死の価値観
なんとこの回で30話目です!
なんだかんだでここまで来たっていう感じです。
これからもよろしくお願いしま~す!
「どうした笑みなんか浮かべて。気持ち悪いぞ。」
「てめぇ!人を煽るのも大概にしろ!お前を倒す道筋を思いついただけだ。」
「俺とお前の力の差は歴然。お前がこの俺を倒すだと?馬鹿馬鹿しい!ふざけるのも大概にしろ!」
「ふざけてなんかねぇよ!」
レグルスは剣を手に取り柄を握り、気持ちを集中させる。
この剣は悠貴が死んで、レグルス・カノープスとして転生する際に女神ペルセウスからもらった伝説剣である。
しかし、厄介なことにこの剣は『その時』にならないと鞘から剣を抜くことが出来ない。『その時』というのは曖昧な感じで、いつが『その時』なのかというのはよくわかっていないし、はっきりしていない。ペルセウスから『大昔に、伝説剣を自由自在に操る人がいた』ということを聞いたことがあるが、もらって数日しか経っていないレグルスはそこまで操れるとは思っていない。
しかし、その威力は間違いなく強力である。大傷を負っていたとはいえ、あの魔王軍の幹部ジャック・シャークを討つことができた。
もしかしたらこの剣があればホムラに勝てるのではとレグルスは思ったのだ。
剣が抜ければの話だが。
「ちょっと無理もしねぇと勝てねぇか。」
レグルスはそう言って左手をホムラの方へ向ける。そして、息を整えて意識を集中させる。体内のマナの流れを感じ、そして
「『超火焔』!!」
詠唱を唱えた瞬間体内のマナの流れが活発になり、レグルスの掌から放出される。放出された火のマナは業火と化し、ホムラに向かって放たれる。
「そんな半端な超火焔では俺は倒せんぞ!」
ホムラはレグルスの放った業火に向かって走り出す。と、同時にレグルスは鞘から剣を抜き、レグルスも走り出す。
「こんな超火焔簡単に消火できる。」
ホムラが背中の漆黒の翼で業火を消し去った瞬間、
「あいにくその超火焔はお前の気を引くための囮なんです。囮にしてはちょっと体に負荷がかかりますが、お前を倒すためならこのぐらい、なんともねぇ!」
「───ッ!!」
レグルスの持っている伝説剣が七色の閃光を放ち、
「これで終わりだぁ!!」
レグルスは伝説剣を精一杯薙ばらい、ホムラの胴体を斬りつけた。
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「なぁミラ、こいつどうする?」
レグルスが刀身を鞘に収め、ミラに聞いた。
「どうするって言われてもねぇ。仲違いしたとはいえ、一応昔は遊んでもらっていたお義兄様だから。」
目の前で仰向けになって倒れているホムラを見て、ミラは複雑な気持ちを抱く。
レグルスによって斬られたホムラは、血飛沫を上げながらもしばらくの間はふらつくその足でその場に立っていた。が、すぐに力尽き仰向けになって倒れ込んだ。
息こそしているが、出血が酷いため命の危険が及ぶ。しかし、タチの悪い亜人のことだ、治癒をした時にまた襲われる可能性が高い。治癒魔法をかけるにはリスクを伴う。
レグルスがそんなことを考えているとミラが
「悠貴危ない!!」
その声を聞き、後ろを振り向いたのと、頭に激痛が走ったのは同時だった。
「────ッ!!」
頭にホムラの強烈な右ハイキックをモロに喰らったレグルスは後ろに弾き飛ばされる。首が軋み、口からは出血をし、視界が眩む中、意識を保ち、視線をホムラの方へ向ける。
「愚かだ。愚かだ。実に、実に、実に、愚かだ!」
ホムラがレグルスに向かって罵声を浴びせる。わずかな憤りと、レグルスの行動を蔑む表情を宿して。
「いつ襲ってくるかわからない敵にトドメを刺さずに注意を逸らす。スキがありすぎだ!俺をこんな攻撃で倒せたと思ったのか?」
「───。」
「仲間は守りてぇが敵は殺さねぇ。そんなの強欲だ。特に力があるわけじゃねぇんだ。そんなプライド捨てちまえ!敵を殺すことを厭わねぇぐらいの覚悟がないと、誰も守れねぇんだよ!」
ちょっと絶大なダメージを与えて、相手を倒して、それで降参して、観念して行いを正してくれる。亜人はそんなに都合がいい種族でないことはレグルスにだってわかってる。存分にそれは感じてきた。人間とは生きてきた環境が違うのだ。人の上に立ちたければ力が必要なのだ。誰かを従えたければ力が必要なのだ。そういう世界に生まれて生きてきた亜人たち。その中には人を殺めることを厭わない人もいる。
でも、レグルスは違う。確かに傍観軍とはいえ亜人である。が、元々は日本人である。殺人は犯罪だと思うし、やってはいけない事だと分かっている。伝説剣で魚人ジャックを殺した際の罪悪感は忘れることがなく、二度と味わいたくない。だからレグルスは吠える。
「違う!俺はは誰も殺さずにみんなを守ってみせる!俺は誰も殺さねぇ!」




