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番外編 治安維持隊と怪盗G

「ただいま帰りました~」


そう言って私はいつものように治安維持隊セレクト支部の事務室のドアを開けて入室する。

急な展開について来れないと思うので説明します。

ここは亜人界。その中でも始まりの街と言われているのがこの街「セレクト」です。

そして、私、ミラ・シリウスは普段人間界で昼間悠貴たちが遊んでいる間、亜人界こっちに来て治安維持隊として、活動をしています。

ちなみに亜人界は人間界と12時間違うので今は夜です。


「おー、遅かったなぁ。またあの人とイチャイチャしてたのかぁ?なんか進展あったのかぁ?」


私が事務室に入って来るや否やそう言ってソファに座り、手招きをして私をソファに座らせるように促したのはマリア・カストルだ。

紅蓮の炎を思わせるような真紅の髪をツインテールで結んでいる。目はつり目で、その瞳も真紅のルビーのように輝いている。年齢は私と同い年。胸の発達具合は私と同じか、若干遅いぐらい。一人称に「オレ」を使うのが特徴。

聖龍軍の兎人族で、兎特有の身体能力や、跳躍力、脚力を活かした物理的な攻撃を得意とする。頭から生えているため耳がチャームポイント。

使える属性魔法は闇属性の影系統(召喚魔法に限る)だけで、火属性には全く適正がない。

使える有効魔法は「影人魔法ドッペル」自分の影武者を作ることが出来るのだが、召喚魔法と組み合わせることでより精巧で、より多くの影武者を召喚できる。

さっき彼女が口にした「あの人」とは悠貴のことだろう。


「別にイチャついてないし、特にそれといった進展もないよ。」


「チェー、つまんねぇ。陽子は何かいい案ないか?」


「何かプレゼントを上げるのはどう?」


そう答えたのは、マリアと私の前のソファに座って紅茶を飲んでいた、横山 陽子だ。

彼女は悠貴と同じ日本人で、交通事故で死んだ後この亜人界にやって来た。

髪型は、黒髪のストレートショートで、髪の分け目に白い小さい花飾りが付いたヘアピンをしている。目はジト目で、飲み込まれるような漆黒を瞳に宿している。

年齢は私とマリアより1歳年上。胸の発達具合は、私たちより遥かに成長しており平均的な感じ。

性格は引っ込み思案でおっとりしているが、責任感が強く頼れる存在だ。

属性魔法は一切使えないが、その代わりに優秀な有効魔法を駆使する。

使える有効魔法は「施錠魔法ロック」どこでも自在に施錠ロックすることができる。

と、まぁ彼女たちの説明はここまでにしておく。


「プレゼントって言ってもねぇ~。悠貴に何をあげたら喜んでくれるんだろう?」


「別に何も無い普通の日じゃなくてなにか特別な日にあげたらいいんじゃない?例えば出会って1年記念みたいな」


「おぉーさすがは陽子。やっぱり人間だからわかるのかー。」


「別に人間じゃなくてもわかる気がするけど。そうだね、参考にするよ。」


と、15分ほどガールズトークをしたところで今日もいつもと同じようにパトロールに夜のセレクトの街に出る。


───────────────────

「なぁ、オレたちパトロールする意味あるのかー。ほとんど人がいないぞ。」


「確かに意味がないかもしれない。けど、この意味のないことの積み上げた先に大きな成果が待ってるの。」


「二人とも喋ってないでちゃんと見回りもしてよ~。」


私たちはセレクトに吹く暖かい風に髪を撫でられながら夜の街を見回る。

始まりの街と言うだけあって、駆け出し冒険者も多くいつも活気があり盛り上がっているセレクトだが、今は亜人界の時間で深夜の3時、さすがに人通りが少ない。

確かにマリアが言った通りパトロールする意味が無いようにも思える。

しんと静まり返ったセレクトの街に私たちの声だけが響く。


「なぁ、『怪盗ゴールド』って知ってるかぁ?」


「確かに聞いたことあるけど、誰も見たことがないんでしょ?それでただの都市伝説だっていう。」


『怪盗ゴールド』。それは、今亜人界で話題になっている強盗犯の名前だ。誰もその姿を見たことがなく、男か女かすらわかっていない。

怪盗ゴールドはみんなが眠りについた宵時に現れ、金銀財宝を片っ端から根こそぎ持っていく。そして、怪盗ゴールドが盗みに入った店や家には『怪盗ゴールド見参』と書かれた黄金のカードが残されているのだとか、いないのだとか。

