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時が止まる世界。
空に浮かぶ巨大なタイマーは誰にも見えていないようだ。常にカウントダウンを続けているこれがゼロになったとき、世界は活動を停止する。
停止した世界は色をなくしたかのように見える。全てが灰色一色。
人も動物も機械も動きを止め、鳥も飛行機も空を飛んだままでその場に止まる。
世界は俺の知る限りでもすでに数度、停止している。
カウントダウンしている間は数字は青で表示されている。カウントがゼロになると、数字が赤くなり、カウントアップが始まる。
その数字の赤は、とてもおどろおどろしく、血液を感じさせる。
そして、カウントアップが幾つまで行ったら何があるのかは、俺も知らない。
俺が見た最大値は24時間ちょっと。少なくともその時間は、時間が停止しただけで、具体的な事象は何も発生しなかったが、タイマーから発される凶々しさは圧倒的に増していたが。
なぜ、世界が止まった中で俺がそれらを知覚できたかと言えば、俺は『動けた』からだ。
そして、見える。街の人混みの中に、裏路地に、森の木々の隙間に、どこにでも存在する『異形』の姿が。
こんなこと、誰にも言えないけどな。