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トラップ☆トラップ☆ガーリートラップ!  作者: 利中たたろー
第二章 女子校生活と千春峰
34/85

年末の挨拶 (あとおまけ短編)

※このお話は、たたろーさんが何の脈絡もなく「年末出汁それっぽい話したほうがよくない?という下らない発想がきっかけで作られた急造品です。

中身のチェックもほとんどせずガバガバな仕上げになっていますが、ソレデモイイヨ! という方だけお読みになってください。



さて、気がつけば師走ももう終わり。すなわち、暦の一年が終わるということを意味します。

このどうしようもない駄作をお読みの親愛なる読者の方々は、大晦日はどうお過ごしになられていらっしゃいますか?


こたつの中でぬくぬくしているのかもしれませんし、明日のための雑煮や汁粉・ぜんざいのご準備をされているのかもしれません。

あるいはここぞとばかりに休暇を用いて趣味に打ち込んでいるのかもしれませんし、パートナーがいないことを嘆きながら同志たちと傷をなめあっていらっしゃるのでしょうか?


まぁ、ここの主は季節やイベントに興味を示さなくなってから正月らしいことはほとんどしていないようですが、親愛なる皆様は自分なりに楽しい年の節目をお楽しみくださいませ。



◇   ◇   ◇



さて、そんな前置きもそこそこにいたしまして、この場を借りて皆様に御礼申し上げたいと思います。


主がしょーもない思いとアイデアから始まったこの作品、【トラップ☆トラップ☆ガーリートラップ!】ですが、七月の終わりに投稿を始めてからはや(だいたい)半年。

それだけの時間をかけてまだ二章も途中なのか! という声が聞こえてきそうですが、そんなものは餅と一緒に(つち)で潰してこねてしまいましょう。


ここまで大きな連載の中断や挫折がなく来られたのは、間違いなくわたくしども(というか利中たたろー)の力だけではございません。

ちらりと覗いてみるPVの統計や、どれだけの人がこの作品を読んで、娯楽として楽しんでいただけたかなぁ、と想いを馳せる毎日。ブックマークが増えたり消えたりするごとに一喜一憂し、「感想とか評価とか誤字脱字報告とかレビューとかじゃんじゃん来てもええんやで?」などと、底辺作家の癖していっちょまえにそんなものを求めておりました。


そうです、少々ベタな決まり文句のようではございますが、利中たたろーがここまで執筆を続けることができたのは、他ならぬ読者の皆様のおかげです。

本当にどうもありがとうございました。


そして、これからも末永く【トラップ☆トラップ☆ガーリートラップ!】にお付き合いくださいませ。



◇   ◇   ◇



はい。これにて御礼はおしまいでございます。


ここの作者は私のような「語り手」というフィルターを通して、お話やソレの前後に挟まれる小話をお届けするという、なんとも下らないメタ設定を儲けております。

おかげでごっちゃになってしまったことでしょうが、先程までの御礼も、私「語り手」が主の代わりに申し上げたということになるのですよ。


「せめて自分でお礼を言えよヒキニート」、と主を罵ってください。私の愉悦が深まります。


――――え? たまーにある私と主の会話劇?


……(回想)……

……(懊脳)……

……(思案)……


――――あれは例外です。ザッツエクストラ。あれだけはメタフィルターを通しておりません。


はい、このお話おしまい。

次の話題に移りましょう。



折角こうして番外編の更なる番外をむりくり捩じ込んだのですから、年末の挨拶で終わるのは味気ないものですね。


仕方ありません。

ここは一つ、ガリトラ☆でのちょっとしたサブストーリーでも語ると致しましょう。


 それでは皆様、お目とお耳を頂戴致します……







―――――――――――――――――――――――


  トラップ☆トラップ☆ガーリートラップ!