まぁ、今その名を知らない人がいないと言っても過言ではないぐらいに急激に知名度が上がっている人物なのだ。

しかし、神出鬼没であることから都市伝説ではないかという噂も出てきている。

その怪盗ゴールドの話をマリアが振ってきた。


「そうそう。でね、怪盗ゴールドが今この街にいるんだってー。探してみようよ!」


「そんな勝手なことして、怒られて迷惑するのは私たちなんだよ」


「そうだけど…」


「でも、おもしろそうだし見回りしつつってことで」


というわけで、私たちは怪盗ゴールドを探すことにした。

本当にいるかどうかは別だけど。


───────────────────

「おい、そこをどけ!」


私たちが歩いていると目の前から大きな袋を持った大きな体躯たいくをした中年男性が走って来た。

その姿は典型的な泥棒の姿である。ってか今の時代こんないかにもな泥棒いるのだろうか?


「なんだおっさんもしかしてサンタクロースなのか?」


「んなわけないでしょ!どう見たって泥棒じゃない!」


「ワシはさすらいのサンタクロースじゃ」


「ほら~サンタだって」


「信じんな!」


走ってきた泥棒(仮)は私たちの前で立ち止まる。怪盗ゴールドの話をしている時にこんな泥棒に出会うなんて。

でも、この男が怪盗ゴールドであることは無さそうだ、なにせその貧相な服装といいとてもじゃないけどゴールド感は無かった。まぁ持ち物検査して、事情聴取をして、泥棒さんだったら治安維持隊に報告して、治安隊(人間界で言うところの警察的な存在)に身柄を拘束してもらえばそれでいい。


「袋の中に金、銀、プラチナ、ダイアモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、パールなどの金銀財宝と宝石を所持を確認、どれも値札がついてるため強盗とみてもよさそうね。」


「なっ、なんでバレたんだ!?」


「残念だったね強盗さん。この陽子は有効魔法『透視能力スキャン』を使えるのよ。」


先程説明をしていなかった陽子が使えるもうひとつの有効魔法。その名も透視能力スキャン。その名の通り、患者ターゲットの衣服や装飾品、皮膚を透かして内部を見ることができる。普通医療機関で使われることが多い。

