♯07 格差
夜闇の中でも、視界は通る。猫科で夜行性なら、納得のいく話だった。
▼ルゴナ大森林深部名もなき川の畔(夜)
見上げると広がるのは、昼間の木漏れ日に取って代わった、木々の葉の隙間を縫って輝く、数多の星達。
多分、木の上に行けば、降り注ぐような星空に圧倒されるのだろう。
ともあれ、無事にお互いを名前で呼び合う関係になり、魔法とスキルの確認を済ませた僕は、すこしお腹が空いている事に気が付いた。
文目さん曰く
『意識が無かったのは半日くらいで、今は夜の9時くらいね』
との事。
ネリさんとのもろもろが有ったのが昼の12時くらいだったらしく、その後に枝の上で目覚めたのが、翌朝の8時を少し回ったくらい。
まさかの『異世界紀行、現在33時間目!ただし意識は9割無し!』だった。
そりゃあお腹も空くってものだ。
因みにネリさんとの遭遇時、既に僕の中に存在していた文目さんは、彼女に突っ込まれないように、存在を隠す結界を発動していたらしい。
器用で奇妙な話だった。
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さてさて、それでは僕の魔法初行使。
調べた結果分かったのは、今の僕が、単身で使える魔法は、存在しない。という事。
『地味にショック』
そして、文目さんとの共同でなら、実に50を超える魔法の行使が可能(結界不含)である。という事。
『ひとまず助かった。もう、文目様って呼ぼうかな』
因みに、文目さん単身だと、200を超える魔法の行使が可能(結界不含)という事‥‥。
『こんなんチートや!チーターや!』
そして、結界であれば、僕単身で[周囲探知結界(狭)][疑似擬死結界(短][四編結界(多重化可)]の三つで
周囲探知は、自身の周りに存在するあらゆるものを探知する結界を、自分を中心に展開するもの。
疑似擬死結界は、擬死結界の下位互換(露見しやすいらしい)を、自身を中心に展開するもの。
最後に、四編結界は、対象を中心に、立方体の結界を展開するようで、防御にも隔離にも使える攻防一体の便利結界だった。
方位!定礎!なんてやったのは、言うまでもない。
『滅は当然出来なかったし、気持ちが発動に向いた瞬間に展開されるから、若干危ないかも知れないなぁ』
因みに、空間を固定(?)するらしく、水やその他の持ち運びみたいな事は出来なさそう。
辺りに四角い木や石を散らかし、水たまりを作って、無理であると理解した。
実験、大事!
で、共同が13、文目さん単身で30と、此方はおとなしい数字に収まった。
『それでも超えられない壁を感じたのはナイショにしておこう』
なので、僕がとれる道は一つ!
『文目様、どうぞよろしくオナシャッス!!!』
ふっ、情けないな、俺って‥‥。お前の涙も拭えず、心の中で土下座する事しかできないんだから、サ。
『バカ言ってないで意識を集中なさい』
良いコンビとしてやっていけそうな気がした。