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鬼の愛し歌   作者: 雪国竜
第2章 覚醒
9/13

波乱

「お客様、またのご来店ありがとうございます」

「ああ、この店が美味しくてまた来たぜ」

 それを聞きウエイトレスも喜んでいた、店の手伝いをするくらいなのだから、この店が好きなのだろう。良く顔を見ようとしていたら、顔を背けた。

「べ、別に父さんが褒められても、わたしは嬉しくも無いのだからね!」

(店を手伝うほどなのだから好きだと思っていたが違うのか?)

 義重はその言葉どおりに受けたが。後ろに居た客達は。

「可愛いね」「華怜ちゃんは褒められると可愛い顔をするねぇ」「照れた顔が可愛いな」

 と常連客が口ぐちに言っていた。

 常連客は、この子の反応が可愛くてからかってきた。

 それを聞いた少女は、顔を真っ赤にした。

 店に入ると、片目が青い子が居た。忙しなく働いていた。

 向こうもこちらに気づき近づいて来た。

「昨日は有難うございました。あんな事をしてくれる人は初めてなので驚きました」

「そうなのか?」

「普通の人はあんな事しません」

 話していると、腹がぐぅーと音をたてた。

 その音を聞き、玲奈はくすくすと笑いだした。

「お席に案内しますね」

「ああ、頼む」

 その後について行き、椅子を引いてくれたので感謝して座った。

「ただいま、お冷とメニューを持ってきますから。少々お待ち下さい」

 いそいそとメニューを取りに行った。

 そうして持ってきてくれためにゅーに目を通し、何を頼むか考えた。

 今日のお勧めはオムライスと書かれていた。

 ソースは自由に選べて八百五十円で、大盛りにすると千円だ。

 これはセットでは無いので、サラダもスープも付いていなかったが卵をどちらか選べると書いている。

(卵を選べる? どうゆう意味だ?)

 訳が解らないから訊いた方が良いと思っていたら、丁度良く玲奈が別の客の注文を取り終わり注文票を厨房に届けようとしている所であった。

 視線を送っていたら気付いてこちらに来た。

「ご注文がお決まりですか?」

「このオムライス? の卵を選べるとは、どおゆう意味だ?」

「それはですね。ご飯を卵で包むか、卵をご飯の上に載せるか。薄焼きにした卵を載せるのを選べます」

 それを聞いても義重は意味が分からず首を傾げた。

(卵を包む? 卵をご飯の上に載せる? 訳が解らん)

 言われても分からないなら、頼んでみたら分かると思い今日はこれを頼む事にした。

「このオムライスを今言ったの。全部で大盛り」

「はい、オムライスの大盛りを三つですね。ソースは如何します。」

「包むのをケチャップで、卵を載せるのをでみぐらすそぅすで。薄焼き卵を載せたのはこの和風そぅすで頼む」

「はい、ケチャップとデミグラスソースと和風ソースですね。他にご注文は有りますか?」

 昨日の食べっぷりを観て足りないと思ったのだろう訊いてきた。

 足りなければ頼めば良いのでとりあえず今はそれだけにしようとしたら。

「今日はシーザーサラダとコーンスープがお勧めです」

 うえいとれすの子が訊いてもいないのに、お勧めを教えてくれた。

「あと、このデザートがお勧めですよ」

 小声でメニューのデザートのお勧めを教えてくれた。

(自家製あいすくりーむ? どんなのか分からないが薦めてくれるから美味しだろう。頼む前に値段を確認するか)

 前は値段を確認せずに頼んだので小銭が出た。小銭が出ないようにかつ腹を満たすように料理を頼む事にした。

 薦められた物の値段を見ると、シーザーサラダが三百五十円。コーンスープが三百円。自家製アイスクリームが三百五十円であった。合計すると千円であった。

 オムライスを大盛りで三つ頼んで三千円なので足すと四千円であった。

(小銭が出ないからこれで良いな)

