3 この詩集についての諸々の話 【詩と詩作】
前にどこかで書いた気もしますが、「詩とは何か」という疑問については、歯切れの良い言葉を使って答えることは難しいです。というのは、詩の在り方が多岐に渡っていて、その全てを内包する言葉を、私自身が見つけていないからです。
それでも、曖昧な表現で良いのなら、答えることはできます。
詩とは、「感情表現であり、感覚表現である」と。
心、あるいは脳に浮かんでくる様々なものを、自身の感覚によって捉え、言葉にしていく。これによって詩は生まれるのだと思います。自分自身の中から生まれることもあれば、世界との接触によって生まれることもあるでしょう。
※世界との接触
世界とは、自分を取り巻くもの。自分自身も一種の世界ですが、それは内部の世界を指します。「世界との接触」の「世界」は、外部の世界のことです。
接触とは、互いの手が触れるような軽い接触からがっしりと握り込むような重い接触まで、程度の差がある行動です。
曖昧ではありますが、今のところ、この答えが私にはしっくりきています。他の人の詩を読んでいる時に「これは物語ではないか?」と思うこともありましたが、この答えで「否、詩である」と言えるでしょう。これは私自身にも言えることです。
たとえば、この詩集の第11章「夢路に咲く華」を読んでいただければわかると思いますが、まるで物語のような詩があります。ですが、物語ではないのです。表現方法の一つとして、そのような形をとっているだけなのです。
「けれども、表現方法で物語のようにしているのなら物語なのでは?」という意見もあるでしょう。この問いの答えには、作者の意思が関係していると思います。つまり、「物語としてみせたいのか、詩としてみせたいのか」です。大雑把に言えば、詩として書いたのなら、詩であると言っても良いと私は思うのです(ただ、括弧を用いた会話文などの物語成分が多くなりすぎると、物語にとって代わられるので注意は必要です)。表現というのは重なり合う部分があるものですから、見せ方によって混同が起こってしまうこともあります。そう考えると、外見でちょっと損している詩とも言えます。
損をしていると言えば、感情をストレートに表現した詩もそうだと思います。比喩を使わず、単純で複雑で(矛盾していますがこの表現が合っていると思います)強い言葉によって構成された詩は、力があります。けれどもそれは、誰もが使うことができるために、一見しただけでは、込められたものが伝わりづらいことがあります。そんな詩を読む時は、一層注意しなければならないでしょうね。私の書いたものの中にも、そういうものがあったと思いますが、それを読んだ時に、皆さんがどう思われるか気になるところです。
「詩とは何か」はこれくらいにして、もう一つの疑問について書きます。
もう一つの疑問は、「何故私は詩を書くのか」でした。別に、詩に限らずともジャンルはたくさんあります。また、詩の他にエッセイや短編の小説なども書きましたが、一番書いているのは詩です。文字数では負けているかもしれませんが、作品数では負けていません。
では、何故そんなにも詩を書くのか。
それは、詩が好きだから。
誰かが書いた詩に思いをはせる時、世界が開けている感覚になります。開けた先がお花畑なのか、それとも荒野なのか、あるいは焦土なのかは様々ですが、そこにある「ナニカ」に触れることが好きなのです。
そして、自分でも表現したいと思うのです。
名状しがたい想いや感情に、言葉で肉付けをして、表現したいと思うのです。
このサイトに投稿しているのは、表現したいという欲求と表現する私を肯定してほしいという欲求があるからです。所詮私も俗物的な存在であるというのは、疑いようがありません。表現したいだけならば、白紙のノートに書き連ねているだけで満足するはずだからです。誰かの視点を必要とするのなら、それはもう自己を肯定してほしいということに違いありません。
浅ましいとは思いますが、それでも私です。私なのです。
高潔な人でありたいと願いつつも、身に宿る醜い欲求に縋る生き物が、私です。
私が書いてきた詩は、その一部もしくは全部を落とし込んでいるようなものです。ですがそれでも、醜い私でも、詩を書いている時は、その醜い欲求を意識の外に追いやることができています。詩を書いている時は、表現行為に身を委ねることができています。純粋に詩を書こうとしています。無意識に欲している可能性もありますが、そこまでいくとどうしようもありません。無意識を意識的に制御するなんて、今の私には難しい話です。
この詩集は、こんなどうしようもない生き物が書いた詩が集まってできています。
文学性がどうとか、そういうものは抜きにして書いた詩たちです。
イマイチ響くものがなかったり、つまらない文字の集合体であるかもしれません。
けれども、私の詩集であることには変わりありません。
愛していただけると、幸いです。
ここまで読んでいただけるなんて…。
本当にありがとうございます
この後におまけの章を用意しました。
お暇な時にでもお読みください。




