幕間の話 とある同僚から見た村時雨華炎
投稿したと思ったら、不具合で無効になって本編と前書き後書きのデータ全ロストってマジで言ってんの?(憤慨)
正午ぐらいに完成→前書きと後書きを突っ込んで投稿→確認してみると反映されていない→まぁラグみたいなものでしょ→数時間後に確認してみたらやっぱり反映されていない→執筆中小説欄からも消滅を確認→キレそうになりながら復元してリテイク→今ココ
不具合のせいで投稿できていなかったので、こんな時間の投稿です(半ギレ)
「とまぁ、お二人が気になっていた私の学校生活はこんなものです。ご満足いただけましたか?」
千春峰での一連の出来事を語り終えて、私はミニテーブルの上に置いた紅茶に口を付けました。喋って乾いた喉が赤茶色の液体によって潤されていきます。
ほうっと一息つきながら上弦さんと下弦さんの反応を伺ってみれば、二人とも聞きたいことは聞けたようで興味深そうに頷いていました。
「学校生活かぁ~。やっぱり青春って感じがしていいですよねぇ~」
上弦さんが目を細めながらぽや~っとした表情を浮かべて言います。それはどこか昔を懐かしむような、過去を懐古しているように見えました。
そしてそれを見て、息をするが如くごく自然にストレートな毒を吐く下弦さん。
「男の気もなく、アレを卒業できなかった灰色の学生生活を送ったお姉ちゃんとは大違い……なの」
「し~も~つ~る~ちゃ~ん?」
そして上弦さんがにっこり顔に青筋を浮かべてギギギ、という擬音語がしそうなぎこちない動作で下弦さんを睨みつけました。
予めそのことを見越していた下弦さんがそそくさと私の体の後ろに隠れます。
「必殺、赤髪コスプレメイドシールド……なの。さぁ、命に代えても私を守るのだ……! なの」
「えーっと……『ザ・ウォール』!」
下弦さんに無茶ぶりを振られ、取り敢えず知っている中でそれっぽいディフェンスの技名を言ってみました。
「なぜそこで噛ませ技を……なの」
「えぇー……」
お気に召さなかったようです、実に不満げな顔をされました。
どうせなら『アルミューレ・リュミエール』とか『プライマルアーマー』にしておけばよかったのでしょうか。名前が長い方が強そうですし。
いやでもアルテミスの傘とか敗北フラグだから、どのみち同じ反応されてたかも……
「下弦ちゃ~ん。怒らないから華炎さんの陰から出ておいで~」
「下弦ちゃん知ってる……これってそう言ってる人が一番怒ってるパンティー……じゃなくてパティーン……なの」
そんな無体なことを考えていたら、真っ黒な笑顔がとても素敵な上弦さんがいつの間にか席から立ち上がっていて、ゆっくりとした動作でこちらに歩いてきました。
下弦さんは何でもないかのように言い返しますが、一方で私は上弦さんの威圧感に気圧されて冷や汗が止めどなく溢れてきます。
「すいません村時雨さん、下弦ちゃんがご迷惑をおかけしているようで」
「ひゅうっ……」
上弦さんが黒笑顔を浮かべて私に話しかけてきました。
私に対して怒っている訳ではありません。私に怒ってる訳ではないと理解していますが……あまりにもの恐怖で震えるほどです。
「……お姉ちゃん。私が言うのもアレだけど、その笑顔を浮かべながら赤髪コスプレメイドに話を振るのはどうかと思う……なの」
「し、下弦さん……」
「安心するといい……なの。私があの暴君お姉ちゃんをなんとかする……なの」
下弦さんがやる気のなさそうな見た目に反して勇ましく放ちました。覚悟を決めた武者の如き意志の強さが言葉に現れています。
私の陰から出ると、上弦さんの目前に立って……
「罰として下弦ちゃんにはこの後の清掃に連行します」
「ごめんやっぱ無理逃げるなの」
意志の強さはどこ行ったあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
「あっ! 待ちなさい下弦ちゃん! 」
「三十六計逃げるに如かず、なの!」
ぴゅ~っ。
言うが早いが、下弦さんは目にも止まらぬ速さでラウンジから逃げ出していきます。
上弦さんが追いかけようとした頃には、曲がり角を曲がって追撃不可能な距離を引き延ばされていました。
速い、呆れるほど速い。今の速さで百メートル走をすれば十秒の壁を抜けるのではないかと思うレベルです。そんな身体能力をしてるのに、どうして普段の仕事では活用しないのか。
上弦さんは下弦さんへのお仕置きを諦め、大人しく席に戻りました。
「本当にごめんなさい華炎さん!」
上弦さんは深淵の暗黒を感じさせるような微笑みをやめて、本当に申し訳なさそうな顔をして頭を下げました。
「い、いえ、今回は実害とかはありませんでしたから、そんなに気に病まないでください上弦さん」
「いえ、それでもすいません……」
…………何よりも上弦さんのせいで心臓が口から飛び出すほど怖い思いをした、ということは口にしないでおきましょう。
私は壁の隅っこに据え置かれた柱時計に視線を投げかけ、時間の頃合いを計ってお茶会をお開きにすることを提案しました。
「時間も良いところですし、そろそろお仕事に戻りませんか?」
「うーん……そうですねー。ちょっと中途半端な時間になっちゃいましたから、これでお終いにしましょっか!」
意見の一致した私たちは席を立って空になったティーカップを回収用のワゴンに載せました。後で担当の人が纏めて洗ってくださるのでそのままワゴンは放置です。
「じゃあ、また今度下弦さんも交えてお話しましょう」
「はい! 楽しみに待ってますね!」
上弦さんは駆け足気味に廊下を渡っていき、最後にもう一度手を大きく振ってから曲がり角で消えていきます。
私はその姿を見送ってラウンジを立ち去り、自分の持ち場に戻るのでした。
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トラップ☆トラップ☆ガーリートラップ!
