表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真祖の森  作者: Lika
1章 
2/53

新人歓迎会とルームメイト

 某日、午前8時。例の受付のお姉さんこと、美人から連絡が来た。というか名前聞かないと……


「ぁーはぃ……もしもし……おはようございまふ……」


携帯が鳴って起こされた私こと橘 茜。めでたく就職という夢を叶えましたが、


「おはようございま~す、突然ですが来ちゃいました~」


ん? 来たって……


バッ! と布団から飛び起きて窓から外を確認すると手を振っている美人が……


「うあぁ! おかぁさぁん! スーツ! スーツ! どこ?! 」


母親からスーツを奪い取る様に


そして父親と弟の目の前で着替える……二人ともポカーンと朝ごはん食べながら口を開けている


「ちょ、あんた! どこで着替えとるん!」


「いってきます!!」


自己最高記録で準備を終え玄関から飛び出る。そしてニコニコ顔の美人に


「す、すみません! 寝坊しました!」


いえいえ~と言いながら美人は爽やかスマイルで……


「茜ちゃんに紹介したい人がいます」


な、なんだいきなり……


「運転大好きタクマ君です! ぶっちゃけ私も疲れるので今日は往復運転してもらいます!」


ぁ、はい……


というか、タクマさん運転席から降りずそのまま今にも走り出しそうな勢いなんですけど……


「よ、よろしくおねがしいます……」


コクン、と無言で頷くタクマさん。これがクールってやつなんだろうか……


「ではでは~いきましょう~、ささ、後部座席に二人で座って和気あいあいと女子トークしようじゃないですか~」


そのままごり押しされるように車に乗せられ走りだす車。美人の勢いは止まらない。


「茜ちゃんは彼氏いる?」


「茜ちゃんは免許持ってる?」


「茜ちゃんはパンダとキリンどっちが好き?」


「茜ちゃんは今日のパンツ何色……」


せ、セクハラですよ……っていうか女子トークは?!


と、車は高速に乗りグングンスピードを上げていく。


「そういえば……茜ちゃんは幽霊とかって平気?」


「ゆ、幽霊ですか? まあ、居てもいいとは思ってますけど……見た事もないですが……」


「ふーん、じゃあ大丈夫そうだね」


なにが?! え、あの洋館でるの?!


「まあ、これから楽しく行こうね!」


まずい、誤魔化された。なんだ今の質問……


そのまま高速を走ること数時間……一気に景色は山と田んぼだけに……そのまま森を抜け例の洋館へ


「は~い、お疲れ様でした~、タクマ君もお疲れ~」


ほんとだよ……まさか高速で一回も休憩しないなんて……


「じゃあ、まずはお部屋に案内しますね~荷物とかそこに置いてもらって……今日は歓迎会もかねて飲みにいきます!」


いんだろうか……私ホントこの会社で……


「ささ、いきますよ~」


そのまま相変わらず荷物を拉致され部屋に向かう美人。先日と同じやりとりをしながら「私力持ちですから~」で流される。


そして洋館内、2階のとある一室が私の部屋と言われたのだが……


「ま、まじっすか……」


まるでお城の一部屋……ベットは屋根付き、3面鏡の化粧台、実家の3倍はあるであろうテレビまで……そして風呂トイレ付き……なんだ、ここはホテルか?!


