4 雨中の呼吸
森林浴ならぬ、雨中浴。
体から流れ出したのは、
一体何だっただろうね。
「雨降る日の午後、曇天が笑う暮れのこと」
凍えた詩が、
侵入を果たす。
花は頭を垂れ、
悲嘆している。
空気が水分を含んでいることは、
とっくに気づいていたのに、
降り出したことを知らなかったようで、
大小の染みができていた。
透明さを忘れた幼な子らが、
屈託の無い笑顔で語りかけてくる。
― 日はおちるよ。気づかぬうちに。
― 日はおちるよ。知らないうちに。
底の見えない空虚な心で
暗がりを見つめる時、
雨粒が頬を叩く音、
ただそれだけがあった。
止まない雨は無い。
しかし、その雨はしばらくの間、
降り続けるはずだ。
曇天が笑っている、すぐそばで。
「落下する雨水」
給油を忘れた運転手。
胸ポケットに煙草の葉。
紫煙くゆらせ、
揺らめく吐息。
大気は日陰を求めた。
手を振る綺麗な明日。
何の汚れもついていない、
ケチの無い白さ。
昨日だけが汚れていき、
今日は常に更新されていく。
デジタルの記録、
鮮明な足跡の型。
そうだ、
煙草の煙で何もかも、
消してしまえばいいのでは?
全て終わったその後に、
土砂降りの中に
身投げし請おう。
煙も灯りも、終いには、
消えてなくなるはずだから。
◇『雨中の呼吸』より
「雨降る日の午後、曇天が笑う暮れのこと」
「落下する雨水」