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突然だが、私の同僚はとても可愛い。一般にアイドルをするような女の子の美少女数値が一〇〇だとすると、彼女は余裕で二〇〇を飛び越える絶世の美少女だ。
何がそんなに可愛いのかというと、それはもう筆舌に尽くしがたい程可愛いポイントがある。
可愛らしい造形の顔。平均身長よりちょっぴり高い背丈。耳が心地よくなる天使のような高い声。パッチリとした赤い瞳。見事なまでに鮮やかな緋色の髪。そしてそんな可愛さを鼻にかけない謙虚で頑張り屋さんな性格。
これを美少女と言わずして何と呼ぶのかと声高に叫びたくなるほど、彼女は純然たる美少女そのものであった。
その美少女は、名前を村時雨華炎という。私がこのお屋敷で働き始めて数か月経った頃にやって来た後輩の女の子で、お嬢様の付き人見習いをやっているそうだ。
華炎さんは他の先輩たちからも人気で、あの「鬼のメイド」と恐れられるメイド長さんからも一目置かれている。本人の能力的なポテンシャルもあるのだが、やはりその容姿と性格が人気の理由だろう。かくいう私もその魅力に惹かれた一人なのだから。
とまぁそんなわけで、ナチュラルボーン美少女を視界に収めて癒しを得ることが最近の日課になりつつある。配属された班が違うから四六時中一緒にいる訳ではないものの、その効果は絶大であることが仕事の進捗率上昇によって証明されている。
最早これなしにはいられない、という中毒じみた症状も発生しているので、完全にルーティンワークに組み込まれるのも時間の問題であった。
「……えへへへ~、やっぱり華炎さんは可愛いですよねぇ」
「え? 上弦さん、何かおっしゃいました?」
「なんでもないですよ~う。華炎さんのお顔を見てました!」
「私を……? ちょっと恥ずかしいです……」
そう言って顔を赤らめる華炎さんを見ていると自分でも自覚するぐらいにやにやしてしまう。
こうして美少女が若干の羞恥に頬を染めるのは中々にクるものがある。普段は「そっち」の方面には疎い振りをいしているが……一応私も二十歳だ。ぶっちゃけその手の性癖に目覚めてしまいそうだった。
お嬢様が美少女ばっかりメイドとしてスカウトしている理由も、なんとなくわかってきた気がする。
「バレてる訳じゃ……ないのかな……?」
華炎さんが何やら小さい声で呟いたような気がしたが、華炎さんの顔をじっくり眺めるのに忙しくて聞きそびれてしまった。何を言ったのだろうか。
まぁそれはそれとして。
こうやって貴重な休憩時間を共に過ごすことができたのだ。ただ彼女を見つめているだけではあまりにも勿体無い。今は下弦ちゃんもいないことだし、二人っきりでガールズトークに花を咲かせてみよう。
私は脳に飛来しかけたピンク色の妄想を振り切って、意識を華炎さんとの会話に傾けた。
「華炎さんって、本当にきれいな髪してますよねー。つやつやでさらさらだし、ちぢれてないストレートだし……いつもどんな髪のお手入れをしているんですか?」
「髪のお手入れ……ですか?」
まず話題は全女性共通の話題である髪へ。
華炎さんは肩まで後ろ髪を伸ばしていて、ミディアムロングと言われる長さで髪を揃えている。
きめ細かい朝日色の糸で作られているかのような彼女の髪は、正直女性として滅茶苦茶羨ましい。一体どんなことをすればそんな髪を手に入れられるのか、個人的にも興味があった。
だから髪のお手入れについて話を振ってみたが……
「はい。私も腰まで伸びる長髪とか憧れますし、華炎さんも何かしてるのかな~って」
「うーん、特に何もしていませんよ? 勿論風呂とかでは気を付けて洗ってますし、朝のお手入れも欠かしていませんが、特にこれといったことは……」
「なん……だと……?」
馬鹿な……華炎さんのあの素晴らしき髪は、生まれついてのオプションだったというのか……!? 余計に羨ましいというか妬ましいというか……ええい、生来のものならば仕方あるまい。ここは諦めて別の話題を振ろう。
「えーと、じゃあお肌はどんなことをしてるんですか?」
「肌?」
「だって華炎さんのお肌ってすっごいツルツルじゃないですか。どんなクリーム使ってるんです?」