 それで薦められた物を全部頼む事にした。

「では、ご注文を確認させて頂きます。オムライスが大盛りで三つ。ソースはデミグラスソースとケチャップと和風ソースで。シーザーサラダが一つ。コーンスープが一つ。自家製アイスクリームが一つ。以上でよろしいですか?」

「ああ、それで頼む」

「では、出来上がるまで少々お待ち下さい」

 会釈して注文票を厨房に持って行った。

 早く来ないか待ち遠しかったが、水を飲んで気を静めた。

 そんなに時間が経っていないが、サラダとスープが直ぐに来た。

「お待たせしました。コーンスープとシーザーサラダです。オムライスはお作りしているので、もう少々おまちください」

 何かの粉チーズがかかっているさらだと黄色いスープが義重の前に来た。

(この粉に味があってさらだを引き立てているな、またこの白い液体にコクがあって、とろみがあってサラダに絡む。これがちーずという物の味か。甘くすっきりとしてドロドロしているからくどいと思ったが、清涼感を感じさせる味だ)

 昨日に続いて食べる手が止まらなかった。

 サラダとスープを食べ終えて口の周りを拭いていたら。

「お待たせしました。オムライス大盛りで三つになります」

 そのオムライスを観ると、ご飯を卵に包まれているのと、木の葉型に模られ焼いた卵がご飯の上に載っているのと、薄焼き卵を渦巻くように形になってご飯の上に載ったのが出てきた。

 食べようとして手をつけようとしたら。

「オムレツを切りますか?それとも自分で切りますか?」

 と訊かれたので切って貰った。

 それでオムレツを切って貰うと。ナイフで切って広げたら。黄色い花が開いたかのように皿に広がりだした。中が半熟なのでこのような事が出来るのだろう。

 その広げた花に少し黒い褐色の液体をかけた。黄色と褐色の組み合わせが目を楽しませてくれた。

「アイスは食べ終わりましたら、お持ちいたしますので。ごゆっくりお食べ下さい」

 それを聞きながらオムライスを食べた。まずは包まれている方を口に入れた。

(包まれている事で卵とご飯の味が両方楽しめるな。ご飯も味があるな、これがけちゃっぷだな。卵で包まれていてもその味を主張しているな。しつこく無いが、それでは物足りないのをかかっているけちゅっぷで補ってくれる)

 それを瞬く間に食べ終わると、次は先程切ってもらった方に手をつけた。

(これは先程のとは違い中が半熟だから、ふわふわしてとろりとしている。これでも十分美味しいが、かかっているそぅす? が深みのある味だな、色々な食材を煮込まないと出せないぞ)

 そう思いながらも直ぐに食べ終わり。今度は渦巻の形を模したオムライスを食べた。

(こんな形に焼くとは凝っているな。鉄鍋に触れていない部分が生だから先程食べたおむらいす二つの中間といった所だな。これは切って広げないから高さがあり目を楽しませてくれる。味も文句ないし、かかっているそぅすには、醤油とやらを元にしたな。これには甘みを足してしょっぱさを調和して大根をおろしていれたからさっぱりする)

 そうしてオムライスを全て食べ終わった。その食べている様子は回りの客の目を引いた。

 人一人が食べられる量では無いのをぺろりと平らげてしまうのだから無理もない。

 そうして、うえいとれすの子が空いた皿を下げてようとしていると。

「美味いな。このおむらいすを堪能したぜ。眼も舌も」

「お客様に喜んで頂き料理長も喜んでいます」

 笑顔を浮かべて喜んでいる様に見えたが、顔が作り笑いだと分かった。

 これは内心当然でしょうと思っているだろう。

(思っている事を顔に出さないのとは、まだ若いのに)

 個性が有るのは良い事だ。これはこれで面白かった。

(見た目は可愛いが、内面はもっと気が強そうだ。多分)

 あれこれと考え込んでいたらデザートが出てきた。

「お待たせしました。アイスクリームです。以上でご注文はお揃いですね?」

 頷いたら、れしーとを置いて会釈して離れた。

 銀の匙で掬って口に入れてみると。

(これは、甘い⁉ 口の中に入れたらさらりと溶けた。こんな食感は初めてだ!ひんやりとしているから口の中にあった後味が無くなった。これは美味だな。)

