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1 彼と彼女
彼と彼女の関係性は、
一言では言い表せない。
でも、誰だってそんなものでしょう?
「憧憬」
長く伸びた影
地面に移る。
それはやがて
空き地を抜け、
公園を通り、
彼女の家を通過し、
ビルの高さを追い越して、
とおいとおい場所へと帰っていった。
未だたどり着けない私はただ、
見ているしかなかった。
「夏思」
芋虫は蛹になり、
やがて蝶へと至る。
平等に降り注ぐ、時の刻み。
昔、私は、赤ん坊だった。
そして子どもになって、
それからまだ大人にはなっていない。
めぐりめぐる、夏の日の午後。
蝉の合唱、
風に吹かれた夏草の演奏。
指揮者は彼だった。
後追う影が伸びてゆき、
夜がはじまる。
終わらない熱。
◇『真夜中に』より
「憧憬」
◇『夏の時間』より
「夏思」
この詩集に収録する前は、明確に視点を設けていなかったけれど、「彼と彼女の詩」だと思って読んでみると、そういう風に書いた気もしてくる。




