♯05 称号
唐突に頭に響いた声は、どうやらネリさんと話した時に嫌って程出していた、僕の声と同じものだった。
自分の意志とは関係なく発せられる、システムメッセージ的なものなんだろうか‥‥。
「え、と、初めまして?」
『声に出さなくても会話は出来るけど?』
チクショウ。実際心細かったから、正直嬉し泣きしそうだよ。
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自身の置かれた状況を端的に理解するには、第三者の視点が有効である。
の精神で、心の声と対話してみた。
どうやら、ネリさんの攻撃から生還出来たのは、心の声のお陰で
『ようは、魔法とかを感知されないようにして、死んだようにみせかけて、瞬間移動した』
らしかった。
その際に発動したのが、先刻解除された擬死結界というヤツで、生命反応を感知されなくなる効果が有るのだそうだ。
他にも[多重上位防御結界][移動阻害無効化][周囲広範囲敵性体感知]なんかを使用したらしい。
知らない内に、僕は大魔導士になってしまったのだろうか?なんて思いつつステータスを確認すると、相変わらずのレベル1だった。
職業は[魔王候補]から[放浪者]になっていたけど。
引き続き話を聞いていると、どうやらステータス確認のときに意識を集中すると、詳しい情報を得られる便利機能が有った。
ネリさんは意図的にソレをスルーした節が有ったけど
『まぁ、初対面で全部の情報を知られちゃったなんて、冗談じゃないくらい危ないしなぁ。僕は見られただろうけど‥‥』
情報が相手に渡れば、それだけで対処されやすくなる。
今の僕に、ネリさんに対応できる手段はないだろうけど、それでも魔王にするなんて目的がある以上、知られない方が彼女にとっては、保険的な意味合いとしては、必要だろうし、得心いく話だ。
気がつくと使用可能な魔法や結界(魔法と結界は発生原理が違うらしい)が存在していた事や、自身の称号の総数(まさかの二桁所持)にも驚いたけれど、何より驚愕したのは、称号にもレベルがあるという事、そして、いくつかカンストしている物が有った事。
先ずはレベル1
[喚ばれし者][次元を超える者][青き虎人][ぶら下がる者]
最初の三つは、この世界に召喚された時に得られたんだろう。ステータスに補正は無い物の、レベルが上がれば何かしらの効果が期待できそうだ。
『‥‥ぶら下がる者って、木に引っ掛かってたからだよね?』
有りえない雑さだった。
次にレベルカンスト分
[影に潜む者][夜に動く者][武道の達人][妄りに想う者]
うーん‥‥、この‥‥。
前二つは夜型だから?なのかな。まだ記憶があやふやで、確信は持てないけど。
武道の達人は、小学生からやってた護身術のお陰だろう。各種ステータスに+効果が見られた。
『みだりにおもうもの‥‥‥妄想族‥‥?』
もう、言葉もない。
心の声に『変態』の一言を賜り、本当にへこんだ。
残りの称号は、軒並みレベル5くらいと、半分までは成長しているらしく、ステータス補正は無いものの、行動に補正が付くようで、今後の旅路に役立つだろうので、これは素直に嬉しかった。