友達? 違います。ただの知り合いだ
そろそろ、小松の婆さんが水を貰って来る頃だろうと思い、元の道を引き返した。
何故か、その後を紅葉と言う女がついてきた。
「お前、友達を持ってなくていいのか?」
「華怜たちは多分、拝殿に居ると思います。拝殿に行くには、この道を通らないと行けません」
だから、別に後をつけている訳ではありませんと暗に言っている。
「そうかい」
其の後は、二人は何も喋らず道を歩く。
そして、参道に差し掛かったところで、見覚えがある顔が二人も居た。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「うん、なに? 玲奈って、あんた、何でさっき逃げたのよ⁉」
「言っただろう。俺はけいさつかんは苦手だと、見るとつい逃げたくなっちまう」
「おかげで、あたし達が警察に事情を話す事になったのよ! なにか言う事ないの⁉」
「お疲れ様」
「何よ、その棒読み、もっと感謝を込めて言いなさいよ!」
「やれやれ、我が儘だな」
両手を八の字に広げて肩をすくめる。
「誰が我が儘ですって!」
「耳が悪いのか? お前しかいないだろう」
華怜が睨んでくるので、こちらも目を合わせる。
「・・・・・・珍しいわね。華怜がこんなにも男の人に噛みつくなんて・・・・・・」
「実は、お姉ちゃん、十河さんに気があるようなんです」
「本当に?」
「お姉ちゃん、昔から好きな子にはああして、突っかかていくんです」
「そうなの?」
「そうなんです」
いつの間にか、紅葉と玲奈がを話している。
俺が居る所でも、ハッキリと聞こえているので、華怜の耳にも聞こえているだろう。
「そこ。何を言っているのよ! 別にあたしがこいつを好きなわけないでしょう!」
「「本当に?」」
「ほ、本当よ」
紅葉達がじーっと見ている。
最初は目を合わせていたのだが、少しずつ目がそれていった。
「ぷっ、華怜ってば、面白いわね」
「お姉ちゃん、顔に出すぎだよ」
二人は笑いだし、華怜の顔が赤くなっていった。
「あ、あんた達!」
二人は二人は蜘蛛の子散らすように走り出した。
華怜は「待て~」と言いながら追いかけた。
「あらあら、随分と賑やかね」
声をした方に顔を向けると、そこには小松の婆さんがいた。
「婆さん、もう水は貰ったのか?」
「ええ、たっぷりと貰いました」
そう言って、水が大量に入ったぺっとぼとるを見せる。
「じゃあ、持つぜ」
俺は婆さんが持っているぺっとぼとるを持った。
「すいませんねぇ、重い物を持たせて」
「気にすんな。これくらい軽い軽い」
能力は回復していないが、これくらいの重さの物なら、後二百個は持てる。
「じゃあ、行こうぜ」
「それはいいけど、お友達を放って置いて良いのかしら?」
友達とは、多分華怜達の事を言っているのだろう。
「いや、友達じゃないから」
「あら、そうなの。随分と親しそうにしていたけど」
「俺がよく行く店の店員とその友達なだけだ。ほら、さっさと行こうぜ」
「はいはい、分かりました」
俺達は三人には何も言わず、神社を後にした。




