突然ですが転生します。
いつの日か決意していた。彼女たちを守ってやると。彼女たちの将来を守ってやると。彼女たちの夢を守ってやると。それが悠貴の夢なのだとそう思い込んでいた。しかしついさっき悠貴は全て置き去りにして異世界へ転生しようとしていた。悠貴の夢だと思っていたものは、悠貴の一つの理想でしかなかった。
しかし死んでしまった今どれほどのことができる。と考えるのも無駄だ。わかっている。何もできない。
では生きていた時なぜ何ができたか考える。彼女たちを守れていただろうか。守れていなかった。むしろ守ってもらっていた。
ではなぜ何もできなかったのか考えてみる。何が足りない。何が必要だったのだろうか。
「力…力が必要だった…」
悠貴はか細い声でそう呟いた。
悠貴には力が足りなかった。「守る」なんて口だけだった。力もないくせにそう言っていた。そう言って自分を誤魔化していた。自分という存在を正当化していた。
「なぁペルセウス。」
「何でしょうか?」
悠貴の問いかけに女神ペルセウスが応える。今の悠貴の様子をみてペルセウスはタメ口ではなくきちんと敬語で、優しい声でそう応えた。
「異世界に転生する場合、力はもらえたりするのか?よくそういう異世界転生ものとかは特典でチート能力を手にしたりして…」
「出来ます。」
悠貴が早口で言うのをペルセウスが断ち切る。
「あなたが異世界転生を望むなら特典として力を授けましょう。」
異世界からやってくる亜人たちの理不尽なほどの能力。それがあったから平凡な高校生である橋中悠貴は何も出来なかったと。考えに考えた末その考えに悠貴は至った。
もしその理不尽な能力に対抗できる能力を手に入れることができれば、彼女たちも守れるのだと。
「異世界転生。するよ。」
「本当にいいんですか?」
悠貴の発言に困惑するペルセウス。それもそのはず、ついさっきまで酷く落ち込んでいた悠貴があっさり異世界転生をすると、そう言ったのだから。
「力が手に入れられるならいくらでも転生してやる。」
「彼女たちの夢は、私たち亜人の夢はどうするつもりなのですか?諦めるのですか?」
「バーカ。誰がそんなこと言った。何も諦めねぇよ。」
「───?」
「俺を元の世界へ転生させてくれ。」
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悠貴の考え、それはこの死後の世界から見ると悠貴の住んでいた世界は異世界になる。つまり元の世界に行くとこは異世界転生ということなのだろうかと。
「できないことはないけど…」
ペルセウスが再びタメ口で話し始める。ペルセウスの顔ゆきは曇り。どうもぱっとしない顔をしている。
「何か難しそうな顔をしてるな?できるんだろ?」
「できるけど、ただ条件付きで。」
「その条件教えろよ。」
元の世界へ異世界転生する場合の条件。それは、姿を変えること。人間が死んで亜人界に転生するのであれば姿はそのままで大丈夫なのだが、人間が死んで人間界に転生する場合、姿を変える、つまり亜人として転生しなければならない。
理由としては世界の時空を安定させるため。もしそのままの姿で元の世界に転生した場合、世界の時空が歪み、世界そのものが滅んでしまうらしい。
「いいよ。俺は亜人として人間界に転生する。彼女たちの記憶は残ってるよな?俺の顔は変わらねぇよな?」
「大丈夫。何も変わらない。変わるのはあなたが人間じゃなくなるだけ。でも彼女たちにはちゃんと説明しないとダメだよ。」
「あぁわかった。それであいつらを守れるなら。」
悠貴は再び決意した。異世界転生をしてミラたちを、ミラたちの夢を守ると。