―――――――――――――――――――――――







 ある寒い冬の日のことだ。



「師匠! お雑煮できました!」


「おーどれどれ? ちょっと見せてみろ」


「はい。渾身の出来と自負してます。是非とも師匠に見てほしいです!」


「なに? 仕方ねぇなぁ。じゃあいっちょ、本気で採点してやるかね……」



 今からだいたい十年近く前のこと。

 村雨焔がかつて住んでいた、「村雨」の札がかけられた一軒家にて。


 まだ小学校に上がったばかりの頃の焔が、踏み台に乗っかりながら台所に立っていた。

 そしてすぐ側には栗色の髪を無造作に短く切った、大学生ぐらいの年齢の女性が一人。


 彼女の名前は【朝雛爛(あさひならん)】、週に三回ほどの頻度で村雨家に顔を出し、焔に料理を教えている人物である。

 この家にはもう一人勉強や体術を教える『家庭教師』がいるのだが、爛は専ら料理を担当している、言わば『師匠』のようなものだ。



「こんなものです!」



 焔は舌足らずながら、目を輝かせながら爛にお椀を差し出した。

 その茶色のお椀の中には、具の少なめなお雑煮が入っている。



「ほうほう、見た目は悪くないな……問題は味の方だ」


「はい! どうぞお召し上がりください!」


「ああ、頂くぞ」



 栗色の髪の爛は差し出されたお椀を受け取り、慎重に香りを確かめながら中のお雑煮を嚥下(えんげ)した。



「ど……どうですか!?」



 焔は緊張した面持ちで爛を見ている。

 師に己の料理の腕を評価してもらう瞬間を今か今かと待ち望みつつも、もしも失敗していたらどうしよう、と心配している様子だ。



「ん~~…………」



 爛は二口三口ほどお雑煮を飲み、両目を閉じて何かを考えこんでいる。


 それは主婦が今日のおかずを何にしようかと悩んでいるかのような気安さが感じられるが、焔はむしろ剣の達人がどのようにして目の前の大木を斬り倒そうかと考えているような真剣さを感じていた。


 やがて彼女はお椀を置いて、片目を開きながら焔に尋ねた。



「おい焔、お前レシピ通りに作らなかったな?」



 その一言に、焔は銃口を向けられたかのような重圧感と、身がすくむほどの恐怖を覚えた。

 幼い身なれど、爛の眼光が子供だからといって加減も手心もなく、大人のプロと同じ働きを求めているのだと焔は感づいていた。


 焔は下手をすれば心臓の動かし方さえ忘れそうになるほどのプレッシャーを一身に受けながらも、勇気を振り絞って爛の問いに答える。



「そうです。ベースは師匠のレシピ通りに作りましたが、香り付けは柚子ではなく生姜を使いました」


「やっぱりか……道理で風味が独特なわけだ。それはお前のアイデアか?」


「はい。柚子の優しい香りもいいものですが、寒い冬に体を暖める効果に加えて、ピリッとした香りが食欲をそそるのではないかと思ってためしてみたんです」



 焔がそう答えると彼女は今まで出していたプレッシャーを止めて、焔に対し薄く笑ってみせた。

 魂に直接おもりを引っ付けられたかのような感覚がなくなり、正常な心拍数に回復していく。



「ほーう。よく考えてるじゃないか、ガキんちょの癖に」



 一瞬死ぬかと思った状況から脱したことに安堵しながら、焔はそれよりも評価の方が聞きたいと彼女を急かす。



「それで、お料理の方はどうでしょうか」



 焔は期待の眼差しで師匠を見つめたが、彼女は(けわ)しい顔で加減を評価した。



「それがなぁ~……アイデアの観点でいい点をやってやりたいんだが、ちょっと……」



 師匠は頭を掻き毟って、なんとも言えなさそうに眉をしかめる。

 その仕草はとてももどかしそうで、とても悔しそうな表情だ。


 焔は彼女その様子から、結果はあまり芳しくないのだと察することができた。



「……生姜はやはり、お雑煮には合いませんでしたか……?」


「いや、そんなことはない。実際に生姜を淹れる雑煮はあるし、あたしもちょっち試したことがある」


「じゃあ、何がいけなかったのでしょう」


「多分だけどなぁ~……出汁(ダシ)の問題じゃねぇかと思うぞ?」


「?」



 師匠の言葉に焔は首を傾げた。


 そんな焔を見て、師匠は失念していたとばかりに説明をする



「お前はまだガキんちょだからよく分かんねぇかもしれないが、こういう汁物は出汁が何よりも重要なんだよ。出汁にも色々あってだな、カツオとか昆布とかニボシとか……」


「それでその、出汁がどうしたんですか?」


「おっと、そうだったな。あたしがお前にやった雑煮のレシピは鶏ガラ出汁なんだが、これはあまりお前の作ったやつに合うと言えないんだよ」


「なるほど……」



 焔はどこからともなくメモ帳とペンを取り出し、師匠が言った言葉を要約して纏めた。

 まっさらな白地の上に黒鉛が走る。



「一応あたしはこの場合にベストな出汁を知っちゃあいるが……こいつは次にあたしが来た時の宿題だ、あててみろ」


「わかりました。後で研究してみます!」


「その意気だ焔、料理は研究と実践の積み重ねだからな。お前が自分の力で学ぶんだな」


「はい! 師匠!」



 年の瀬が迫る冬のある日のこと。

 どこの家とも同じように、赤髪の家族の家からは楽し気な笑い声が響いたのであった。





おっと、失礼ながら決まり文句の挨拶をすっかり忘れてしまいましたね。

これはいけません。最後にしっかりと挨拶をして、それを締めと致しましょう。



それでは皆様、よいお年を。

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