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桜の封印―4

桜の記憶が一気に

彼の中になだれ込む。

その衝撃に

耐えられなくなったのか

彼はその場に座り込み、

耳を塞ぎ、

目をぎゅっと閉じる。




―彼は必死に

倒れている彼女の傍へ行こうと

思うように動かなくなった

身体をひきずる。


「さ、よ・・・」

彼女の名前を呼ぶ。

いつもなら笑顔で

返事をしてくれるのに

今はない。

必死に手を伸ばす。


あともう少しで

彼女に手が届く。


だが彼の手は虚しく空を掴む。


「さよ・・・」

それが彼の最期の言葉だった。



「やめろぉぉぉ!!!」

彼は断末魔のような叫び声をあげる。


「死神」が僕の意識から消えた。

我に返った僕は

彼の姿を見て愕然とする。



―もう、無理かもしれない・・・



封印を解いたとき、

それを受け入れることにより

「転生」が決まる。

もし、拒否したならば・・・

未来永劫、どこにも行けずに

彷徨い続ける。

やがて「人」だったことをも忘れ、

そこに憎悪だけが残る。


世でいう「悪霊」になってしまう。


座り込んだまま

俯いている彼を見つめる。

少し身体が震えているようだった。



彼は受け入れたのか、それとも・・・



彼が微かに動いた。


「フ・・・」

「あははは!!」

彼は顔をあげ、

大声で笑い出した。


そして僕を見ると

「何だよ、俺死んでたのかよ」とまた笑う。

強がっている笑顔だというのが判る。


彼はゆっくり起き上がった。

そして自分の掌を見つめると

「俺、守ってやれなかったんだな」と

呟き、ぎゅっと握った。


その頬には涙が伝っていた。



―彼は事実を受け入れた。

これでもう彷徨うことは、ない。



彼は僕を見ると

「あんたさっき」

「俺がここにいる限り」

「あいつは来ないって言ってたよな?」

「それはいったいどういう意味なんだ?」そう問う。


僕はその問いには答えず

「―行こう」

そう告げると翼を広げる。

「え、ちょ!どこ行くんだよ!」

そういう彼の腕を掴み、

僕は空へ飛び立った。



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