怪しいお店
行方不明の少女を追って東京まで来ました。橘 茜です。
なんともワケの分からん事態に陥っています。双子ちゃんの片方が行方不明となり、その双子ちゃんは入れ替わっている可能性があり……しかも行方不明になった約1年前の新聞記事に掲載されている白いワンピースを来た、双子ちゃんと全く同じ見た目の少女が何故か30年以上前の写真に写っている……
30年前とかは写真加工すれば説明はつくかも……しれんけど意味が分からん……
とりあえずは、その写真に女の子と一緒に映っている男と接触することに……
昨日、双子ちゃんのお母さんから聞いた妹さんの連絡先に電話してみる。
その男と結婚していたらしい、今は既に離婚しているみたいだが。
むなしい呼び出し音が続く……ダメだ、出ない……
「シアさん……出ません……直接住所に行ってみますか? すこし距離ありますが……」
まあタクシー使えと団長に言われてるから、乗って行くだけなんだが……
「ねえ……もしかしたらその妹さんも……何か巻き込まれてるんじゃ……」
ゾク……と背筋が凍る……ダメだ、これ以上は警察に任せたほうが……と、その時電話が鳴る。
今自分がかけた番号からだった。良かった……と安心……
「もしもし、探偵派遣会社の橘と申します……急なお電話失礼しま……」
『はーい? 探偵さん?』
ん? 声が子供……っぽい……40歳そこそこだと聞いたが……えらい若々しいな……
「ぁ、えっと……行方不明になられてる姪御さんの件でお話を伺いたいのですが……」
『ぁ、由良ちゃんの事ですね……私に何かできる事があれば……』
「あ、えっと……」
詳しい事話してしまっていいんだろうか……貴方の元旦那と姪御さん……実は30年以上前の写真に一緒に写ってるんですけど……とか……100%加工だとは思うけどなんか……
「その……実はですね、貴方の……離婚された元夫が……関わっている可能性が……」
ってー! こんな事言って大丈夫か?!
『はい? そ、それ本当ですか?』
「ああ、えっと……悪魔で可能性なんですけど……それで、その方の今住んでる場所とか……分かりますか?」
『住んでる場所までは……えっと、経営してる怪しいお店なら知ってますけど……』
なんだ、怪しいお店って……
『場所は……』
と、場所だけ聞いてこちらから話を切り上げて電話を切った……あまり詳しく事情を話すのは……なんか気がひける……
「シアさん、とりあえず場所分かりました……けど、なんか怪しいお店らし……」
「怪しいお店?! 行こう!!」
なんでこんなに張り切ってるんだ、この人……そういうの好きなのか?!
そんなこんなでホテルからタクシーで、その怪しいお店に向かう……まだ朝の9時……開いているだろうか。
商店街のような場所を抜けて歩行者天国になっていると、タクシーの運ちゃんにお金を渡して、そこからは歩いて「怪しいお店」に向かう。ビルの地下にあるみたいだが……
「ここ……ですね……」
なんか凄い入りたくない……地下への階段を下りた先、ドアには「異世界への入り口」とか書いてある。
「怪しいね……」
「怪しいですね……」
二人していいながら、勇気を出してインターホンを押す。
……………
しばらく待っても誰も出てくる気配はない。
「やっぱり……夜ですかね、こういうお店は……」
「夜かぁ……キャバクラか何かかな……」
そういえばどんな内容の店なのかすら分からない……
仕方ないので出直そうとしたとき、ドアの鍵が「ガチャン」と開けられる
「ぁ……す、すみませーん……私達、探偵派遣……会社から……」
と、扉を開けた人物は今まさに探している男だった。
「何か?」
不愛想な、タバコとお酒で焼けたような声で男は尋ねてくる。
「ぁ、え、えっと……漆原由良さん……ご存知ですよね、少しお話を伺いたくて……」
男はピクっと眉間を寄せて、「どうぞ」と一言だけ言って奥に……シアさんを顔を見合わせて、私達もお店の中に入った。
「好きな所に……」
それだけ言って男はソファーにドカっと座りタバコに火をつけた。外からみたらボロい店だと感じたが、中は高そうなソファーや机、置物などで埋め尽くされたキャバクラ……のような内装だった。
いや、わたしはキャバクラ行った事ないが……
男の向いのソファーに私だけ座り、シアさんは部屋の中を見物するように見て歩いていた。
「実はですね、この写真について……お話を伺いたいのですが……」
私がネットにUPされていた画像をプリントした写真を出すと、男は手に取り……
「懐かしい物を出してきますね……確かにこれは私と……友人ですが……」
友人……?
「その……白いワンピースを着た女の子なんですが……漆原由良さんにソックリなんです。まるで双子のように……」
男はタバコを吸いながら
「今行方不明になっている……どうせ私の元婚約者から聞いてきたんでしょう、なら勿体着けずに言うといい、お前が誘拐したんじゃないかと」
いやいやいやいやいや……私警察でも探偵でもないし……ただの事務だし……
「わ、私はただこの子を見つけたいだけです……何か知ってるなら教えてください……貴方が関わっているということは誰にも言いません。」
団長はもう知ってるが……
「残念だが……私は何も知りませんね……由良さんの事は聞いていますが……」
じゃあ……
「じゃあ……この写真の女の子は誰なんですか……? なんでこんな……瓜二つの女の子の写真を30年前の写真としてネットにUPしてるんですか?」
「自分のアルバム代わりだ、この友人はとても珍しい方でね……」
な、なにいってるんだ……私が聞きたいのは……
「この子が由良さんや紗弥さんにソックリなのは……信じて貰えるかどうか分からないが……」
し、信じるさ……こちとら幽霊と一緒に住んでるんだ……
「宇宙人なんだ。しかも人間の見た目をコピーして今社会に溶け込んで生きている」
…………
「信じてくれとは言わないが……」
あ、いや……幽霊よりよっぽど健全じゃないか……
「えっとですね……じゃあ……この宇宙人? が由良さんの行方に何か関わっている可能性はありますか?」
男はこちらを睨むように……タバコの火を灰皿に押し付けて消す
「何か知っている可能性はありますな。何でしたら直接聞けばいい。21時にこの店は開店します。彼女が来たら連絡しましょう」
マジでか……なんかトントン拍子に……あ、そういえば……
「あと、それともう一つ……この一年前の新聞記事に乗ってる写真は……貴方が撮影したんですか? その宇宙人を……」
新聞記事のコピーを出して机に置く。
男は手に取りマジマジと見た後……
「この新聞は初めて見ましたが……この写真は撮った記憶はありませんね……」
じゃあ……誰がこの写真を……と、今まで部屋を見て歩いていたシアさんが突然、
「茜ちゃん……一度団長に連絡しよう、私達だけじゃ……」
危険だと……シアさんは言う
「分かりました……えっと、それじゃあ……私達はこれで……ぁ、これ私の名刺です、その子が来たら連絡ください」
言いながら名刺を渡してそのまま店を出る。
「シアさん……宇宙人とかいう話……本当でしょうか……」
シアさんは、うーんと考えながら……
「まあ……歯磨いたりお風呂に入ったり……お化粧する幽霊もいるくらいだし……」
ですよねー……と二人で苦笑い……そのまま、とりあえずホテルに帰る事にした。