「他に何かいるものあります~?」


「じゅ、十分です!」


部屋に圧倒されつつ……あれ? と思う。ベットが二つもあるのだ。


「ぁ、ぁの、もしかして相部屋……ですか? 誰かルームメイト的な……」


「ああ、居るんだけど……今日は見ないわね~ まあそのうち会えるから」


適当な返答だけ貰って……「じゃあ時間になったら来ますからその時までゆっくりまっててね~」と言われ部屋に一人残される。


ルームメイトか……そういえば今まで寮とかに住んだことないな……一人暮らしじゃないけど新鮮……


部屋の中をしばし探索……


「うお……冷蔵庫まである……」


「風呂ひろ……数人一気に入れるんじゃ……」


「なにこれ……ワイン……?」


「テ、テレビの下にセガサターンて……」


とりあえず凄い豪華だ……いや、セガサターンとか私が産まれる前に発売されたやつだけども……


本当にこんな所住んでいいんだろうか……とベットに座ってみる。


「ふ、ふかふか……なんかラベンダーのいい匂いが……ん?」


枕元に写真が……なんだろ、40代の叔母さんの写真……相部屋の人の持ち物かな……


察するに母親の写真か……よっぽど大事なんだな……私なんて母親の写真なんか持ってないし……


そして約2時間後……窓の外は夕日で森が紅く綺麗だ……と思っていると


「茜ちゃーん、いきますよ~」


は、はい! と立ち上がり、そのまま再び車に乗る。さっきとは微妙にメンツが違う。私に美人にタクマ君に……団長と呼ばれる代表……

その団長が助手席に座って後部座席を振り向きながら


「どこ飲みに行く? ぁ、橘さんはお酒飲めるほう?」


なんかこのノリにも慣れてきたな……


「ま、まあ人並みくらいには……」


「いいねー、そういう子って結構飲むんだよね~」


「団長、調子にのってまたワインばっかり飲まないでくださいよ~? この前グロッキーになったばかりなんですから」



グロッキー……リバースしたということだろうか……


「いやー、だって俺ワインが一番好きだしー、君だってこの前寝ぼけて公衆の面前で……」


「それ以上言ったらなぶり殺しますよ~?」


ゾクっと車に乗る全員に悪寒が……っていうかなぶり殺して……

そのまま車は比較的街中に……近くに駅があるのか、人通りも多くなってくる。


そして車はとある居酒屋の前に……と言うか車は帰りどうするんだろ……と


「そういえば……タクマさんは飲まないんですか?」


遠回しに車どうするんだ、と聞いてみる


「タクマは下戸だからね、今日はハンドルキーパーしてもらうから。その代わり代金は俺とシアが持つから、三人とも遠慮しないでねー」


シア……シアってこの美人の事? 


「え~、団長の奢りじゃないんですか~?」


と、そのまま居酒屋の中に……個室になってて4人で一緒に。うお……田舎だけどタブレットで注文する店か……ここは……


「ぁ、おにいさーん、生4つにコーラ一つ~」


団長……タブレット使えよ……


そのまま10分程経ってから飲み物が全員にいきわたり、乾杯……なんだけど……


「あの……なんでビール4つ頼んだんですか?」


団長が飲むほうで2個一気に頼んだという可能性も……


「ん? あれ、シア、まだ紹介してないの?」


ん?


「ああ、まだ今日は出来てないですね~ そのうち茜ちゃんも会えると思いますけども~」


なんだ、この会話……


そのまま時は過ぎ……


「タクマってイケメンでしょ? 橘さん付き合ってあげてよ~」


完全に出来上がった団長がお決まりの事を言ってくる。


「い、いや~タクマさんにはもっと良い人居ると思いますけど……」


「そうですよ! 団長~、茜ちゃんにその運転オタクは無い無い! 茜ちゃんは私のものじゃ~」


と、抱き付いてくる美人ことシア……


ん……? あの余ってたビールがいつの間にか無くなってる……誰か飲んだのかな……


「そろそろ締めようか~、最後に何か食べる? 橘さん」


団長に進められて……じゃあ、とアイスクリームを頼むと美人も乗っかってきて結局全員分頼む。


んで……またしてもアイス一個多い……なんなんだ、この儀式は


「じゃあ帰るか~、お会計すましてくるから先行っててー」


フラフラと歩きだしてレジに向かう団長……それに続いてシアさんもサイフを出して……ぁ、結局二人で払うのか……


そしてそのまま全員車に乗り込み、タクマさんに運転してもらって洋館に帰還。どうでもいいが夜の森って怖すぎる……


「じゃあ橘さん~、明日はゆっくりしててね~本格的に仕事してもらうのは明後日からにするから~」


「ぁ、はい……お疲れ様でした、団長……」


なんか団長って呼ぶのが普通になってきたな、私……そのまま豪華な部屋に帰宅。そういえばスーツのまま飲みに行ってしまった……臭いかな……消臭剤振って干しとけばいいかな……と思いつつスーツ干して風呂に入ろうと浴室のドアを開けると……