 あいすを食べ終わり、れしーとを持って会計にいったら、小さいうえいとれすの子がれじにいた。

「お会計ですね。オムライスが大盛り三つ。シーザーサラダ一つ。コーンスープ一つ。アイスクリーム一つで、合計で四千円になります」

 財布から五千円出した。

「五千円をお預かりしましたの。おつりの千円になります」

 お釣りをもらい財布に入れて、ちいさいうえいとれすの子の顔を見た。

「この店は美味しいからまた来るぜ。明日あたり」

「では、来られるのをお待ちいたしております。お客様」

「有難う御座いました。またのご来店を」

 それからも覇吐鬼はその店に通った。

 昼も来る事もあれば夜も来るので、常連になっていた。

 ***

 封印から目覚めて数日が経った。

 覇吐鬼は今日も店に行ったが、扉の前に「定休日」と書かれたプレートが掛かっていた。

(今日は定休日か。暇つぶしに何処か行くか)

 目的も無く、この店に来るのが習慣付いていたから予定が無くなり悩んだ。

 仕方がないから、夜まで時間を潰そうとそこら辺ぶらつく事にした。

 ぶらついていたら偶々本屋が目に付いた。

 暇なので此処に、入って本でも見る事にした。

 そこでは三十分くらいしか潰せなかった。

 品揃えは悪くないし、覇吐鬼は字が読めるので問題は無いのだが、どの本も興味が無かった。

 それで店を出たが、暇を持て余していた。

 空を見上げながらため息をもらした。

 退屈過ぎて死んでしまうと思った。

(何かパーッと騒げる事がないものか。まぁ、あったらそれはそれで困るが)

 昔は良かった。少し歩けば色々な奴に因縁つけられて暴れたものだ。

 誰かに因縁吹っかけてるみるかと考えたが、自分の馬鹿な考えに首を振り笑った。

 そうしてまたそこら辺ぶらつこうと歩こうとしたら。

 車が通る道路を挟んで何か向こうが騒がしかった。

 どうせ、路上で活動しているみゅーじしゃんとやらかぱふぉーまーと言うものだろうと、思い歩こうとしたら、聞き覚えの有る声が聞こえてきた。

 それで騒がしい方に視線を向けると、其処には知っている顔があった。

 覇吐鬼が常連になっている店のうえいとれす達だ。着ている服は私服だろう。遠くから見ても似合うのが分かる。

 それともう一人居た。二人と違う格好をしていた。巫女が着る服に良く似ていた。

 その三人に六人組の男が絡んでいた。男たちは見るからに『遊び人』といった風体だ。

遊びに行こうと無理に誘っているのが解る。それを華怜が拒絶しているが向こうは気にもせずに話しかけている。

(目に付いた以上仕方がないな)

