表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/23

3 まともに対面しました


今はジーク殿下の私室前にいる、リヒトも一緒にいる。

なんか緊張してきた、まともに会話をするのは初めてなんだよな

いや、あの救援隊にいたんなら話しをしたことがあったんだよな?


ってか誰だったんだ?


そんなことを考えながらリヒトはジーク殿下の私室の扉をノックした。

しばらくすると、中からドスンという音が聞こえた。


「ジーク? 何かあったのか?」


しかし返答はない。

王城といえ敵が侵入しないとは限らない。

リヒトと俺は最悪の展開を想像する。


「ジーク、開けるぞ」


返答がなかったがリヒトはドアノブをひねって扉を開いた。

部屋は悲惨な状態だった。

ただ悲惨といっても敵襲とかではなくて、積み上げたであろう書類や本が雪崩れてきていた。


「ああそういうことか」


事実の確認をしてリヒトはため息を吐いた。


というか昨日は俺を襲ったのが王都の宿だったのはこんな部屋に連れ込めなかったから

そして今日会う予定だったとリヒトから聞いているだろうに掃除の一つもしていないのか


王都でうろうろする時間があるのなら掃除くらいするか人に頼めばいいのに


大丈夫かこいつ?


なぜか犯された怒りよりもそんなことが心配になったしまった。



なんとか紙の雪崩からリヒトがジーク殿下を助けだした。

助け出された殿下は軽く埃を払い。

身だしなみを整えた後、女性ならば見惚れるような笑顔でこちらに挨拶をしてきた。



「お見苦しいところをお見せしました。スタード・ベルジュ公爵」

「いや気にしていません、それよりも大丈夫でしょうか? ジークベルト殿下」

「ふふ、相変わらず、貴方はお優しい」

「そんなことはありませんよ、普通のことです」

「そんなに堅苦しくなくていいよ、もう婚約者だし、昨日の事もありますしね」


いい笑顔で流れるように言葉を紡ぐジーク殿下に

どういう対応をしようか言葉を頭の中で選んでいた。


「そういえば、ジーク聞きたいことがある、お前スタードと婚前交渉をしたのか?」


おっと、そんな聞きにくいことを言葉を選んでいるとは聞くのかよ。

さすが、リヒトだな。


「ベルジュ公爵、そんなことも兄上に言ったんですか? 照れるじゃないですか」

「あーその覚えていないんだが本当にしたのか?」

「もしかして催眠魔法が効きすぎたんですね、僕はそういうことをするのが初めてだったので、貴方に気持ちよくなってもらおうと快楽をより感じるような魔法をかけたんですが……記憶をとばすほどになるとは思わず、申し訳ございません」


いや、そもそも同意をした覚えがないのだが?

それを聞いた方がいいよな


「大変申し上げにくいのですが、同意をした覚えがございません」

「御冗談を、同意してくださりましたよ?」


……こいつどこまで本当の事を言っているんだ

仕方ない鑑定魔法を使うか


実はこの魔法は人の嘘も鑑定をすることができる。


ばれないように発動する。


「先程の言葉に嘘はありませんね?」

「もちろんないよ、そもそも夫婦になるのに嘘なんかつくわけないじゃないか?」



マジか、ウソじゃないだと


本当に同意したおぼえがないのだが



「もしかしたら魔法の副作用で記憶が飛んだのかもしれませんね、……本当に申し訳ございません」


「いや、大丈夫だ、だが次からは魔法をかけずにして欲しいな」

「スタード、それだと次があるように聞こえるがいいのか?」


リヒトが小声でそう突っ込む。

確かにそうだな、だがもう訂正することはできないし

ジーク殿下はにっこりと笑っていた。


「ええ、次は普通にお願いしますから安心してください」

「お、お手やらかに頼む」

「勿論、愛しい貴方のためならばどんなことでもいたしますよ」

「えっと、本当に俺の事を愛しているのか?」


それが一番聞きたかった

いや男と婚約してさらに婚前交渉もするぐらいだから本気だろうとは思うが一応確認だ


「なにを言っているんですか、兄上から聞いているかもしれませんが貴方は僕の初恋です。どんなに時間が経とうとも貴方以上に愛しいと思える人には会えなかった。それほどまでに僕は貴方の事を愛していますし一生一緒にいたいとも思っています」



