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トラップ☆トラップ☆ガーリートラップ!  作者: 利中たたろー
第二章 女子校生活と千春峰
41/85

#35 お嬢様非ボッチ説

※注意! 今回は眠い頭を無理矢理動かして書き上げた適当な話ですので、おかしいと思っても読み流してくださいませ。



 今日の千春峰は新入生の入学式もあったことですので、全ての生徒は午前中で解放されました。お日様も直上に昇っていて、ぽかぽかとした春の日差しを放っています。これはいい昼下がり。



「あっ、華炎ちゃんだ! Здравствуйте(こんにちは)!」

「来たわね、華炎。帰るわよ」

「お待たせいたしましたお嬢様。それからこんにちは、ルナーシアお姉様」



 予め決めていた合流地点である千春峰の校門に来ると、そこには私を待っていてくださったお嬢様と、お嬢様のご友人であるルナーシア様がいらっしゃいました。

 私はお嬢様にメイク講習が終わったことを手短に伝えると共に、ルナーシア様へ挨拶を返します。



「『お姉様』は他人行儀で悲しいわ。最初に会ったときみたいに、「ルナ先輩っ♪」って呼んで?」

「あ、あははは……お姉様呼びの方は善処しますが、流石にその呼び方はちょっと……」



 というかそんな名前でルナーシア様のこと呼んでませんよね? 仲良し設定の捏造は止めていただけません?

 私は曖昧な笑みを浮かべながら心の中でツッコミを入れました。



「それでは、ルナーシア様と呼ばさせていただきます……よろしいですか十六夜さん?」

「構わないわ、好きに呼びなさい。その方がルナも喜ぶから」

「しくしく……悲しいわ。あんなに「ルナちゃん」って呼んでてくれた華炎ちゃんが冷たくなっちゃった……」

「……喜んでませんけど」

「嘘泣きよ。分かってるくせに」



 なぜ嘘泣きをするんです……あと私は一回も「ルナ」の愛称で呼んだことはありません。そんなに愛称で呼ばせたいのでしょうか。そんなにしつこいくらい要求されると、ぶっちゃけ私の中でルナーシア様のことを面倒くさい人認定せざるを得なくなってしまうのですが。



「……華炎。面倒な女とは思っても、それは言わぬが花よ」

「お嬢様が口に出したらお終いですそれ」

「十六夜も華炎ちゃんも私のことをそんな風に思っていたの!?」



 お嬢様の言葉にルナーシア様がよよよと泣き崩れる演技をしました。ああ、余計なことを口にするからまた面倒くさい事を……さては遊んでますねお嬢様。

 こちらが下手なリアクションをすればルナーシア様は面倒くさい事をする、覚えておく必要がありそうです。私は心のメモにそっと書き留めて、ルナーシア様への対応を考えたのでした。


 ともあれ、とお嬢様が悪ふざけをやめて本題を切り出しました。



「そろそろ帰りましょう。今日はちょっと早く帰りたいの」

「どうかされたのですか?」

「ちょっとね、予定みたいなものよ」

「予定? 今日は特になかったと記憶していますが……?」



 毎日カレンダーを見て客人の有無やイベントの日程などは確認していますが、今日の日付には何かしらあるとは書かれていなったはずです。これでも付き人見習いですので、スケジューリングはしっかり把握していました。それでも予定があると言うのであればお嬢様の勘違いでしょうか?

 私が一人でそのように首をかしげていると、お嬢様は私の考えを読んで説明をしてくださいました。



「今日になって急にできた予定なの。帰ったらすぐにでも対応しなくてはならないわ」

「今日になって、ですか。一応お伺いしますがそのことは屋敷にも?」

「ええ、セレンにしっかりと伝えているわよ」

「分かりました。私も屋敷に戻ったらお手伝いさせていただきます」

「そうしてくれると助かるわ」

「ええ、やってみせます。やる気、那由多パーセントです!」

「……それ、恥ずかしいから外でやるのは控えなさい」

「どうしてッ!?」



 酷い言いようですね。このギャグをやれば、必ず両親も妹も口の端を引き吊った変な顔で笑ってくれたのに。まあ笑いの感性の話は置いておくとして。


 お嬢様は校門の外の道路に視線を向けて、そこ留まっている一台のリムジンを指差しました。



「セレンに頼んで迎えの車を寄越させているわ。それに乗って帰りましょう」

「かしこまりました。エスコートはお任せください」

「いえ、それは車の運転手の仕事なのだけれど……」

「あ、そっか……この前セレンさんに人の仕事を奪っちゃダメって言われたんでした……」

「あなたってメイドは……優秀すぎるのも考えものね」

「も、申し訳ないです……」



 呆れ気味に肩を(すく)めるお嬢様。口にはしていませんでしたが、『いつになったら学習するんだこの駄メイド』という叱責の声が聞こえるようです。私はうなだれながら腰を折りました。

 そんな様子を見ていたルナーシア様は一言。



「華炎ちゃんって、将来レッド企業に入ったらパワハラでやめられなくなっちゃいそうよねぇ」

「……え?」

「……ん?」



 レッド企業……?

