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第三話

 アレン殿下の情けない姿を見たわたしはある意味で決心がついた。


(わたしから婚約破棄を申し込もう。それで殿下がしているわたしに対するいろんな誤解もとけるし、何より今までのイライラを晴らすのにもちょうどいい)

 そう思い「殿下」と話しかけようとしたが、それはレイくんの声によってかき消された。



「…ぷっ!あっはは!ざまぁねぇーな、アレン王子!お前みたいなのが第一王子で大丈夫かよこの国」


「貴様っ!殿下になんて無礼なことを!!」


 今までの緩い口調からガラッと砕けた口調に変わったレイくん。うん、それもあり。レイくんは何しても素敵だから許せるわ。

 アレン殿下に向かって暴言を吐き出したのを、近くにいた騎士が止めようとしたがそれでもレイくんは続けた。


「無礼?じゃあそいつがしたことは無礼じゃないっていうのか?婚約者をないがしろにして他の女と遊んだり、ありもしない罪を押し付けようとしたのは」


「口の聞き方に気を付けろ!殿下に向かってなんだその物言いは!」


「殿下殿下って…王子だからって何でもしていいって訳じゃねえだろ!?」



 その一声でざわついてた会場は一気に静まりかえった。わたしが口を出す隙は一切なかった。


(結局思ってたことほとんどレイくんが言ってくれたな~…ってあれ?この状況、今更だけどわたしレイくんに助けてもらった感じ?ヤバい、客観的に見すぎて訳がわからなくなってきた。だとしたら…え?)


「えーーー!!」


「!?どうしたのですか?シェフィ嬢」


「あっ、いえ何でもないです。なんか叫びたい気分だったので…」


 会場が静まり返ってた分、声が余計に響いて注目されてめっちゃ恥ずかしかった。

 自分でも言ってて意味のわからないことを言ったせいか、殿下に如何わしいものでも見るような目で見られた。


(…でもそんなことより、れ、レイくんが…!レイくんがわたしの味方を!助けてくれてた?…レイくん!あーなんて君は天使なんだ!めっちゃ笑われてるけどいいや!可愛いから許す!もうさっきのことなんてどうでもよくなっちゃった)

 なんてレイくんにうつつを抜かしていたら、ある肝心なことを忘れているのに気がついた。


(あっ!そう言えば婚約破棄。「そんなのこちらから願い下げよ!」って言ってやるんだった!よーし…)

 そう言おうとした声はまたもやレイくんの声によってかき消された。


「…で。そう言えば婚約破棄だったっけ?そんなのむしろこっらから願い下げだよね?シェフィちゃん?」



レイくんはそういってこちらを振り向き、ニコッと笑った。


(ああああああー!!天使?天使なの!?

レイくんがああ!シシシェフィちゃんって呼んでくれたーー!!というかレイくんと思ってること一緒って…?なにそれ幸せ過ぎない?わたし明日死ぬのかな?ああなんて幸せなんだああー!)


 わたしは多分今、人生で一番最高に引き締まらないだらしない顔になっているだろう。それでもいい。


「はい…!」


 まるでプロポーズを受ける乙女のような答え方になってしまった。わたしとレイくんがそんな受け答えをしていると、アレン殿下が話に割って入った。…ちっ。邪魔なやつめ。


「ま、待て!どういうことだ、シェフィ嬢!」


「はい?何か?」


 わたしは、レイくんとの会話を遮られたことに対し、殿下に怒りの眼差しを向けるもむなしく全く届いていなかった。



「何故この私が婚約破棄される流れになっている?…まさか、今までのはお前がその男にそう言うよう脅していたのか!」


「は?」

「へ?どうしてそうなったの…ですか?」


「アリス嬢に俺を取られるのが許せなかったのだろう?それで気を引くために自ら婚約破棄するなんて馬鹿馬鹿しいことを。

でも俺は心が広いから、今謝れば特別にこれまでのことを全部許してやる。どうだ?」



 何に納得したのか、何故か急に得意げになった殿下。しかし、この言い方だとまるで全部こちらに非を擦り付けているように聞こえる。今さら信頼を取り戻せるとでも思ってるのだろうか。

(うわー、勘違いにも甚だしいわ。さっきのアリス嬢を庇うカッコよさ何処いったの?もう一回聞きたい、なんでそうなった。あれだけの十分すぎる証拠があって。…ああそっか、馬鹿なのねこの人)

 勝手に自問自答して解決した。よし、それじゃあ今度こそは、わたしが直接殿下に言ってやろう。それで少しはわたしの思いをわかってくれるはず。


「恐れ入りますが、殿下。先ほどレイ様が仰った通り、婚約破棄を申し上げるのはこちらのほうです。わたしはそもそも貴方のことをそこまで慕ってるわけでもありませんし」


「は…?な、何を。だからそれで俺の気を引くつもりなら無駄だと…」


「あら、誰がいつそのようなことをおっしゃいました?わたしは一言も申し上げておりませんのに。偽りの証拠で断罪をでっち上げようとする殿下は、やっぱり想像力がとても豊かなのですね!」


「お前…!この私を貶しているのか?」


「いいえー?ただ真実を述べただけですよ?それで?何故私が許されなければならないんですか。被害者はこちらのほうですのに」


「何が被害者だ!ふざけたことを…もういい!父上に言いつけてやる!お前たちは王子に対する無礼罪で国外追放か身分剥奪の身になるんだ。せいぜいそれで罪を悔やみな!」


(なんか、どこぞの坊っちゃんのようなセリフだわ…。あわよくば反省してくれることを願ってたんだけど、この様子じゃ無理そうね。なんか逆ギレして炎上してるし…)


 わたしは呆れ果てて、もうこいつと話しても無駄だと諦めた。

アレン殿下の性格と呼び方が安定しなくて申し訳ありません…m(_ _)m

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