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召喚師(?)さんが召喚されました。  作者: 平野 笹介
第一部 転生 邂逅 別離
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♯03 別離

御指摘を頂きました、記憶喪失について、検討、比較の上、修正しました。


素の(称号補正分、括弧内の+数字を除いた)ステータスだと、最初の敵の代名詞たるスライムにすら、届いているのは耐久力だけと言われた時には、流石に軽く死にたくなったのも、仕方ない事だと思う。


『え?っていうか何?この物騒な称号‥‥。[捕食者]なら釣り好きだったとか、[夜に動く者]なら、夜型だったのかな?とかで済むけど、それ以外が分からない。危なすぎる‥‥』

過去の思い出や、自身の経歴を思い出そう。そうすれば何か説明できる理由が有るかも知れない。なんて考え始めたところで、僕は愕然とした。血の気が全身からスッと引いていく感覚を、初めて味わった。


『思い出せない‥‥。記憶‥‥喪失?』

正確には、よくドラマとかで見る記憶喪失ではなさそうだった。

昨日の晩御飯は勿論、両親や、子供の頃によく遊んだ友達の顔も浮かんでくる。

好きな小説の続刊発売日が延期続きな事、働いていた事、何故かその仕事を辞め、新しい職を探した事、そして、面接会場で面接官にムカついた事も覚えている。


『あのハゲメガネ、もしまた会ったらレンズに指紋べったりつけちゃる‥‥』


思考が脱線したけれど、ともかく、前職の【内容】や、称号に通じるような、【生き方】みたいな部分に心当たりが無い。有ったはずなのに、思い出せない、そんな気持ちの悪い感覚‥‥。


『テレビか何かで見た、‥‥選択制健忘か局性健忘だっけ‥‥?』

専門知識が有る訳じゃないし、はっきりとは言えないけれど、そんな特集を見た気がする‥‥。マジカヨ。


青い顔(毛のせいで物理的にも)を両手で挟み

『あっちょんぶりけ』

やってる場合か‥‥。


心を落ち着かせようとしていると、ネリネリさん

『もうネリさんで良いや』

が、温かい目でこう告げた。


「まぁ、その、魔力の総量についてはあたしにも判別できないくらいだし、途轍もない能力の片鱗って可能性だってあるわ!それに、ステータスの平均は、この世界の人種の子供よりも上回ってるし、気を落とす事無いわよ!‥‥多分‥‥うん、多分」


ネリさんの言葉づかいが砕けに砕けた。


『っていうか、この世界にも人は住んでるんだ。良かった‥‥』


「え‥‥と、それで、これからどうすれば良いんでしょうか?何をもって世界を救った。と‥‥あぁ、この世界の寿命を延ばすんでしたっけ。その為には何をすれば?あ、因みに、目的を達成したら、元の世界に戻れるんでしょうか?」


僕にはやらなければいけない(メガネに指紋をつける)事があるので、可及的速やかに目的を達成して、元の世界に帰らなければいけない。


魔法が有る世界なら、きっと姿や性別も元に戻せるはずだ。


『最悪、何かしらの魔法道具で、姿かたちだけでも変えられれば‥‥』


気を取り直して、希望的観測を思い描いていると、ネリさんは強烈な一撃を口にした。


「そうですね、先ずは先述の通り、能力強化の為に私の加護の下、成長して頂きます。その後、星中の知恵持つ者達を支配し、世界の正常化が完了するまで、間引いてもらいます。あ、アナタの肉体は、もうこの世界に内包されていますので、元の世界には帰れないですよ?」


「え、な、ナンデヤネン!!!」


思わず全力でのツッコミをしてしまった。



■■■



 ネリさんの話を聞く限り、どうやら元の世界へ帰る手段はないらしい。

かなりのショックだけど、起きた事に文句を言っても事態は好転しない事の方が多く、僕の信条の一つに、起きてしまった事は仕方ない。再発を防いで、前進しよう。が有るので、ネリさんに

「今後、相手が自分よりも下であろうと、相手に確認してから実行して下さい」

と、お願いして、頭を切り替えた。


そして、シリアス方面に向かう思考。


‥‥これは譲れない。こればかりは、絶対に、譲らない。


「僕には、たとえ世界が滅ぶとしても、今、生きている人たちを支配して間引くなんて、出来ません。」


「では、今後どうしますか?此処は人跡未踏の地。周囲に人の住処は無く、付近に生息する魔物はアナタでは対処できない者達ばかりですよ?」


「ひっそり、こっそり、人里まで落ち伸びてみせます」


「この世界の人々は、現状、亜人種であるアナタに、好意的ではありません。奴隷として売られるか、最悪、殺されてしまうかも知れませんよ?」


「言葉が通じれば、分かりあってみせます。それで、世界の寿命も、何とか出来るように、やるだけやってみます」


「どうしてもですか?」


「はい」

なぜここまで意固地になっているのか、僕にも分からないけれど、それでも僕には、魔王という選択は出来なかった。


どうしても、出来なかった。




 問答の後、しばし見つめあってから、ネリさんは綺麗な薄藤色の長髪を、血と闇色に染め逆立ててて

「そうですか‥‥、では、次に行くので、アナタは此処で終わって下さい」


少し残念そうな、悲しそうな笑顔でそう告げて、手のひらを僕に向けたのだった。


目も眩む激しい閃光に包まれ、僕の冒険はここで終わってしまった。

導入部分はこれで終了です。ジューゾー怒りの解脱 編はこれで終了。

次回以降はジューゾー怒りの冒険者生活希望 編にシフトしていきます。

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