表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼の愛し歌   作者: 雪国竜
第2章 覚醒
6/13

覚醒から方針

ほてるの中に入ると天井が吹き抜けになっていた。上を観ると何処までも続いていきそうな位の高さだ。こんな建物があるとは思いもしなかった長い年月眠りつづけたのが良く解る。

 思わず観ていたら回りから視線を感じた。

 視線を送っている主は何処だと見たがその時には視線は感じなかった。

(気のせいか?)

 封印されていた影響で勘が鈍ったのかも知れない。

 これは体を鍛えなければ駄目だなと感じ、明日からは鍛える場所でも探すかと考えた。

「これを見せれば良いと渡された時言われたのだが」

「はい、お話は伺っております。どうぞこちらに。お荷物はありますか?」

「いえ、手ぶらで良いと言われたので何も荷物になるものはありません」

 羅門がこのほてるの支配人?らしいのと話したら部屋に案内してくれるようだ。

 なぜ、支配人らしいかと言うと着ている物が此処で働いている人より着ている服の質が良さそうだからだ。

 その後をついていき途中でえーれべたーなる物に乗り五十階に昇った。

 早く目的の階についたので覇吐鬼は驚いていた。

 そうしていたら部屋の前についた。

 支配人がカギを渡した。

「こちらの部屋はオートロックになっておりますのでくれぐれもこのカギを無くさないで下さい。もし紛失されましたらフロントに着て頂ければまたカギをお渡しいたします」

 カギを見たがすこし幅の広い札にしか見えなかった。

 これが鍵になるとは想像もしなかった。

 支配人が頭を下げ立ち去った。ふろんとに向かったのだろう。

「では早速入りますか」

 言われた通りの手順で部屋のカギを開けて部屋の中を観ると思ったより広く三人分のべっどが並んであり、べっどの幅も長さも丁度良かった。

 横になって寝てみると布団もふかふかで眠りやすそうであったので寝心地は最高だ。

 べっどは三人分はあるので自分は何処で寝ようかと思っていたら。

「さて、腰を落ち着けて話せる所が出来たので現状の把握をしましょう」

「うむ、銀牙の言う通りです。覇吐鬼様、何をするにしても現状を把握してから行動して下さい」

「現状で報告しないとまずい事でもあるのか?」

 二人はほぼそろって頷いた。

「そんなに重要な事が⁉何だ、それは?」

「協力者の対応とこれからの我らの方針です」

 言われて納得した。

 協力者の方はこうして言われた所に来たが会えそうになかった。

 ここに居れば協力者にはいつかは会えるだろう。

 もう一つは配下の者達の安否だ。

「風雅や他の皆は如何した?」

「向こうも用心深いのでしょう。提示した条件が破られないように人質をとりました。

風雅は人質になってくれました」

「そうか」

 それしか言えなかった。

 風雅は子供といえる頃から一緒にいてくれた。兄弟が居ないので実の妹の様に可愛がった。

 本人も「兄貴」と言って懐いてくれた。

 父の元から独立する時も何も言わずついてきてくれた。

 その妹分が人質になっているのに覇吐鬼は冷静だ。

 怒っても何も解決しないと分かっているし、条件を破らなければ向こうも返してくれるだろうと考えた末だ。

 風雅は分かったが他の者の状況を訊いた。

「影王は如何した?」

「影王は貴方様が封印された後に捕まり何処かに封印されました」

 自分が封印された時近くに居たのだから仕方がない封印されただけで良し事にした。。

 他にも配下の消息を訊いた。

「そうか、頼光(らいこう)豪羽(ごうう)(とう)(てつ)()()も死んだか」

「はい、皆勇敢に戦いました」

 その情景が目に浮かんでいるのだろう銀河も羅門の目尻に涙が見えた。

(もう一度酒を酌み交わしたかったが、それも叶わんな)

 皆覇吐鬼に従い苦楽を共にした部下である。悲しみよりも死に目に会えないのが辛かった。

 今は昔を懐かしんでいる場合では無いのだが死んだ者達の為しばし目をつぶり祈った。

(その内俺らもそちらに行くからその時酒をあびる程飲もう)

