ぶつかり合う意志
「今すぐその娘から離れろ!!」
そんな声が耳を刺激する。アルケナとアクセルは声が聞こえた方に視線を向ける。
そこには4人の人影があった。
「クソがァ!!今からこいつの頭を踏み砕いて殺るってのに邪魔するじャねェ!!」
「そんなことしようとしてる奴を前にしてやめさせようとしないやつなんていないだろ!!」
アクセルが声を荒らげて激昴する。
今この場に現れたレグルスたちにはなぜこの青年が怒っているのかわからなかったが、アクセルの足元で血だらけになって倒れている少年、否、少女がアルケナだとレグルスたちは確認して、敵意をアクセルに向ける。
「くッだらねェ。そんな事でてめェらは命を投げ捨てんのかよ!!どいつもこいッつも、もっとマシな生き方できねェのかよ!!」
殺気立ったアクセルにレグルスたちは緊迫する。
眼前の青年が辺りに異様なオーラをもたらす。それはこの世のものではないかのような圧倒的な力を感じる。
この青年は一体何者なのか?この青年がもたらす違和感は何なのか?レグルスたちにはわかりかねない。
だが、
「こんな所で命を投げ捨てるなんて思ってねぇよ!俺はこいつらの夢を叶えるまで死ぬわけにはいかねぇんだよ!!」
「夢かァ、夢見るのは俺も同じだァ。」
眼前の青年がレグルスの発言に同調してくる。いつの間にかこの青年から怒りは消えており、アルケナからも離れている。
しかし、今度は青年に余裕が出てきている。レグルスたちはこの青年の妙なオーラに違和感を感じている。
それにしても、この青年の夢とは一体何なのか?そんなことを思ったのと同時に、その答えがレグルスの耳を刺激した。
「あのふざけた魔王と龍をぶッ殺す。そうすることで俺はアイツとの約束を果たすことができんだよ。だから、そのために俺はこの世界に再び降り立った。この世界を支配して、亜人に対抗できる軍隊を作るんだよ!!」
と、そう話してくれた。
最終的な目的、魔王軍の大将である大魔王サタンと、聖龍軍の大将である青龍を倒すこと、それは同じだ。
しかし、そのための道が違った。そこに至るための方法が間違っている。誰かを傷つけて自分の夢を叶えるなんてことあっていいはずがない。
だから、レグルスは吠える。
「そんな事許されるわけねぇだろ!!なんでてめぇなんかの夢のために世界中の人たちが犠牲にならないといけないんだよ!!俺たちは絶対に認めないぞ!!」
「知るかよそんな事ォ!!てめェら俺に勝てるとでも思ッてんのかよォ!!傍観軍の最強に君臨する男。更に今朝の『路地裏殺人事件』あの犯人であるこの俺に、力点反射鏡に勝てんのかよォ!!?」
眼前の青年、アクセルは再び怒りを露わにする。
アクセルが放った言葉にレグルスたちは息を呑む。
今朝の『路地裏殺人事件』を引き起こした当人が目の前にいるのだ。報道機関でさえ大部分を隠している程の惨劇を引き起こしたと言うのだ。しかし、この青年のどこにそんな力があるのだろうか?見た感じだと背高の細身の青年なのだが。
しかし、これ程の余裕を装っていることにも違和感がある。アルケナと戦って無傷で、更にアルケナに深手を追わせるほどの力を持っている。だからといってそれが逃げる理由になる訳では無い。
「そんなもん負けると思ってんなら始めっからこんなことしねぇよ!それに、自分の夢のために誰かを犠牲にしようとするやつに、力を持っているからといって他の人を見下しているような奴なんかに、俺たちが負けるわけねぇだろぉが!!!!」
レグルスは今までに無いほど大きく声を荒らげてそう吠える。
何としてもこの青年を止めなければならない。でないとカンナの夢を叶えることが、人間と亜人が仲良く平和に暮らすことができる世界を実現することができなくなってしまう。
カンナの夢だけではない。ミラの夢も、凛の夢も、そしてレグルスの夢も叶えることができなくなってしまう。なにも青年の夢を阻む訳ではない。ただ、夢の実現のための別の道を見出すために、間違った道を進んでいることに気づかせて、正しい道を歩んでもらうために。それがレグルスの意志だ。否、他のミラや凛、カンナの意志だ。
「なんッだよそれ。なら、勝負をしようぜェ!!」
「勝負?」
「あァ、そうだ。」
アクセルが口角を上げ、不気味な笑みを浮かべた。