あくまでも陽子が使えるのは『透視能力』であり、『盗視能力』ではないので、壁越しに何かを見れるわけではない。

とりあえず、陽子の能力に間違いはないのでこの男の身柄を確保して、


「こんなところで『怪盗ゴールド』が捕まってたまるか!!」


その強盗はそう言い残しものすごい速度で逃走した。

あの体躯のこんな速度で走ることができるなんて。

さっきの男の発言。聞き間違いでなければ、


「あいつ怪盗ゴールドだってよ!捕まえるぞー!」


やっぱりこいつはテンションあがるよな。

治安維持隊はグループでの行動が絶対なので、突っ走って行くマリアを仕方なく私と陽子が追いかける。少し訂正する。仕方なくではなく、私たちも興味津々で追いかける。


───────────────────

路地裏に入った怪盗ゴールド(仮)はさらに逃走を続ける。

こちらも全力で追うのだが、男の速度はかなり速く、どんどん差を広げられてゆく。

しかし、男が向かった先は運悪く行き止まり。

これで、陽子の施錠魔法ロックで拘束すれば。と、安堵していた時だった。

体に何かがまとわりついてきた。


「────ッ!?」


よく見るとそれは黄金色をしておる。かなり粘り気のあるソレは体の隅々までに行き渡り、服の中にまで浸透し、ついには身動きが取れなくなってしまった。


「──何これ?気持ち悪い」


「──何これおもしろい!」


「──何これ綺麗。」


なんで、こいつらはこんな悠長なことがいえるんだよ。ってかおもしろくねぇよ。とてつもなく不快なのは私だけなのだろうか。

恐らくこれは怪盗ゴールドの有効魔法ちからなのだろう。それを確信づけるかのように男の身体からソレは出ている。


「これは怪盗ゴールド(おれ)の有効魔法『純金魔法ゴールド』。まぁぬるぬるして気持ち悪いだろうからよ。楽にしてやる。『硬化ハード』!」


ゴールドがそう言った瞬間、体にまとわりついていた金がガッチリと固まる。

これで完全に身動きが取れなくなった。

この金は取れるのだろうか。そもそもこんなところにいて誰か助けに来るのだろうか。


「あー逃げんじゃねぇー!行け影武者ドッペルゲンガー!」


マリアの魔法で生まれた10体の影武者がゴールドに襲いかかる。が、私たちと同じように金で捕えられてしまう。

ゴールドは純金を家の屋根まで伸ばし。


「じゃあよ、俺は行くからな。」


と言い逃げて行った。


───────────────────

「あァ?なんだお前?なんで地上から屋根の上に上がッて来たんだァ?」


「お前こそなんで屋根の上を歩いてんだ。それよりそこをどけ!」


「嫌だと言ったら?」


「死んでもらう!」


屋根の上で声が聞こえる。この聞き覚えのある声の主は、


「アクセル!そこにアクセルがいるの?もしいるのだったらお願いがあるの。その男『怪盗ゴールド』を捕まえて!殺しちゃダメだからね!」


私は全力を振り絞ってそう叫ぶ。

アクセルなら、傍観軍最強の男ならあの怪盗ゴールドにも勝てるはずだから。


「あァその声はあの幼女ロリか。まァいい、ちょうどこの男に喧嘩売られたとこだしィ、殺せねェッてのは不完全燃焼な感じもするがやッてやるよ」


アクセルが頼みを聞いてくれた。

屋根の上にいるアクセルがどんな表情をしているのかは確認できないが、私にはわかった。

恐らく狂人めいた恐ろしい笑みを浮かべているのだろう。


「アクセルってお前あのアクセルか!?」


「どこで知り合いになったの!?」


当然の反応だろう。あの冷静な陽子でさえ驚愕を露わにしている。

とりあえず、以前起きたアクセルとの邂逅について断片的に、それでいて具体的に話した。


「へぇ~悠貴さんってそんなに強いんだ。」


「そうなんだよ~。まぁ頼りないところもあるけどね。」


「嬉しそうな顔してるなー。ほっぺたが真っ赤だぞ。」


「しっ、してないよ!?」


体中を純金で固められて身動きが取れない状況でなぜこんな話をしているんだろう。

と、私は一人心の中でそう思った。

───────────────────

「ッてなわけでェ、殺しの許可は降りなかッたが仕方なくやッてやるよォ」


アクセルはいつも通り冷静で余裕ぶった態度で怪盗ゴールドにそういう。

いくらあの怪盗ゴールドでも、この傍観軍最強の男には勝てないはず。

得意の逃げ足で逃げられる可能性もあるが、相手が逃げることを一切認めないアクセルのことだ。怪盗ゴールドにも劣らない速度で追いかけて倒してくれるはずだ。


「ずいぶんと舐められたもんだぜ!くらえ!!純金槌ゴールドハンマー!!」


いくらなんでもダサすぎるネーミングだが、そんなことを嘲笑わらっている余裕などないぐらいにバカでかいギラっギラに輝く純金のハンマーが現れた。

それをぶん回し、アクセルを撲殺しようとする。

が、アクセルが出した左掌に当たった瞬間、これもお馴染みになったが、純金のハンマーは木っ端微塵に砕け散った。

アクセルが持つ有効魔法『反射魔法ミラー』。アクセルの両掌と両足裏は反射鏡ミラーになっており、光エネルギーだけでなく、ありとあらゆるエネルギーを2倍のエネルギーで反射する。当然反射するエネルギー量はコントロールできるが。

怪盗ゴールドのハンマーが持っている運動エネルギーを2倍で返したのだ。あれだけ巨大な純金ハンマーが持つ運動エネルギーは増大である。そのため2倍の力で反射すればこの純金でさえ粉砕できる。


