で一時間も経っていないと答えられる。窓から覗いた空はまだ真っ暗だった。



 それから少したってできたから此方においでよと机に招かれ二人で席につく。

私が食事をしようと伸びた髪を結っていると青年から視線を感じる。

『なにか…?』

と聞きかけて、あぁ…そうだ、青い目の死神とは私だったのだ、と思い出しいそいそと下を向き髪を少し出し青い方の目を隠す。

『あんた、キレイな目だな』

何を呑気なことを、とキョトンとしてると。

『噂してるような恐ろしそうなやつじゃなくて安心したよ、さぁ冷める前に食べてしまおう』

と言われる。無言のまま少し出た髪も結い直し一口食べる。こんな食事を食べたのは初めてだった。母親が料理しない人でお金も無かった幼少の時は冷えた廃棄のパンしか食べたことがなかった。憧れとは行かないが、なんだか夢のようだった。

『自己紹介を忘れてた。』とスープを平らげた青年が思い出したように喋り始める。

『名前は諸事情で名乗れないもんで、この辺ではノイズで通してる。年齢は十六、見てのとおり男。この家に独り暮らし。この街に来て一年くらいかな。』

ズラーッと喋り終わると食器を片しながらあんたは?と聞いてくる。

『私はアローンと名乗っています。年齢は、さぁ、成人は超えています。街に来て二年ほどです。』

食べるのが遅くてすみませんと会釈してから食事を再開すると、ノイズが片し終わってまた元の席に座る。

『なんというかその、アローンは最近噂の死神なんだよな』

と、首の後ろを掻きながら聞いていいのかわからなそうに下を向く。

『生憎私の流した噂ではない為確証はないですが多分そうですよ。』

と食べ終わった食器を先程ノイズが置いたところに重ねに行く。お水を貯め席に付きご馳走様でしたと手を合わせお辞儀をする。

『嫌じゃないのか? 死神なんて呼ばれて』

と、そんなこと考えたこともありませんでしました。

『人からどう呼ばれるかなんて考えた事ありませんでした。』

とノイズを眺めていると突然立ち上がり戸棚からなにか引っ張り出して

『これ着てみろよ、あんまり良いものじゃないんだが』

と服を出してくる。私の今着ている物より悪いものなんてあるのだろうかと思ったが言う程のことでもないので受け取り着替え始める。

『あんた、男だったのか』

と目を丸くしてノイズに言われる。

『女とは一言も言ってないのですが?』と答えると

『喋り方が女っぽいし…髪も長いし声が小さいもんで…てっきり女なのかと…』

あんな年中栄養不足な環境でも女の胸は育つのか…と思いながらふと気づき

『あら、貴方もしかしてこれが目当てで助けたの?』

と声を高くし小指を突き立てる。

『これ?って、ちょ、別にそんなんじゃ!』

とノイズは顔を真っ赤に全力で否定している。なんて初な青年なんだろうと思い申し訳無さが込み上げた。

渡された服は少し大きめのシャツと運動着のズボンだった。

ノイズは

『あんた随分眠りが浅いから眠れるか分からないが俺は寝るよ。もし眠くなったらベッドから落としていいからな』

とニコリと笑って先程までの私が眠っていたベットに潜っていった。


私も少し休もうと部屋の角に近づき丸まる様に座り気がついたら眠りに落ちていた。

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