06
学校が終わって。
いつものように並んで帰る2人。
いつもはあさひが話をして。
えちるが相槌を打ちことが多いのだけれど。
今日は逆で。
えちるが積極的に話をした。
内容は、桜子との交流について。
一緒にお昼ごはんを食べて……。
どんなことを話したのかとか……。
桜子の好きなものとか……。
自分が好きな本を教えたとか……。
えちるはそんなことをたどたどしく話した。
えちる「それでね……桜子ちゃんがね……」
えちる「これからも……お昼……一緒に食べようって……」
あさひ「良かったな」
あさひ「新しい友だちができて」
えちる「……うん……」
えちる「凄く……嬉しい……」
つぶやくように言うえちるだけれど。
本当に嬉しく思ってることが分かって。
少しの寂しさを感じながらも。
あさひも同じように嬉しいと思えた。
あさひ「あれって……」
会話の切れ間にあさひは言った。
思わず……と言った感じで。
えちる「どうか……したの……?」
あさひ「あんなところに家なんかあったかなって……」
あさひの視線の先には家がある。
それは本当に普通の家で。
取り立て見た目に変なところはない。
えちる「えっと……」
えちるもその家を見て。
それはえちるから見ても普通の家で……。
えちる「なんだか……よく分からないけれど……」
えちる「前から……あったんじゃ……ないかな?」
あさひ「まぁそれはそうだよな」
新しい家を建てているならそれこそ工事などで気がつくはず。
それがなかったとしたら……。
あさひ「前からあそこに家があった」
あさひ「そう考えるのが普通だよな」
えちる「あの……家が……気に……なるの……?」
あさひ「うん」
気になるというか……。
普通の家と違って……。
何か大事なものがあるような……。
あさひ「えちるは気にならない?」
えちる「わたしは……その……」
えちるは少し考えるけれども。
えちる「あんまり……何とも……思わない……かな」
あさひ「俺が変に引っかかってるだけかもな」
普通の家だから。
風景に溶け込んでしまって。
今まであることに気が付かなかったのかもしれない。
そして……。
あることに気がついたから。
何だか変に特別視してしまうのかもしれない。
あさひは自分でそう納得させる。
どこからどう見ても普通の家なのだから……。
あさひ「変なことを言ってごめん」
えちる「ううん……大丈夫……だよ……」
えちる「そういうことって……たまに……あるから……」
あさひとえちるはそうやって家の前を歩く。
なんの変哲もない、普通の家。
そうにしか見えないけれども。
あさひにはやはり家の存在が気になってしまった。