 それも、ほんのわずかであった。

 次の瞬間には普段の覇吐鬼に戻っていた。

「現状は分かった。それで今後の方針は?」

 羅門はそれを待っていましたとばかりに自分の案を話し出した。

「まずは足場になる所を探しましょう。そこで覇吐鬼様は妖力を回復して頂きます」

「それで回復が終えたら如何する?」

「また軍勢を集めて何処かの勢力と戦うか、退魔機関なる物がありますのでそこに戦をするといった所でしょう」

「たいまきかんとは何だ?」

「人に害なす妖を封印または消滅させる事が出来る者達が集まり出来た組織です。朝廷お抱えの陰陽師の流れを汲む者や外国いえ、覇吐鬼様には南蛮と言った方が良いでしょう。そういった外の国の退魔術を習得した者達が沢山居るそうです」

 それを聞いて覇吐鬼は笑っていた。

 鬼の性かそれとも性格か、覇吐鬼は強い者と戦うのが好きであった。

 それには男も女も関係無い。強ければ性別など何の事も無い。

 女であろうと強い者は強い。男であろうと弱い者は弱い単純だがそれが覇吐鬼の頭の中にある考えであった。

 今も昔もそれは変わらないと信じていた。

 方針は簡単に纏まっていた。少々行き当たりな所もある。

 覇吐鬼も銀牙も何も文句は無かった。

 それで方針が決まった。

「後は協力者の条件に従い会って風雅を返して貰うか」

「本当に返してくれますかね?私もそれが心配です」

 向こうの本心が分からないので不安になるのは仕方がない。

羅門もこれには不審がっていた。

「覇吐鬼様に会わせろと言われたが、覇吐鬼様は会った事が有りますか?」

 首を横に振った。

「どんな奴かも分からないのだから注意はするそれで良いな。二人とも」

「「御意」」

 そこで誰かの腹の虫が鳴った。

 此処につくまで何も食べていないのを気付いた。

「腹の虫も鳴きましたから飯でも食べますか?」

「ああ、俺も腹が減った。何か食べる物があるか」

 覇吐鬼は二人に食べ物は有るかと訊いた。

「ホテルにはルームサービスという物がありますそれにしましょう。外に出て食べ物屋を探すよりかなり良いでしょう」

「何が有る?」

「色々です。そこに書いている物が全部出来ます」

 羅門がテーブルの上にあったお品書きを渡し見せた。

「これは本当に色々有るな。どれが良い?」

 お品書きには漢字で書かれていて読めないものと初めて見る字もあり何が出来るか想像も出来ないが捲ると沢山書かれているのでどれにするか迷った。

「いっその事全部頼むのはどうでしょうか?ホテルをとったのは向こうですから」

 銀牙は腹が減ったから沢山食べたいと顔に書いていた。

「いや、向こうが何を考えているか分からんが、封印を解くのに手を貸しこのホテルを用意してくれたのだからそれはまずいだろう」

 覇吐鬼はどんな思惑があれ助けてくれたのは間違い無いのであまり迷惑を掛けたくなかった。

「覇吐鬼様は義理堅いですな。ですが、向こうはホテルを用意したのですから我々を歓待するのが筋でしょう?」

「そうか?」

