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2 夏
金魚のうろこ。
蛍の光。
蝉の鳴き声。
小さな夏。
「金魚」
透明な金魚。
艶やかに舞う、水中の姫。
ちらりと見えた赤と白。
反射するうろこ。
さぞかしそこは涼しかろ。
水面をはねる君。
鉢の中の絵画。
「蛍」
帰り道に
うっすらと光る蛍を見た。
夜のとばりがおちた道に、
その光はあたたかく、
その姿は儚く、
その生はまぶしかった。
「蝉」
鳴き声が鬱陶しい
って思う?
もっと静かにしてほしい
って思ってる?
孔雀の羽みたいな、
別のところで競えばいいのに
って?
でも、それが彼等。
想いを叫ぶ、アイデンティティー。
◇『夏近づく』より
「金魚」
「蛍」
◇書き下ろし
「蝉」
※クマゼミは、夜鳴きするらしい。




