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1 蟻と蜘蛛
蟻、蜘蛛。
漢字で書くと、ちょっと恐い。
あり、くも。
平仮名くらいが丁度いい(片仮名も可)。
「蟻について」
蟻がいた。
おしりの部分がぷっくりとふくらんだ、可愛らしい蟻が、
私の右手の親指に存在していた。
いつの間に私の身体の一部に飛びついたのか。
全く気付かなかった。
ちょこちょこと動き回り、
上へ下へ。
ときにその道をふさぎ、ときに指の橋をかける私。
この蟻はいつまで私のもとにいてくれるだろうか。
「蜘蛛について」
漢字で書くのは、難しい。
音で覚えるなら、「チシュ」。
言いづらい。
文章で覚えるなら、「知ったかぶりの朱い虫」。
朱くないし、
なんなら、虫でもない。
壁を這っていた小蜘蛛に
覚え方を尋ねても、
知らんぷりされてしまった。
どうやら、興味がないらしい。
◇『初投稿記念日』より
「蟻について」
◇書き下ろし
「蜘蛛について」