「特にメーカーや銘柄に拘ったことはないです。強いて言うなら、どこでも買えて安いヤツとかですね」
「……お肌もかぁ~……」
華炎さんはお肌も天性の美しさをお持ちのようでした。
「な、ならエステとか……」
「エステは一回も行ったことないですねー。そことは縁が遠かった生活をしていましたから」
「…………化粧品はどんなメーカですか?」
「化粧品はクラスメイトに勧められたお手頃価格なものを言われるがまま買ってて、実はよく分からないんです。できるだけ安いのにしてるとは思います」
「…………お料理はどこで学んだんですか?」
「小さい頃、家庭教師の先生に教わりました。週に二回来てくださって、色んなことを教わりました! お陰様で和・洋・中全部バッチコーイです!」
「…………」
これは、その……なんというか……
【天は二物を与えず】と言うが、絶対にその諺は間違っているということが分かった。華炎さんは二物どころか三物四物くらい持ってるのだから。やっぱり【世界は不公平に公平】って言葉は真実だなぁ……
環境もそうだし本人の資質もすごいし、恵まれに恵まれていると言って良いかもしれない。
むむむ、どうしよう。もう本当に年が上ということぐらいしか勝っている要素がない……しかも、ぶっちゃけそれは女性としては負けているようなものだ。そんなもの誇れるかっ。
「……でも可愛いから許します!」
「はい?」
だが可愛ければすべてよし。
どれ程優れた特技を有していようとも、たとえオーバースペックな能力であったとしても、華炎さんが可愛いという事実の前では塵芥同然の価値でしかない。
『Kawaii』は世界を救う!
『Kawaii』は世界標準語!
つまり可愛いとは究極のラブ&ピース!
はいQED、証明完了。
私は目の前で置いてけぼりになっている華炎さんを尻目に、脳内で滅茶苦茶な方程式を立ててしきりにウンウンと頷くのだった。
「……お姉ちゃんはたまに馬鹿になるのが珠に傷……なの」
と、そこへ美術品のお手入れを終えて休憩時間に入った下弦ちゃんがため息混じりに毒を吐きながらやって来た。
それにしてもナチュラルに思考を読んだみたいな言葉である。これが姉妹の間で共有されるシンパシーというやつだろうか。
「あ、お疲れ様です下弦さん。よかったらご一緒しませんか?」
「ん、それなら是非とも……なの」
華炎さんは他のミニテーブルから椅子を持ってきて、下弦ちゃんの分の椅子を確保する。下弦ちゃんは小さな声で短くお礼を言い、新しくできた三つ目の椅子に座った。
斯くして仲良し三人組はここに揃い、楽しいお喋りの一時を過ごすのであった。
そしてお話の話題は、華炎さんの学校について移る。
「千春峰ではどんなことをしているんですか?」
「ん、思春期学生たちが日々ナニをオカズにしているのかとても興味がある……なの
「下弦ちゃん、やめようね」
華炎さんは自分で淹れた紅茶のカップをソーサーに置きながら、首を傾げて質問の内容を反芻した。
可愛らしい所作に笑みがこぼれる。
「……学校でどんなことをしているか、ですか?」
「そうなんです。私、華炎さんが普段どんなことをしているか気になっちゃって」
「お姉ちゃんは基本的に好奇心旺盛……なの。興味を持たれたらずっと付きまとわれる……さぁ、キリキリ吐け……なの」
失礼な。妹は私を一体何だと思ってるんだ脳内ピンクめ。
「普段の私、かぁ……」
目を閉じて考え込む華炎さん。
少しの空白の時間の後、彼女は可愛らしい微笑みを浮かべて快諾してくれたのだった。
「では、そうですねぇ……まずどんなお話をしましょうか」
そうして華炎さんの長いお話が始まる。私は全神経を傾けて彼女の語りに聞き入った。
私の同僚はとても可愛い。私はそんな彼女が大好きだ。
これからも、華炎さんと一緒に仕事がしていけたらいいな。本当に心からそう思えた。
幕間の章は最後に二章までに登場した主要キャラの紹介を最後に終了する予定です。終了する予定です。大事なことなので(以下略。
最近まで完全に執筆から離れていたせいで腕が鈍り、その上スランプ気味です。何とか今までのカンを取り戻せるよう試行錯誤していますが、今回のように次回以降も遅刻することが予想されます。
そんなかんじで苦しい状況ですが、今後もガリトラ☆をよろしくお願いします!