♯04 確認
▼ルゴナ大森林深部名もなき川の畔
乱立する大樹の葉によって、常夏のこの地においてすら、昼間も涼しい大森林深部。
やさしい木漏れ日に、鳥や小動物の鳴き声が静かに響く空間に、苔むして翡翠色に染まった水底を流れる清浄な川。
その名もなき川をやさしく見守るように聳え立つ大樹の枝の一本に、青い毛皮がぶら下がっていた。
僕だった。
未だにネリさんの放った閃光の影響で、目の前はチカチカするし、全身にしびれているような感覚は有るけれど、どうやら僕は生きているらしい。
『むぅ‥‥、死んだかと思ったんだけど‥‥、生きてるよなぁ』
実際、余りにも浮世(地球基準)離れした光景を見降ろしているせいで
「いえ、アナタ死にましたよ?」なんて言われても信じてしまいそうだった。
ともあれ、ネリさんと初対面した際に巻きついていた黒い布は見当たらないものの、五体満足で有る事にとりあえずの感謝をして、枝の上によじ登り、腰を下ろした。
『うーん、毛皮から連想した通り、どうやらケダモノちっくな身体能力が備わっているようだ‥‥』
幸い、目の届く範囲にモンスターは見当たらないし、地面に降りて自分の体に異常が無いかの確認を。
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地面直前で左右の確認、地面に降り立ち周囲を確認、支流と思しき小さな川だけど、何かが潜んでいないかを十分に見渡し確認(安全確認大事!)して、ようやく水面を覗き込んだ。
「Oh...」
紫がかった青い毛並み(結構綺麗でサラサラ)。ニカッと笑うと顔を見せる犬歯(あからさまに丈夫そうで鋭い)。体の構造(足の形や、指の関節とか)は人間準拠みたいだけど、指の数は手足共に四本ずつ(丈夫そうな鋭い爪付き)。
『予想としては、勝手に人狼な的な感じかと思ってたけど、これは明らかに‥‥』
毛並みに交じった、より濃い色の縞模様は、正しく虎のソレだった。
どうみても、見事に獣人だった。それも見た感じデンジャーな、人虎。
『見た目強そうなのに、これで子供の平均よりはマシって、この世界の人間はどんなパワーファイター揃いなんだ‥‥』
幸先は最悪。ネリさんの話をそのままに考えると、用心してかからないと、多分すぐに命を落とす。
生命の危機がデンジャラスな世界で僕の冒険は始まった!
なんて決意を新たにしたとたん、漸くまともに思考出来るようになったのか、ふとした疑問が口をついて出た。
「あれ?そういえば、なんで僕は生きてるんだろう‥‥?」
『擬死結界及び、各能力上限拡張、解除』
うん、ナニゴトデスカ?
これ、読み返した感じ、まだ導入です?よね‥‥。
導入は今回までと言ったな。アレは嘘だ。って事で、済みませんがしばしのお付き合いを!