ジーク殿下の瞳には熱しかなかった、この熱には覚えがある。

本当に真剣なんだなぁ


そしてそんな熱のこもった瞳からは逃げることはできないということだ。



もう俺は諦めた。

うん、もう諦めたよ。


とりあえず、我が家は跡取りはいるから

子供が出来なくても大丈夫。

うん大丈夫だ。


しかし殿下はできなくてもいいのだろうか


と微妙に現実逃避をしているとさらなる爆弾を落とされた。



「それと貴方が望むのなら僕との間に子をもうけることもできるよ」

「あの殿下それはどういう意味で……」

「実は僕は人を性転換することのできる魔法を見つけたんだ。動物でだけど実験も成功している副作用もないから僕が使うにしても貴方が使うにしても問題はないよ?」


それにはさすがの俺も笑うしかなかった。

隣にいたリヒトは顔が引きつっていた。



「あー殿下自身はどう考えているので」

「もちろん、貴方との間に子供は欲しいけど、貴方が嫌なら無理強いはしないし、そもそも僕に使ってもいいし」

「いや、それはなんと言いますか」

「まあ、それはおいおい考えようよ、それよりもそろそろ兄上は席を外してもらってもいいですか? ベルジュ公爵と今後の事について話し合いたいので」

「ああ。わかった。ジーク、無体を働くなよ」

「もう大人ですから大丈夫ですよ」


含みのある笑顔でジーク殿下はリヒトを私室から追い出した。


「さて、ベルジュ公爵、結婚に関して先に話し合いをいたしましょう、まずは僕は貴方の家に婿入りという形になります。構いませんね?」

「いいんですか? 婿入りしても我がベルジュ家は継ぐことはできませんが」

「もちろんです。そもそも貴方の家は建国の祖である、戦姫様の血を受け継いでいないと継ぐことのできない家ですから承知しています」


我が家はちょっとばかし特殊な血筋の家である。


建国の戦姫は建国の手伝いをしてくださった神様と結婚し聖剣をたまわった。


それだけならば血が途絶えても大丈夫だと思うかもしれない。

だが厄介なことに戦姫様の死後、神様は聖剣に自身の血と戦姫様の血を継ぐものでないと使えないような呪いをかけた。


使えないだけならまだしも、血が途絶えたらこの国が滅亡するようにも呪いをかけた。

うん、こうやって考えると神様ひどいな。


兄である偉大なる魔導師様は何も言わなかったのか?


「また、先ほど言いました性転換をして子供をなした場合、その子供は別にベルジュ家の跡継ぎにする必要はありません。かわらずにベル嬢が跡継ぎです」



ベルの才能は俺以上だ、あの子以上に時期公爵にふさわしい子はいない。

だから特に異論はない。


「以上が僕が貴方との結婚にあたり宣言しておきたかったことです、貴方は何かありますか?」

「とくにはありません、その条件で構いません」


乗っ取りをするわけではないことがわかった。

というか殿下が俺を見つめる瞳に熱がこもりすぎて、

俺の事を心から愛しているのが伝わってきて

それどころじゃないというのもある。


「それとスタードをお呼びしても? 僕の事も呼び捨てで構いません」

「……わかりました、これからよろしくお願いします、ジーク様」

「様もいらないよ、スタード」


きらきらと輝くような笑顔を向ける彼に

罪悪感が芽生える、俺は殿下を愛することはできないと思う。


なぜなら俺はまだ初恋を引きずっているのだから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