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2 道化の一幕
その愛は嘘なのでしょうか。
傷をつけるという行為も、
正しくないのでしょうか。
「そこにある思い」
真っ赤な唇に
そっと優しいキスをした。
恵まれない道化は
暗い空を見上げる。
もはや、過ぎ去った未来。
踊り損ねたマネキンを抱き、
これで良かったのか、と確認をとる。
彼女は冷たくも穏やかなままで
私はわずかに熱を持っていて、
その差がうらめしく、
ずっと泣いていた。
「愛刻」
愛しいものに傷をつける
その行為は
彼等の中に私を刻むため
繋がりが欲しかった
それが歪んだものであったとしても
◇『真夜中に』より
「そこにある思い」
◇『愛情の表現法』より
「愛刻」