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鬼の愛し歌   作者: 雪国竜
第2章 覚醒
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どうしてこうなった?

 小松の婆さんの家に着き、持ってきた荷物を玄関に置いて、俺はホテルに戻ろうとしたら。

「そんなに急いで帰らなくても、ホテルは逃げないわよ。重い物を持って疲れたでしょう。お茶でも飲んで少し休んだら?」

 と言われ、最初は断ろうとしたが、何時の間にか茶と茶請けを用意されていた。 

 そこまでされて、断るのも悪いと思い上がらせてもらった。

「ズズー、美味い茶だな」

 これは世辞ではなく本心からそう思った。

 俺がいた時代では、茶は高価な物で、子供の頃に一度だけ飲んだ事があった。

 飲んでみて思ったのは、苦くて変わった味がするだった。

 今飲んでいる茶は苦いのだが、その苦みに負けないくらいの甘みがあった。

 美味しくてお代わりしたくなった。

 流石にそれは厚かましいので、自制した。

 茶請けは、漬物だった。

「これは何の漬物だ?」

「タクアンですよ」

「たくあん? か、どれ」

 爪楊枝で刺して、口に入れた。

 噛むとポリポリと音を立てる。

「美味しいな、これ」

 丁度いい塩加減だ。そんなにしょっぱくないので、茶請けに最高だ。

「そう、わたしが去年漬けたタクアンだから、少し味が濃いと思うのだけど」

「いや、丁度いい味だ」

 婆さんと話しながらたくあんを食べて、茶を飲んだ。

 茶も飲み終わり、まったりとしていた。

 時計を見て、そろそろ帰る事にした。

 俺が立ち上がると、婆さんも立ち上がってくれた。

「もう、帰るのね。では、そこまでお見送りしますね」

「いや、そこまでしなくていいから」

 俺は断ったが、婆さんは「そこまで見送るだけですから」と言うので仕方がなく好きにさせた。

 婆さんに見送られ、俺はホテルに向かう。

 教えて貰った道の通りに行くと、直ぐに見覚えがある通りに出た。

 それで安心していると、目の前に見知った顔が見えた。

 向こうは仲良く話しており、こちらにはまだ気付いていないようだ。

(見つかると、めんどくさい事になるな)

 そう思い、来た道を引き返そうとしたら。

「ねぇ、お姉ちゃん」

「なに? 玲奈」

「あの人、十河さんに似てない?」

「あ、言われてみれば」

「試しに手を振ってみましょうか」

 紅葉が手を振っている。

 無視すると、店に行った時に何か言われそうだったので、仕方がなく俺も手をあげて応えた。

 すると、三人がこっちにやって来る。

「ちょっと、あんた、さっき何で何も言わず行ったのよ?」

「お前に言う必要あるのか?」

「有るに決まっているでしょう」

「なんか、あったか?」

「あんたの代わりに、警察に事情を説明したのだから、借りがあるでしょう?」

「いや、それを言ったら、俺はお前等を助けたぞ?」

「あんな奴ら、あんたの手なんか借りなくても、ちょちょいのちょいで簡単にのせたわよ」

「そうかい。そいつは余計なお世話をしたな」

 俺は肩を竦めた。

「十河さんは、これから何か用事でもありますか?」

「いや、これから泊まっているホテルに帰る所だ」

「つまり暇ね」

 華怜の目がキラリと光った気がした。

「簡単に言えばそうだな」

「じゃあ、買い物するから手伝って」

「はぁ⁈ 何で、おれが」

「丁度、荷物持ちが欲しかったのよ。ほら、行くわよ」

「いや、ちょっと待て。なんで、俺が、って引っ張るな!」

 俺は華怜に引っ張られた。

 玲奈は慌てて、そのあとをついて行き。紅葉はクスクスと笑いながらゆっくりと着いて行った。


 

 

 

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