 道路を横切った。

 その途中で車のクラクションを鳴らされていたが、覇吐鬼は気にせず走った。

 ***

 丁度その頃。

 ある神社の一室で寝ている女が居た。

 その者は義重が封印された所から。出てきた巫女であった。

 封印が解かれて数日、今だ目を覚まさなかった。

 一日に何回かお世話する巫女が部屋に入り体を拭いたりしていた。

 今日も部屋に入りお世話をしようと体に触れたら。

「うっ・・・・・ん・・・・む・・・・・」

 目が痙攣した。

 それを見た巫女はすぐさま部屋を出て宮司に知らせようと走った。

 パタパタと走る音が廊下に響いた。

 誰も居なくなった部屋に寝ていた女が目を開けた。

 目を開けて見た天井は。いつも見慣れている天井では無かった。

 布団を避けて回りを見ると、見慣れない部屋であった。

「ここは何処だ? わたしは何故ここに居る?」

 その女の名は竜胆。覇吐鬼が愛する巫女だ。

***

「ねえねえ、お姉ちゃん達、一緒に何処かに遊びにいかない?」

「面白い所教えてあげるからさ、ね。一緒に行こうよ~」

 見るからに遊び人といった風体の男達にからまれている。

「いらないわよ。それよりも早くどっか行ってよっ、うっとおしい!」

 少女は心底嫌そうな顔をしていた。

「えー。いいじゃん。遊びに行こうよ。何なら奢るからさっ」

「そうだよ。遊んでみたら意外と面白いかもしれないから試しに遊んでみようよ」

 男達はしつこくからんできた。

 それにイラつきながら、少女は男達を睨んでいた。

 その視線を受けて男達はたじろいだ。

「ふん、あんた達何かお呼びじゃないのだから、さっさと別の場所に行って他の女を口説きなさいよっ」

 これでは埒があかないと判断した男達は、矛先を別の子にした。

「如何だい? そこのお嬢さん。一緒に遠くに行ってパーッと遊ばない?」

 声を掛けられた子は何も言わず、黙って首を横に振った。

「そう言わず。ほら、一緒に行こうよっ」

 男の一人が強引に連れ出そうとその子の腕を掴んだ。

 そこから引っ張ろうとしたら、掴んでいた男の手がパシンと音を立てながら叩かれた。

「痛ってっ、何しやがる‼」

 叩かれた手を抑えながら叩いた女を見た。

「貴方たちこそ、嫌がっている人を無理矢理連れて行く何て、恥を知りなさい!」

 もう一人の女がそう叫んだ。

「紅葉お姉ちゃん。ありがとう」

 紅葉と言う女の背に隠れながら玲奈は感謝の言葉を述べた。

「気にしないで、それより怪我は無い?」

 背に居る玲奈に目を向けながら穏やかな顔で訊いてきた。

「うん、大丈夫」

「そう、なら良いわ」

 そう言って前に視線を向けた。

 先程とうって変って、怖い目付きで男達を見た。

 思わず男達は一歩後ずさった。

「あたしの可愛い妹に手を出すなんていい度胸しているわね? 覚悟は良い?」

 腕を鳴らしながら戦闘態勢をとる華怜。

「これは少々、きつい御灸をしないといけない様ですね」

 紅葉と言われた少女は半身を引いて左手を前に出した構えをとった。

 人数的に言えば華怜達が負けているが、質の面で言えば二人の方があると見て分かった。

(こいつら、少しは格闘技の心得でもあるのか?)

(な~に相手は女だ。少し痛い目に合わせたら直ぐに大人しくなる)

(その後は・・・・・・へっへへへ、お楽しみだな)

