38/57
1 幻夢蟻
幻の砂場には、夢のお城が建っている。
蟻になって探検していると、きらきら光が射し込んできた。
中庭では、砂粒が踊っていた。
「幻」
日曜日の光に囚われ、
体は睡眠を欲している。
青を映す瞳は
遠くを見据えたまま。
そして、
全てはまどろみの中に。
「夢」
悲しい夢をみた。
ブランコに乗った狼が
静かに息を引き取る夢。
死ぬ間際、
狼がこぼした言葉。
何故か、そこだけが聞き取れなかった。
「蟻だった」
夢を見ていたんだ。
何度寝ても覚めない夢。
体を必死に動かして、
食べ物を運んだり、
小さいものの世話をしたり…。
でも、
結末はみんな同じだったよ。
つまり、死ぬんだ。
違うのは、過程だけ。
ねぇ、あなた。
弱いと、
とられてしまうんだね。
◇『日曜日』より ←※訂正します。「幻」は『日曜日』でした。すみません。
「幻」
◇『天夢』より
「夢」
◇書き下ろし
「蟻だった」