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エピローグ

 



 クインの予言通り、ここ数年でこの国の魔術は大きく変貌した。


 メラニーの生み出した古代魔術と現代魔術を融合させた新しい魔術は、人々に多くの驚きと発展をもたらし、国の水準が大きく向上した。


 あまりの技術革新に異議を唱える者もいたが、国一番の宮廷魔術師のクインを始め、次期国王候補のケビン王子、ダリウス教授率いる魔術学校の講師陣や名門スチュワート家という名だたる面々が連携し、矢面に立って、その新しい魔術をうまく社会に取り入れていった。



 ちなみに余談だが、このメラニーが生み出した新しい魔術に多くの貴族があやかろうとしたが、オルセン家とローレンス家の関係者だけは徹底的に除外されていた。

 そのおかげで公爵家の地位はジュリアンの代で相当な苦難に陥ることになるのだが、これもスチュワート家を敵に回してしまった報いであった。



 話は戻るが、こうした周りの協力もあって、メラニー本人は公の場に出ることなく、知る人ぞ知る伝説の魔術師という扱いで隠遁生活を送っていた。





「メルル? 餌の時間だよ? どこに行ったのかしら?」


 使い魔を探すメラニーの声がドームの中に響き渡る。


 ここはメラニーの研究のために新たに作られた、採取用の小さな植物園で、最近になってクインの屋敷の工房の隣に建てられたものだった。

 

 伝説級の魔術師になったといえ、メラニーの引き篭もりは相変わらずで、基本的にクインの屋敷で日々研究生活を送っているメラニーであった。


 クインの方はと言うと、メラニーの研究のおかげで、国内外に蔓延る魔物討伐も以前より楽に行われるようになり、時間のゆとりができた為、宮廷魔術師の仕事を減らし、今ではメラニーの研究のサポートに力を入れていた。


 メラニーの研究生活が捗るように、次々と新しい設備を投入するクインは単にただメラニーを甘やかしているだけなのだが、周りからは、クインが優秀な弟子の研究を独り占めするために屋敷に閉じ込めているとか、妻を愛するあまり外に出さないように軟禁しているとか、様々な噂話が流れていた。

 しかし、当の本人はそんな噂話があること自体知らず、むしろ、悠々自適な引き篭もり生活を楽しんでいた。




「こっちにもいないわ」


 小首を傾げるメラニーの元に、昼食のサンドイッチを持ってきたクインが声をかける。


「メラニー? ここにいたか。昼、まだ食べていないだろう? 持ってきたぞ」

「クイン様! あの、メルル見ませんでした? 昨日から姿が見えなくて……」

「メルルなら奥の温室の方で寝ていたぞ。……あれはそろそろ脱皮するんじゃないか?」

「あら。じゃあ、後でいつもより多めに餌を用意しておきましょう」

「そうしてくれ。前みたいに食用の鶏を狙われてはかなわん。料理長がまた嘆くぞ」


 メラニーはクインと一緒に近くのベンチに腰掛けると、クインが持ってきてくれたサンドイッチに手をつけた。


「ふふ。美味しい」

「メルルの食事を心配するのもいいが、自分の食事も忘れないようにしてくれ」

「すみません。つい、研究が捗ってしまって……」


 クインの小言にメラニーは申し訳なさそうに体を縮こませた。


 しかし、反省はするが一向に直らないのをクインはよく知っている。

 これはまた自分が見ていないといけないだろう。


 メラニーの体調管理も自分の仕事のうちと思っているクインは相当にメラニーに甘かった。


「なあ。メルルが脱皮したら、またくれないか?」

「ダメです。今度の研究材料に使いますから」

「あれ、いくらすると思っているんだ。実験用なら古い皮でいいだろう」

「んー。では、代わりにマヌデヒヒの毛皮とコダイショウの鱗をくれたら考えます」

「なっ!? あれは希少価値の…………。はぁ、分かった。交換だ。……それで? 今度は何を作るつもりだ?」

「できてからのお楽しみです」

「……実験するときは必ず呼びなさい」

「はい。お師匠様」


 ニコニコとメラニーが微笑むと、クインは眉間に皺を寄せて睨んだ。


「……まったく。こういう時だけ師匠呼びか」

「普段は師匠と呼ぶなと言ったのはクイン様じゃないですか」

「それは、そうだろう。公式の場で、自分の夫を師匠と呼ぶ妻がどこにいる」

「あ、あれは……久しぶりの社交界で緊張してしまって」

「フッ。そうだったな」


 自分の失態を思い出し、思わず俯いてしまうメラニーに、クインは優しく笑って、その顎を持ち上げた。

 そして、メラニーの頬を大きい手で撫でると、愛おしそうに彼女を見つめる。


「そろそろ、呼び捨てにしてもらってもいいのだがな」

「……うっ。それは、その、まだ恥ずかしくて……。ぜ、善処します」


 顔を真っ赤にさせたメラニーが小さな声で「クイン」と呼ぶ。


 その健気な可愛さにクインは満足すると、顔を引き寄せ、優しく口付けを交わすのであった。




 end.






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