「ええ、そうゆう物です。ですから多少は大丈夫でしょう。それに覇吐鬼様もここに書かれている物が気になるでしょう?」

「まぁな。気にならないと言えば嘘になるな」

「向こうはいつ会いに来るか分からないのですからこのメニューに書かれている物全て食べても何も言いますまい」

「しかし、それでは向こうが大変だろう?」

「向こうの条件を呑んで風雅を人質にやったのですから、これ位しても罰は当たりません」

 覇吐鬼は迷ったがその言葉に従う事にした。

 何だかんだと言って覇吐鬼も腹が減っているから早く何か食べたかった。

「銀牙、お前に任せる好きに頼め」

「ははーっ。では早速」

 銀牙はテーブルの上に有る電話をとり番号を押した。

「はい。こちらフロントに御座います」

「ルームサービスを頼みたいのですが」

「はい、ではご注文を伺います」

「サラダを三人前、唐揚げを十人前、フライドポテトを十人前、ピラフを三人前・・・・」

 聞いた事も無い物を次々に頼みだした。

 どんな物が出て来るか分からないので楽しみであった。

「以上でお願いします」

「畏まりました。お部屋の番号をお聴きして宜しいですか」

「五〇一です」

「畏まりました、五〇一ですね。お時間が少々かかりますのでお待ち下さい」

「解りました」

「では、失礼いたします」

 話終えたのだろう電話を置き、笑みを浮かべていた。

「さて、美味しい料理が届きますから少し待ちましょうか」

「聞いた限りではかなり頼んだな」

「金を払うのは向こうですから気にしないで良いでしょう。早く来ないものか」

 早く食べたくて待ちきれないのだろう、舌で唇を舐めていた。

 その癖を久しぶりに見たので覇吐鬼は笑っていた。

 羅門は呆れていた。

 そうして待つこと三十分。

 ドアをノックする音がした。

 開けるとそこには沢山の料理がずらりと並んでいた。

 持ってくる方も大変な量だ。

(これは見た事が無い物だらけだな)

 じっと料理を見ていた。匂いを嗅いでみたら旨そうな匂いが漂っていた。

 部屋の中に運び込まれてその匂いが部屋に直ぐに充満した。

 料理を持ってきた者が何か紙を出してきた。

「こちらにサインをお願いいたします」

 紙と書く物を渡した。御叮嚀に紙がずれない様に板に挟んで寄越した。

 そこで忘れていた事があった。

「おい、さいんとは何だ?」

「紙に自分の名前を書くことです。拙とした事が失念していました」

 そう三人とも食べる事で頭が一杯でこの事を考えもしなかった。

 この場合、自分の姓名を書けば良いのだが三人とも名はあっても姓が無いのだから書こうにも書けなかった。

 如何したものかと頭を悩ませていた。

 紙を渡した方も何を悩んでいるのだろうと不思議がっていた。

(仕方がないか)

 覇吐鬼は紙に自分(・・・・)の(・・)名前(・・・・)を書いた。

 それを見て二人はぎょっとした。

(まさか⁉自分の名前をそのまま書くのでしょうか?)

(そうしたら怪しまれるだけだろう!それを分からぬ方でも無いのだから何か考えが有るのだろう。それを信じよう)

(今はそれしか手は有りませんしね)