「────ッ!?」


予想外の出来事に怪盗ゴールドはその場で立ち尽くしている。

相当自分の純金に自信があったのだろう。その自慢の純金がこうも簡単に粉々にされたのだ。唖然として当然だろう。

もちろんそんな同情はアクセルには全くないのだが。

これも買った喧嘩の中で起こった出来事ハプニング。こうなることを想定していない怪盗ゴールドが悪い。そうアクセルは思っているのだ。


「いいかァ。俺は喧嘩の度に命懸けてやッてんだ。たかが自分の技が通らなかッただけで落ち込みやがッて!半端な気持ちで喧嘩売ッてくんじャねェぞ!!」


アクセルの言葉に熱が増す。その双眸に怒りを宿して吠える。

アクセルは「チッ」と舌打ちした後、自分の懐から何か黒い大豆程の大きさの謎の物体を5つ取り出した。

本当に見た目は黒豆のようだが、喧嘩バトルの途中におもむろにそんなものを取り出すわけが無い。まぁこの狂人なら取り出してもおかしくはないだろうが。

アクセルはその黒豆(仮)を1粒前に出し、


「なァお前に問題でェす。これなんだと思う?」


「───ッ?」


「ブッブ~時間切れェ!!正解は実際に食らッて見やがれェ!!」


ゴールドに答える時間も与えずアクセルはその黒豆を思いっきりゴールドに向けて投げた。その黒豆はアクセルの異能力『力点人間アクセル』によって音速と等しい速度で直進。

ゴールドが能力で壁を作った瞬間、アクセルは口角をくっと上げ、嗤いながら、


「さァ解除するぞォ!」


アクセルが言葉を放った瞬間、黒豆が直径1m程の大きさになった。

そして、純金の壁に当たり、爆発。

黒煙がゴールドを包み込む。そこにアクセルがものすごい速度で突っ走っていった。

───────────────────

「一体何が起こったんだー。」


「アクセル大丈夫?」


「さすがは傍観軍最強と言われているだけあるわね。よくこんな人と知り合いになったよねミラも。」


私たち3人が体にまとわりつく純金から解放されて屋根の上に這い上がった時には、もうそこにはアクセルしかいなかった。

アクセルの足元に目線を落とすとそこには、恐らくゴールドの血痕ものであろう、真紅の華が咲いていた。

アクセルは申し訳なさそうな顔でこちらを向き、深く一礼。


「ごめんな幼女サキュバス。あいつの愉快な死に様を見せることができなかッた。」


「いやいや!そんなのいらないから!」


「でも、跡形もなく無くなってしまったら証拠も無いから有名人になれねぇじゃねーか。」


「でも、こんな惨劇の跡を残すなんて砲弾でも使わないとできないわよね。」


「あァ。だから使ッたんだよ、砲弾。」


「────?」


3人の頭に疑問符がうたれた。

あの黒豆の正体。実は砲弾をアクセルの力で圧力をかけて小さくしたものなのだ。

アクセルによって音速に等しい速度で放たれた砲弾を相手に当たる直前に能力を解除する。すると元の形に戻ろうと膨大な力が発生。それが爆発を生むのだ。


「まァ、怪盗ゴールドなんてもんはただの噂だッてことにすりャいいだろ。犯人は死んだわけだし、もう事件は起こらねェから。」


「そうね、何事も無かったように普通の生活が送れるようにするのも治安維持隊の役目でもあるし。」


私の意見に他の2人も賛同し、この怪盗ゴールドの1件は私たち3人、いやアクセルも含めて4人だけの秘密ということになった。

そうして、私たちの1日は幕を下ろした。


~完~

【あとがき】

毎章末恒例の番外編です。

この3章はかなり長いことやっていましたね。(特になろうの方では7ヶ月ぐらい)


正月に出した特別番外編の最後にとある2人の人物による会話が描写されていますが、みなさん「誰なんだろうこの2人?」みたいなこと思いませんでしたか?(前過ぎて覚えてない方も多いかも)

章末に説明しようとしていたので、今ここで誰なのか説明しますね。

あの2人はアクセルとアルケナです。(たぶん気づいた人もいると思うけど)


3章はこれにて終了です。

4章からもよろしくお願いします!

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