第二話
(魔法だ…!レイくんすごい!流石だよ!一つ一つの動作がもう可愛いよ!)
今さっきレイくんファンクラブに入り始めたわたしはそんな場違いなことを考えていた。その間に殿下は書類を受け取り満足気に頷くと少年に下がるように告げた。
そして軽く目を通す素振りを見せると、急に青ざめ焦りだした。
「…殿下?」
「…い、いやなんでもないっ!これは、そ、その…手違いで…!お、おいっ!レイ!」
明らかに様子がおかしい。すごく慌てた様子で書類を隠そうとしていた。
(どうしたんだろう。わたしを陥れるための証拠じゃないの?それとも何か不都合な点があったとか?うーん…)
と不思議に思っていると、少年が不意に不敵な笑みを浮かべ、アレン殿下に「どうしたのですか?」と言った。
(うわ、こっわっっ!最初この子天使とか思っちゃったけど、ちょっとなんか闇を感じるよ?レイくん。でもそんなとこも可愛いよ!)
そんな状況も気にせず、またもや場違いなことを考えていると、アレン殿下はレイくんのもとへより、何やら小声で話し始めた。いいな。
話をしていくうちにだんだん殿下の顔つきが険しくなっていった。会場にいる人たちも何がなんだかわからず混乱していると、殿下とは逆にやけににこやかなレイくんが会場に響きわたる大きな声で叫びだした。
「さーて、皆さーん!気になるでしょ?この書類。特別に見せてあげましょう!」
「おい!やめろ!」
パチン
レイくんが指をならすとともに何もない会場の上から突如、沢山の紙が降り注いだ。
アレン殿下は真っ赤なのか真っ青なのかよくわからない顔をして必死になってその紙を広い集めようとしているが、紙はすでに会場中に降り注いでいるのであまり意味はない。
(うわぁ~滑稽。好感度だだ下がりだわ~。むしろこちらから婚約破棄をお願いしたい。だって一国の王子が必死になって床を這いつくばってるんだよ?そりゃもう…うん!フォローの仕様がない!レイくんカッコいい!)
…というか
「なんだろうこの紙?」
「見るなっ!!」
一瞬声にビクッとしたが、無視して目を通す。なんとなく題名を口に出してみる。
「なになに…?アリス・ローレイタ嬢とアレン・ルディア・リール殿下の…犯した罪?」
(…えっ?わたしの罪じゃなくて?あっそういえばレイくん「彼女が犯した罪」とは言ってたけど、別にわたしとは一言も言ってなかったような…?)
書類を読み進めていくと偽装断罪協力書とかかれた契約書にアレン殿下とローレイタ家のサインが施されているものがあった。
内容は成功すればアリス嬢と婚約し、ローレイタ男爵家には多額のお金を寄付するというもの。
さらには、二人が楽しそうにダンスを踊ってる写真も載っていた。本来、婚約者がいる場合はその人をダンスに誘うのが基本であり、他のましてや未婚の異性と踊ることはタブーとされていた。
しかも第一王子ともあろう方がそのようなことをするなどもっての他だ。
(なるほど。だからあの日会場に殿下がいなかったのね)
会場はもう何がなんだかわからなくなり、少しパニック状態が起きていた。落ち着いて来たかと思うと、今度はみんなの憎悪の矛先がわたしからアリス嬢の方へ向いていた。アリス嬢はちょっと涙目になり、「なんでぇ?アリス間違ってないのに…」とぼそぼそ呟いていた。
するとアレン殿下が急にアリス嬢の前に庇うようにして立ち、
「彼女は悪くない!すべて私の責任だ!」
と叫んだのだ。
これには私も(あ、ちょっと見直したかも)と思ったが、さっきの現場と書類を見た後だと非常に残念で仕方がないのはなぜだろう。