 そんな二人の不安は他所に覇吐鬼は名前を書いた紙を渡した。

 料理を運んだ者はそれを見てチェックしていた。

 二人は固唾を飲み込んで観ていた。

「はい、結構です。ではこれで失礼いたします」

 一礼をして部屋から出て行った。

 何も言われず出て行ったので二人は息を吐いた。

「如何した?溜め息など吐いて」

 何か気を使う事でもあったのかと不思議がった。

 そんな主を観て二人は自分らの心境を語りだした。

「それは気を使うでしょう。こんな事になるならルームサービスなど頼まずホテルを出て何処かの食べ物屋で飯を食べるように言いましたよ」

「その通りですな。流石に姓ないと分かったら怪しまれて面倒な事になるのが目に見えていましたから。あの者が部屋に出て行くまで冷や汗ものでした」

 安心したのか内心で思っていたことを言い出した。

「良し、腹も減っているから暖かい内に食べるか」

「賛成ですな。頂きましょう」

 二人は椅子に座り食べ始めた。羅門は椅子に座らず覇吐鬼をじっと見ていた。

「如何した?羅門、早く食べないとお前の分が無くなるぞ」

「拙は小食ですしお気になさらずに。それよりも気になる事があります」

「何だ、言ってみろ」

 口をもぐもぐさせながら訊いた。

「覇吐鬼様、あの紙のは何と書いたのですか?」

「ああ、あれな。あれは俺の名前書いたぜ」

「ですが、それでは姓が無いのに怪しまれると思いませんでしたか?」

「だから、俺のもう一つの名前を書いた」

「もう一つの名前ですか?それはいったい何ですか?」

(いみな)といえば分かるか」

「っっっっっっっっっ‼‼」

 それには驚き思わず膝をついた。

「如何したのです?膝などついて?」

 銀牙は聞いても何の事だか分かっていないようだ。

「馬鹿者‼諱を知らんのか⁉」

 銀牙はその意味より声大きさに驚いていた。

「え⁉何ですかそれは?」

「諱とは魂の名前、それを知る事で相手を呪い殺す事が出来るというものだ」

「何と⁉そんな大切なものなのですか⁉初めて聞きました」

「故にそれを知っているのは家族か自分の主君だけだ。気安く呼べば首を刎ねられても文句は言えないのだぞ」

 それを聞き銀牙は驚き、口に咥えていた鳥の腿肉を落とした。

「ほ、本当ですかっっ」

「嘘をつく必要はないだろう」

 二人は自分の主君の顔を伺った。

 当の本人といえば。

「うん。これは美味いな!揚げているようだが肉の回りについている物はどうやって作っているのだろう?これも中々いけるな、この腿肉に下味でつけているのは塩だけじゃないな、この辛いものは何と言うのだろう?」

 唐揚げと腿肉の塩焼きを食べて舌鼓していた。

 二人は何も言えず黙って観ていた。

 その視線に気づいたのか。食べている手を止め訊いた。

「如何した?羅門は良いとして銀牙まで手を止めてもう満腹か?」

「いえ、そんな事よりも覇吐鬼様、今羅門が言った事は本当ですか?」

「本当だ。ちなみに知っているのは俺の母親ともう一人だけだ。父にも言っていない」

「「・・・・・っっ!」」

 銀牙も椅子から立ち羅門と同じく膝を曲げて頭を下げた。

「おいおい、二人とも如何した?」

「あのような紙に覇吐鬼様の諱を書く事になろうとはどうか我らの不敬をお許しください」

「ご無礼の件ご容赦を」

 二人は謝っているが、覇吐鬼にすれば自分の諱を書いた事について別に気にしていなかった。それよりもこの状況を如何した物かと考えた。

(別に気にしていないと言ってもこの二人では・・・・・・・)

『気にしないではありません大事な諱をあのような紙に書いた事が我らの不注意なのですから、この命で償います』

『私もこの命で償います』

 と言いかねなかった。

 そこで逆に閃いた。知っていないからこうして騒ぐのであれば教えれば良いのだろうと思い至った。

 普通に教えても面白みが欠けるから少しひねりを加えよう。

「ああ、二人とも顔をあげてくれ」

 二人は顔をあげた。

「俺は別に気にしていないから、二人も気にするな」

「ですがっ、それでは!」

 なおも言おうとした羅門だが、待てと合図した。

「お前らが気になると言うなら俺にも考えが有る」

「それはいったい⁉」

十河(そごう)(よし)(しげ)

