目指せ悪役令嬢!!
「リカルド様は確かにローラとの恋に破れたけれど、今は自警団として市井を守ってらっしゃいますし、ご結婚もされたじゃない」
私やローラの側にいた時より生き生きとした姿を何度か見かけた。
初恋は実らない。その失敗を糧に2度目の恋を成就したのだ。
「御子息様はそれでも良いかもしれませんが、ご家族にとっては身の破滅なんですよ?」
「それを分かっていて我を通すんだもの。犠牲の事は考えてらっしゃらないんじゃないかしら?」
「お嬢様は、それを分かってらっしゃる上でご婚約されていませんか?」
「私が婚約者を決めているわけではないのよ?」
アンナが言うように、私の心をくすぐる婚約者を選んでいるのはお父様だ。
リカルドのように、私の前でラブロマンスを演じる婚約者ばかり集まるのが悪い。
ハーウェン領も自領土になったおかげで、婚約者候補を名乗りでる貴族も増えたのも原因の一つ。
3度目当たりまでは、お父様も真剣に悩みぬいて決められていたようだが、4度目からは利益率が高そうな相手ばかり選んでいるように感じる。
娘の幸せを願っていないわけではないのだろうが、この4年間の婚約は全て破棄され、利益のみ手元に残る。そういう対応になっても仕方がない。
「もう少し続ける努力をなされても良いんじゃないですか?」
先ほどの勢いは弱まり心配そうな声で呟く。
アンナが言わんとしてる事も分かるのだ。
この4年間で領内は潤い、貴族としての地位も高くなり、国政での発言権も多少なりとも影響する様になった。
忙しない中で、色々とお父様は頑張ったようで。先日弟が誕生してしまったのだ。
弟が生まれた事で、私の立ち位置も少し変わってしまった。
「相手が私を求めてくれないんですもの。努力の価値がないわ」
跡取りが生まれてしまった以上、私が婿取りをする必要はもうない。
10回も婚約破棄される令嬢を娶る貴族は中々現れないだろう。妾にしたいと現れる者はいるかもしれないが。
お父様もそれが分かっているから、この10人目に対しての賠償請求は少なめにしてるのだ。
何事も貰いすぎは良くないし、嫁ぎ先の相談にも乗ってもらっているようだ。
「学校へ行くようになれば出逢いもきっとあるわ」
「お嬢様」
「私の学年には第三皇子殿下が、上の学年には第二皇子殿下もいらっしゃるのよ?その側近の方々もいらっしゃるわ」
きっとその皇子殿下をめぐる愛憎劇。ヒロインに訪れる試練。フラグとラブイベント。それを考えるだけでワクワクする。
「だから、大丈夫よ」
アンナを安心させる為に笑顔を向ける。
大丈夫。皆は不幸になんてならない。弟が生まれたのだから、私が頑張る必要はない。
前世であんなにいっぱい頑張って迎えた楽土だったのに、あっという間に生まれてしまった私。
弟が生まれたから楽してもいいかな?って思うのだ。
舞台は魔法高等学校。
ラブロマンスの王道設定。
私、エリザベス・クラークはヒロインのラブロマンスを成就させ、断罪イベントを発生させたいので悪役令嬢を目指します!!
導入部分はこれで終わりです。
学校生活でのラブロマンス成就の為にエリザベスが頑張ります。
少し長い話になっていくかと思いますが、お付き合い頂けると嬉しいです。