 男達が小声で話していた。

 女ではこの人数では勝てないだろうと判断してさっさと終わらせて、お楽しみにしゃれこもうと頭の中で思っていたが、それは実現する事は無かった。

「あべしっっ⁉」

「ぐふっっっ」

 男達の後ろから声が聴こえた。振りかえると男達の仲間が気絶させていた。

「これがちんぴらと言う奴らか、弱いな」

 覇吐鬼は鼻で笑った。

 その態度のカチンと来たチンピラが声をあげた。

「何て事をしやがるっ⁉」

「てめぇ、おれらのダチをボコッてただで済むと思っているのかぁ⁉」

「何だ。何かくれるのか?」

「うんな訳あるか! どうやら痛い目に会いたいようだな」

「お前らがか?」

「お前馬鹿だろ! この状況じゃあお前しかいないだろうっ」

「出来るのか? お前らに?」

「舐めるなよ、俺らはこれでも格闘技はをやっていた事がある。そこいらに居るヤンキーと一緒にするんじゃねぞっ」

 チンピラ達が構えた。

 だが、その構えは覇吐鬼の目から見ても変な構えであった。

「何だ、そのヘンテコな構えは? 不思議な踊りでもするのか?」

「てめぇ、おれらが編み出した構えを馬鹿にするのは俺らを倒してからにしやがれ!」

 ヘンテコな構えのままチンピラ達は覇吐鬼に向かってきた。

 だが、直ぐに終わった。

 半妖の覇吐鬼相手に人間が敵う訳は無い。

 チンピラ達は顔や腹に拳打をくらい倒れていた。

 ピクピクと痙攣しながら白目をむいていた。

「まったく、弱いくせに喧嘩を売るなんて。こいつらは馬鹿か?」

 パンパンと手を叩きながら、埃を落とした覇吐鬼は振り返って改めて三人を見た。

「お前等、怪我は無いか?」

 と言っても怪我をする前に助けに入ったのだから怪我はしていないだろう。

「別に大丈夫よ。それよりもあんた、何でここに居るの?」

「暇だからぶらぶらと歩いていたら、偶然聞き覚えのある声が聞こえて見てみたら、お前らが居た」

「それでこうして助けたと?」

「まぁ、そんな感じだ」

 紅葉の背に隠れていた子が覇吐鬼に近づいて怪我をしていないか訊いてきた。

「どこか怪我はしていませんか?」

「心配するな、怪我なんて一つもしていないぞ」

 その子の頭を撫でながら笑顔で答えた。

 撫でられるのが嬉しいのかされるがままにしている玲奈。

「華怜、この人は?」

「ああ、うちに最近良く来る客よ。名前は・・・・・・ええっと・・・・・何だっけ?」

 華怜は名前を知らなかった。

 そういば名前を言っていなかったなと、思い改めて名前を言う事にした。

「俺は十河義重だ。よろしくな」

「そごうよししげ?どんな字で書くの?」

「数字の十に大河の河で十河。義に重いで義重だ」

「そう十河義重ね。あたしは橋本華怜(はしもとかれん)よでこっちが妹の玲奈で」

 紹介された玲奈は頭を下げた。

「こっちがあたしの友達の(たか)(よう)紅葉(もみじ)よ」

「鷹陽紅葉です。初めまして十河さん」

「こちらこそ初めまして。俺の事は義重で良いぞ」

「では、義重さんと御呼びしても良いですか?」

「ああ、良いぞ」

 紅葉は覇吐鬼をじっと見ていた。

 その目を見られていると何処か懐かしい感じがした。

(何故だ? こいつとは初対面だぞ? 何故懐かしさを感じる)

 突然紅葉の目につーと涙が流れた。

「ちょっと紅葉、何泣いているの?」

「えっ⁉」

 本人も何故流れているのか分からず、涙を拭きながら困惑していた。

「如何かしたの? 紅葉お姉ちゃん」

 玲奈も心配そうに訊いてきた。

「何でも無いわ。ちょっと目にゴミが入っただけだから」

 紅葉は何でも無いように言ってきた。

「そう、なら良いけど」

 華怜もそれ以上何も言わなかった。

「ねぇ、お姉ちゃん、あれて」

 玲奈が指さした方を三人は見た。

 そこには上下に紺色の服を着た男達がこちらに向かってきた。

「げっ⁈ 警察⁈」

「如何見てもそうね。この騒ぎで誰か通報したのでしょう」

「ど、どうしよう、お姉ちゃん⁉」

 玲奈は落ち着きなく慌てていた

「落ち着きなさい。玲奈、あたしたちは被害者だから何も問題は無いわよ」

「そ、そうだよね。良かった」

 玲奈はほっとしていたが、覇吐鬼は困っていた。

(あれがけいさつかんという者らか。話には聞いていたが、確かしょっくむしつもん? を受けてはならないと言われたな)

 覇吐鬼はこの時代の生まれではないので、身分を証明出来る物が無かった。

 下手したら正体がばれるかもしれないから、けいさつかん? を見かけたら見つからない様に逃げろと言われた。

(面倒な事になる前にずらかるとしよう)

 覇吐鬼は背を向けて逃げ出した。

「ちょっ、ちょっとあんた、何しているのよ?」

「悪いな、俺はけいさつかんが嫌いでな、見ると逃げたくなる」

「あんたが昔何をしたか知らないけど、今回は助けたのだから問題ないでしょう」

 そう言われても逃げる事にした。

「じゃあな、明日あたり店に行くからな」

 駈け出した途中人の方にぶつかりそうになったが、無事逃げ出した。

 その背に華怜が何か叫んでいたが、気にしなかった。

 紅葉は何も言わずその背を見送った。


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