「ん? お風呂が沸いてる……マジか……もしかして相部屋の人が先に入ったのかな……」


なんにせよ、ありがたいとそのまま掛け湯して妙にデカい浴槽へ。


「あー……疲れたー……。タクマさんに何か悪かったなぁ……シアさんは……意外とお酒入っても変わらないなー……団長は……普通の酔ったおっさんだったな……」


そういえば……常に一個余分に頼んであったビールやアイスはなんだったんだ、いつの間にか無くなってたし……私が気が付いてないだけで誰か食べたのかな……と思いつつ……風呂を終わらせて持ってきたパジャマに着替える。


「ぁ、そういえば……3面鏡とかあったな……」


使ったことないし……と、化粧棚の3面鏡を開いて正面にすわる……そのまま髪をドライヤーで乾かしながら……ふと……


「…………誰も……居ないよね……」


なんか気配がする……なんだろう、この寒気というかなんというか……


気のせいか……と、3面鏡のスミに……後ろ姿の女性の頭が映って……


バッ!! と後ろを振り向く。 誰も居ない、当たり前だ。酔ってるか、私……そうだ、酔ってるんだ。


「い、いくら洋館だからって……ないない……」


と、再び3面鏡に向き直ると……自分の真後ろから鏡をのぞく女性の顔が……








ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア






  洋館に響き渡る悲鳴。聞きつけたシアさんと団長が部屋に飛び込んでくる。


「ど、どどどどどうしたの?! 茜ちゃん!!」


シアさんが倒れた私を起こしながら……思わずパジャマ姿のシアさんに抱き付きながら


「へ、へんなのが……鏡に……映って……」


「変なの?」


私はそのままシアさんの胸に抱き付きながら子供みたいに……鏡は見れない……もう鏡なんて使えない……


「もー、脅かしたでしょ、ルイちゃん」


ルイ……? え、だれそれ



「全然気づいてくれないんですもん……だったら、こうするしか……」


と、知らない声が聞こえてくる。え、何……


「茜ちゃんは霊感ないんだから……仕方ないでしょ?」


え、え? なんの話してんの? 霊感て……


「茜ちゃん、ちょっともう一回鏡見てみて、大丈夫、私達も一緒だから」


い、いや……私当分見たくないんですけど……と、チラ……と3面鏡を見る。



いるいるいるいるいるいるいるいるい!! まだ居るい!!


「見えた? その子がルイちゃん。ルームメイトね。」


え……すみません、意味が……


「声は聞こえると思うけど……橘さんには見えないから……鏡とか使ってもらうしか……」


な、なに言ってんだ、団長……鏡つかって見るとか……まるで……


「ぁの、ぁの! 意味が……わかりません、っていうか、なんですか! この部屋幽霊でも住み着いてるんですか!」


「そうそう、物分かりが良くて助かるわ~」


とニコニコ笑う美人ことシア。


と、耳元で……


「よろしく……おねがいします」


思わずまた叫びそうになったのを口で塞ぎながら聞こえてきた方を見る、でも誰も居ない……


「もー、ルイちゃんダメって、脅かしちゃ……茜ちゃん、ほら、鏡見てみて」


むりむりむりむりむ! もうムリむ!


「ほら、勇気を出して……」


と、3面鏡に強制的に顔を向けさせられる……するとそこには手を振ってる女の子が……後ろに……


「え、あの……、居ませんよね……?」


「いるよー、橘さんには見えないけど……鏡越しなら見えるでしょ?」


団長がそんなことを言ってくる……


か、勘弁してくだしあ…… 今までの不自然な質問や行動の意味の理由が分かってくる。初めてここに来た時に勝手に開いた玄関のドア…車の中でのシアさんの質問……飲み会の時に一個余分に頼まれる品……沸いてた風呂……いや、それはいいとして……

私の中でソンナバカナーと普段なら鼻で笑うような現象が今目の前で……


「ルイちゃん、幽霊だから。これからよろしくね?」


私は全力で断ろうとしたが無駄だった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