04
えちる「……可愛かったね……」
あさひ「そうだな」
知久「惚れたか?」
あさひ「そんなわけないだろ」
あさひ「家族と仲いいっていうのは好感が持てるけど」
あさひ「……まぁそれぐらいかな」
知久「あさひってけっこうあっさりしてるよな」
あさひ「そうか?」
あさひ「普通だと思うけれど」
えちる「……うん……」
えちる「あさひくんは……優しい……」
えちる「朝も……起こしてくれるし……」
知久「まぁえちるには優しいよな」
知久「俺には優しくなけど」
あさひ「モーニングコールでもしてやろうか?」
知久「あさひの声で目覚めても嬉しくないな」
あさひ「だろ」
知久「そもそも俺の方が早起きだし」
あさひ「それもそうだな」
いつものような雑談。
あさひと知久は特に転校生への関心もなく。
しいていうなら……。
ああいう風に質問攻めされたら大変なんだろうな。
と転校生とその周りの人達の会話が耳に入りつつ……。
あさひ「転校生が気になるのか?」
えちる「え……」
えちる「……私?」
あさひ「うん」
あさひはえちるに言った。
えちるはいつものように見えたけれども。
たまに転校生の顔を見ていることに気がついた。
えちるが他人に関心を示すのは珍しいことで。
だから思わず聞いてしまった。
えちる「うん……」
えちる「ちょっと……知ってる人……かもだから……」
あさひ「えちるの知り合い?」
そうは言いつつ。
あさひはぼんやりと疑問を持つ。
えちるとあさひは幼馴染で。
ほとんどの知り合いは共通だったから……。
えちる「知り合い……ってわけでもなくて……」
えちる「……もしかしたら……」
えちる「違う……人かも……しれないし……」
えちる「でも……」
えちるはたどたどしく喋るのが癖になっていて。
そうやってしか喋れなくて。
そういうのが気に障る人もいるみたいだが。
あさひと知久は特に気にもせずにえちるの話を聞いた。
えちる「えっと……その……」
えちる「一緒に……お話を……してみたい……なって……」
あさひ「そっか」
言いながらあさひは転校生の席を見る。
まだ質問攻めにあっている。
あさひ「昼休みになれば一段落つくだろうから」
あさひ「その時がいいかもしれない」
あさひ「なんなら俺が……」
えちる「……ううん」
えちる「私が……声を……かける……」
えちる「2人で……話したいことが……あるから……」
あさひ「そっか」
あさひ「それなら昼休みに一緒に食べようって誘えばいいかもな」
知久「俺もそれでいいと思う」
知久「見た感じ、みんなでわいわいって感じでもなさそうだし」
知久「まぁあさひは寂しがるかもだけどな」
あさひ「んなわけないだろ」
あさひ「話したいなら俺は気にしなくていいからな」
えちる「うん……ありがとう……」
えちると転校生。
2人がどういう関係なのかはさっぱり分からない。
聞いた感じだと知り合いの知り合い。
みたいな雰囲気があるとあさひは思う。
でもまぁいいことだよな。
そう結論づけた。
ちょうどその時……。
円「知久はいるか?」
がらっと扉が開いた。
扉のところで教室を見回す女子生徒。
生徒会長の円。
身長が高くてきりっとしていて眼鏡が似合って。
男子はもちろんのこと女子からも人気の高い人物。
智久「いますよー」
そんな円に知久は憧れていた。
人間的にも、恋愛的にも。
知久「昼休みに話し合いですか?」
円「そんなところだ」
円「遅れないようにな」
知久「了解です」
それで2人の会話が終わり。
円は扉をゆっくりと閉めて。
自分の教室へと帰っていくようだった。
とても短い言葉と時間。
しかし……。
最初は来ても来なくてもいいと言われてたが。
今ではこうやって教室まで来てもらえる。
その変化を3人とも嬉しく思っている。
知久「ってなわけで」
知久「俺は生徒会室に行くことになったから」
あさひ「そうみたいだな」
知久「本当に寂しくないか?」
あさひ「寂しいわけないだろ」
あさひ「俺はそこまでデリケートにできてないからな」
知久「それもそうだな」
今日は学食でなんか食べるか。
そんなことを考えつつ。
えちるも知久もうまくいくといいなとあさひは思った。