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sikai  作者: 半信半疑
第5章 空の涙
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4 雨中の呼吸

 森林浴ならぬ、雨中浴うちゅうよく

 体から流れ出したのは、

 一体何だっただろうね。

「雨降る日の午後、曇天が笑う暮れのこと」


 凍えた詩が、

 侵入を果たす。

 花は頭を垂れ、

 悲嘆している。


 空気が水分を含んでいることは、

 とっくに気づいていたのに、

 降り出したことを知らなかったようで、

 大小の染みができていた。


 透明さを忘れた幼な子らが、

 屈託の無い笑顔で語りかけてくる。

  ― 日はおちるよ。気づかぬうちに。

  ― 日はおちるよ。知らないうちに。


 底の見えない空虚な心で

 暗がりを見つめる時、

 雨粒が頬を叩く音、

 ただそれだけがあった。


 止まない雨は無い。

 しかし、その雨はしばらくの間、

 降り続けるはずだ。

 曇天が笑っている、すぐそばで。



「落下する雨水」


 給油を忘れた運転手。

 胸ポケットに煙草の葉。

 紫煙くゆらせ、

 揺らめく吐息。


 大気は日陰を求めた。

 手を振る綺麗な明日。

 何の汚れもついていない、

 ケチの無い白さ。

 昨日だけが汚れていき、

 今日は常に更新されていく。


 デジタルの記録、

 鮮明な足跡の型。

 そうだ、

 煙草の煙で何もかも、

 消してしまえばいいのでは?


 全て終わったその後に、

 土砂降りの中に

 身投げし請おう。

 煙も灯りも、終いには、

 消えてなくなるはずだから。


◇『雨中の呼吸』より

「雨降る日の午後、曇天が笑う暮れのこと」

「落下する雨水」


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