あれから
「なぁ、そこどいてくんねぇかな?」
「あぁ、ワシになんかようか?チビ」
レグルスの行く手に巨大な亜人が立ちはだかっている。
ここはカンナと初めて出会ったあの山だ。
そんな所に巨大な亜人が。
何を企んでいるのだろうか。どうせ亜人のことだ。碌なことを考えてないに違いないのだが、一応聞いてみる。
「何を企んでるんだ?」
「ワシはこの世界を征服するために来たんじゃ。邪魔するんやったら許さんでぇ」
下手な関西弁を使いやがって。関西人を舐めてるのか!というか亜人界にもそんな方言もあるのだろうか。それだったら特にこちら側が言うことはない。
世界征服の件はレグルスの頭の中には全く入って来ていない。あのアクセル・ミラーでさえできなかったのだ。不可能だということを教えてやらねば。
「あの、巨人さん?世界征服は無理だと思いますよ。あの傍観軍最強のアクセルだって、俺の手でその野望を阻まれたんですから。そんなことしている輩は俺は見逃さないですよ!」
「お前みたいなチビがアクセルを倒したってか。もう少しマシな嘘をつけよ。それに俺は巨人族じゃねぇ。トロール族だ。まぁ邪魔するってんならボコボコにしてやらぁ!!」
トロール族の亜人は懐から木製の巨大ハンマーを取り出し、レグルスに殴りかかる。というかどこからそんな武器取り出したんだよ。そんな悠長なことも言ってられない。相手からは殺意しか感じられない。全く、相手がどんな攻撃してくるのかもわからないのに突っ走ってきやがってとアクセルなら言うだろう。今のレグルスにはそれが十分わかる。全て師匠に教えて貰った。今のレグルスは前までのレグルスと大きく違う。
レグルスはこれまたどこから取り出したのかわからない伝説剣を鞘から抜き、トロールの木製ハンマーを一刀両断する。
「やっぱり強くなった実感があるな。この剣だって思い通りに抜けるようになったし。」
「これで勝てたと思ってたらあかんで。これでどうや!」
するとトロール族の亜人は金属製の巨大ハンマーを取り出して、レグルスに殴りかかってきた。
レグルスはというと特に慌てた素振りを見せず、じっと立ち止まって相手を引きつける。そして、トロールがハンマーを振りかぶった時、レグルスは剣を構えて、ハンマーの攻撃を剣で受け止める。
レグルスは左手を前に出して、
「残念ながらここまでだ!『紅蓮爪』!」
そう詠唱を唱えると、レグルスの左手から業火を纏った鳳凰の爪が放たれ、トロールの亜人の横腹に食らいつく。
トロールの腹部からは彼の鮮血が噴水のように噴き出ている。草木が生い茂る美しい緑の地面を補色である紅で彩られていく。
トロール族の亜人はその場で倒れ込み、苦しそうにのたうち回る。
そこにレグルスが歩み寄り、左手を前に、
「『魔力蘇生』。『小回復』。亜人界に帰れるぐらいの魔力と傷を癒しておいた。これに懲りて家に帰るんだ。もし次にあったら今度はその首を頂くとするよ。」
「ぜェ…ぜェ…。なぜ…そこまで…してくれるんだ…?俺は…お前を殺そうと…。」
「バカ野郎。人間界で死なれたら町中パニックになるに決まってんだろ!ほら、とっとと帰りやがれ。」
レグルスに帰るように促されたトロール族の亜人は渋々帰っていった。
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レグルスがショッピングモールでミラと約束を交わしてからちょうど今日で1年が経つ。つまり、ミラたちと出会って2年が経つことになる。
この1年間、レグルスは約束を守るために必死に特訓してきた。傍観軍最強の男、アクセルを師匠として彼の鬼練に汗と血を流してきた。戦闘の基礎から叩き込まれ、動体視力の向上、瞬発力の向上、筋力や柔軟の向上など、恐らくこの人間界に存在する中で最もきついメニューを取り組んできた。
その結果、先程のように攻撃力とタフさに長けたトロール族をも軽々と余裕で倒せる程にまで成長。
『その時』でないと抜けない気まぐれ剣だと思っていた伝説剣も、今や思いのままに操れるようになった。
さて、そうやって1年かけてたくましく成長したレグルスは、約束通り彼女たちに告白するために、家へと帰る。