「はっ⁉」

「だから、十河義重だ。俺の諱だ」

 言われた二人はきょとんとしていた。

「お前らに名乗ったのだからこれからも名前を書くときも俺を呼ぶ時もその名前で呼べいいな⁉」

「はい、分かりました。義重様」

 銀牙は早速言い出した。もう一人の羅門はというと。

「拙らに教えたのだから気にするなという意図は分かりましたが、拙は変わらず『覇吐鬼様』と言います」

 言っても良いと許可を出しても頑として聞かなかった。

「ああ、良いぞ。それは自由にするから好きにしろ」

 それで終わりだと、止めていた手を動かし食べだした。

 銀牙と羅門も椅子に座り食べだした。

 少し静かであったがまたこうして主従一緒に食事をとれて嬉しいのだろう。

 三人共顔に笑みを浮かべていた。

 騒ぎはしなかったがそれはそれで楽しい食事だった。

 そうして食べ終わり覇吐鬼が真ん中のベッドで眠る事になり、右は羅門、左は銀牙という図で一夜を過ごした。

 眠る前に少しこの国の状況と生活の仕方などを軽く聞いた。

 封印された影響で体力が落ちたか分から無いが眠気がきたので眠りについた。

 眠ってから三十分もしない内に目が覚めて起きた影があった。

 その影は覇吐鬼だった。

 眠くなったから寝てみたが直ぐに眼が覚めた。

 夢見が悪いのでは無く普通に眼が覚めた。

 回りを観ると銀牙と羅門は寝息を立てて眠っていた。。

 べっどから出ると窓辺に向かった。

 窓の外を見ると、人々は居ないが明かりがいつまでも点いており車が走っている姿があった。

 それらを観ても此処に招いた協力者の考えが分からなかった。

 二人には気にするなと言ってはみたが正直に言えば罠ではないかと疑っていた。

 いつ来るか分からない者についてあれこれ言っても仕方がないと分かってはいるがどうにも向こうの意図が読めないから不安になった。

(色々と考えても答えは出ないのは分かってはいるのだが。どうにもな)

 考えるのは得意では無いのでもうそれについては考える事はやめた。

(まぁ、罠であればそれでよしとするか。本当に罠なら力で打ち破ってくれる)

 そうするのが一番自分に合っていると思っていた。

 向こうが何時でも会えるように少しで体力を回復させようとべっどに潜りこんだ。

 眠る前に浮かんだのは竜胆の笑顔だった。

(あいつは・・如何しているのだろう?・・一緒に封印されたのだから一緒に出てきてもおかしくは無いが・・・・無事であれば良いが・・・・・)

 途中から眠気が襲い眠ってしまった。


             2


 覇吐鬼達が眠りについていた時。

 封印が解かれたと分かり急いで現場に駆け付ける一団があった。

 巫女と神官の混成された集団だった。

 神官達は呪符を持っている者もいれば槍と薙刀と錫杖を持っている者も居る。

 巫女達が手に持っているのは長弓を持っている者と玉串を持っている者に分かれていた。

 一人だけ弓を持っているだけでは無く大きな薙刀を背負う巫女が居た。

 理性的な眼差し、長い睫毛。凛々しい端正な顔立ち。

 夜空の下であっても艶がある黒い髪をポニーテールにしていた。

 その黒い眼に映るのは封印していた大岩に注がれていた。

「如何ですか?結界の状況は?」

「はい。紅葉様、どうやら結界は何者かの手で破られたようです」

 それを聞いた回りに居る者はざわついた。

 封印は長い間解かれた事が無かったのがこうして解かれた。

 それが意味する事は一つだけだ。

「鬼が封印されているとは本当でしょうか?」

「ええ、伝承ではそう記されています。この地で猛威を振るった鬼がだと聴いています」

「では、封印が解かれたという事は⁉」

「この地に再び猛威を振るうかもしれません」

「では、早急に見つけねば‼」

 その声に頷き何人かあたりを探そうとしていた。

 それを紅葉は止めた。

「今闇雲に探しても無駄です。一旦戻って情報を得てから探しましょう」

 それが今やる事に合っているので皆何も言わず従った。

 神社に戻ろうとしていたら。

 突然岩が光りだした。夜空で暗くなっている中岩の回りだけ太陽が指したように眩しかった。

 その場に居た者全員目を開けられない程の光であった。

 やがて、光が止んだ。

 改めて岩を調べた。何故光りだしたか分かるかと思い調べたる事にして見たら。

 岩の前に女が横たわっていた。先程までそんな者は居なかった。

 近づき様子を窺がうと、息はしていたので生きているようだ。

「まだ息が有ります。神社に運びますので手を貸して下さい!」

「「はい、紅葉様」」

 落とさない様に気をつけて神官の背におんぶさせて神社に向かった。

 その途中、紅葉は鬼がどのような関係しているか気になって仕方が無かった。

(果たして、この出会いが凶とでるか吉とでるか)