 ルナーシア様の仰ったことがよくわからず、私とお嬢様は揃って首をかしげてしまいます。ルナーシア様も、私たちからの反応が微妙なことに困惑している様子でした。

 レッド企業というとあれですかね、ブラック企業を通り越して従業員の血に塗られたレッド、とか? でもそんな単語聞いたことありませんが……

 すると、お嬢様が何かに気付いたように小さく声を漏らしました。



「あ……」

「お嬢様? どうかされたのですか?」

「いえ、ちょっとね……ルナの悪い癖を思い出したの」

「はぁ……?」

「ルナはよく日本語を間違えて覚えてしまうの。多分レッド企業というのも、ブラック企業の言い間違いじゃないかしら」

「ああ、なるほど……」

 


 なんとなく納得してしまいました。たしかにルナーシア様っぽいです。日本にまだ忍者がいると思ってそうですし。

 ともあれ、そのルナーシア様はお嬢様の指摘を受けて、自分の間違いに気がついたようでした。



「あれ? また私間違えちゃったかな?」

「そうね。レッド企業ではなく正しくはブラック企業よ」

「やーねー。ヤーパン(JAPAN)の言葉は難しいわ」

「露骨な外国人アピールはやめなさい」

「ちぇー」



 子供みたいな仕草でおちゃらけるルナーシア様。高校三年生にしては年不相応な行動に思えますが、自然とそれが似合って見えるのはルナーシア様の人徳が成せる業でしょうか。

 しかしお嬢様にとっては見慣れたもの。特にこれといった反応を示すこともなく、そそくさとリムジンへ歩いていきます。



「ほら、そんなことはいいからついてくる。置いていってしまうわよ」

「あ、お待ち下さいお嬢様! そ、それでは失礼しますルナーシア様、さようなら」



 私は別れの挨拶をしなかったお嬢様の代わりにルナーシア様へ一礼し、後を追うべく小走りに駆け出して――――



「うふふ。華炎ちゃん、『さようなら』はまだ早いわよ?」

「え……?」



 ルナーシア様の笑声によって足を止めるのでした。



「実はね、私も十六夜のお屋敷に行くことになったの」

「ルナーシア様もですか?」

「ええ、さっき十六夜と話してたらそうなってね」

「ああ、なるほど。盛り上がっていらっしゃっていましたからね」



 やけに楽しく談笑されていたのでどうしたことだろうと思っていたのですが、そういうことだったとは。そうですかー、ルナーシア様も屋敷にお招きするのですねー。


 ……あれ、じゃあいきなり決まった予定ってつまり……?



「あの、お嬢様」

「なに?」

「もしや、急遽来ることになった客人というのは……」

「……ふふっ、察しがいいじゃない」



 お嬢様は自分の付き人が優秀であったことを喜ぶように破顔するのでした。



「今日の来客は、そこにいるルナなのよ」

「…………マジですか」



 思わず敬語とため口が入り交じった喋り方をしてしまいました。屋敷だったらセレンさんに折檻(せっかん)されていたところです。そんな言葉が出てくるくらいには衝撃的なことでした。


 何がそんな衝撃的なのかと言えば、他人を自分の屋敷に誘うということがお嬢様の性格からはあまり考えられなかった行動だからです。

 なにせ、お嬢様はああ見えて他人と距離を置きたがる性格をしています。自分のテリトリーを他人に冒されるのを嫌い、自分の身内でも限られた人物しかプライベート空間に入れることを許可しません。私もお嬢様を起こすために寝室に入ることは許可されますが、逆に言えばそれ以外の用事では入れないのです。


 そんなお嬢様が屋敷に自分から招くとなれば、誰だって驚くというもの。ルナーシア様は本当にお嬢様から信頼されているのですね。

 ちょっとこのネタでいじってみましょう。



「……何よ。その変な目は」

「いいえー? 生暖かーい目で、お嬢様を見ているのですよ?」

「な、なんでそんな目で見られなくちゃいけないの!」

「どうしてでしょうねー。ボッチお嬢様にとてもいいご友人がいらっしゃったからですかねー?」

「…………いいから行くわよ! さっさとしなさい華炎!」

「ふふふっ。はーい」



 お嬢様はほんのり顔を赤くして、私たちの方を振り替えることなく真っ直ぐにリムジンへスタスタ歩いていってしまいました。そんな様子を見たルナーシア様は半笑い。友人の面白い一面を見て、笑いをこらえきれなかったようです。



「華炎ちゃんったら、ご主人様をいじめちゃっていいのかな?」

「えへへ、実は良くないです」

「まぁ、悪い子」

「ルナーシア様だって、口がにやけてますよ」

「それはいけない。十六夜には内緒ね?」

「そうですね、お嬢様には内緒です」



 私たちは顔を見合わせてこっそり笑いあいました。



「そこ! 早くなさいと言ってるでしょう! いい加減に私で笑わないの!」

「はーい」

「ごめんねー」



最近なんだか二章の着地点を見失っているような気がします。次の章でやることは決まっているのですが、そこまで辿り着くのが長い……


第二章はまだちょっと続くので、もうしばらくお付き合いくださいませ。

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