 紅葉は出来る事なら吉と出て欲しいと願った。


              3


 夜が明け、封印から解けて初めての朝を迎えた。

 朝日が射し込む一室で覇吐鬼いや義重は目を覚ました。

(ん、久しぶりに朝日を見た。悪くないな)

長年暗い闇の中にいたから余計に眩しく感じる。

眩しい光を浴びる中寝返りをした。

日差しが暖かく、二度寝には最高の状況だ。

(二度寝は最高の至福だな~)

 そうして微睡み中に落ちていきそうな義重に。

「朝ですぞ‼起きて下され‼」

 耳元で大きい声を張り上げた。

「どわぁぁっ」

 その大きさに驚き目が覚めた。

「おはようございます。覇吐鬼様、今日は朝日が出て良い日ですよ」

 羅門がべっどに近づき起こしてきた。

 昔からどれだけ遅く寝ても決まった時間に起こすのは変わらなかった。

 いつもの習慣なので嬉しく感じたが起きて回りを観ると自分の使っている部屋では無いと分かった。

「おい、羅門」

「はい、何でしょうか?」

「此処は何処だ?」

「寝ぼけておられるのですか?ここは協力者が用意したホテルですぞ」

 言われて徐々に思い出してきた。

(そうだ、俺が封印から解かれて協力者に合う為ここのほてるで寝泊りした)

 霞んでいた頭に血がめぐっていき、ようやく頭が冴えてきた。

 回りを観ると銀牙が居なかった。

「銀牙は先に朝食をとり活動拠点になる所を探しに出かけました」

 視線から察せられたのだろう。訊こうとした事を先に言われた。

(それなら仕方がない。腹も減ったし飯を食うか)

 布団をはねのけ起き上がる。

「朝食を食いに行くか」

「御意」

 羅門を従えて朝食をとる為部屋を出た。

 義重は朝食を食べるところにつくと仰天した。

 朝食で出されている物の多さにそれが大きな皿に盛られているのがあれば、お椀やら小鉢に盛られているものがずらりとあった。

 羅門がこういった形式で食事をする方法をバイキングと言うと教えてくれた。

 意味を聞く南蛮の海賊がこうした大皿に並べて食べる食事でありそれを真似たそうだ。

 とれーに乗れるだけの物を載せて羅門が場所をとっている所にいった。

「俺らはこれから如何する?」

 取ってきたベーコンを箸で二枚纏めて口に入れ食べながら訊いてきた。

「拙らのこれからと言いますが。拙は協力者からの連絡を待っていますから、覇吐鬼様は外に出て少し見聞を広げたら如何ですか?」

 それは願ってもいない言葉であった。

「良いのか?俺一人だけそんな自由で何だったら銀牙の手伝いでも」

「それは無理ですのでお止めください」

 要らないと即答された。

 義重も分かっているのかそれ以上言わなかった。

 やがて、皿に盛られていた料理を全て食べる終わり口の周りを拭いた。

「いかが致します?義重様」

「では、見聞を広めに出かけるか」

 席を立とうとしたら羅門が懐からさいふとやらを出し義重に渡した。

「その財布の中には金が入っていますからどうぞご自由にお使い下さい」

 さいふをふくにある穴にに入れて席を立ち、ほてるから出た。

 そうして外を改めて観た。夜だったので良く風景が見えなかった部分が朝日を浴びて見えた。

(昔と全く違う風景だ。ここが今の俺が生きる場所か・・・)

 そこら辺を目的も無くぶらりと歩いた。

 おかげでほてるの回りはどうゆう建物があるか分かった。

 そうして歩き回るとお腹がすいてきた。

 近くに時計があったので見る。時計の見方は昨日寝る前に教えてくれたので覚えている。

「ええっと、ながいはりがふんを表していて、たんしんが時を表しているから・・・・・今は正午だな」

 何処か食い物が食べらる所に入って腹を満たそうとして付近を見渡した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