♯01 森林
『どうしたもんかなぁ‥‥』
目の前の女性に魔王がどうのと話を振られ、僕は正直なところ、結構混乱していた。
周りに人影は無いし、先刻のセリフも僕に向けられたものだとは思うんだけど‥‥。
『‥‥魔王て‥‥』
目の前の女性は、反応できずにいた僕に怪訝そうな顔を向けて
「‥‥言葉は、理解できますか?」なんて言っている。
うん、言葉は分かるんですけどね。意味は分かんないけど。
ともかく、人気のない森林の入り口に二人きり。
まずは状況の確認もしないといけないし、返答しておこう。
こんな大自然に、男女が向かい合っているだけって状況も、変な感じだし。
「え‥‥と、僕h え!!?」
訂正。向かい合っているのは女同士だった。
▼ルゴナ大森林入り口カプラ平原側
言葉が通じる旨を伝えて、状況の確認をしてみたところ、どうやらこの女性ロンネリオ・オルネリア・カーグサス・レイン・コーネリアというらしく、女神の使徒だと自己紹介された。
『長いからネリネリさんと覚えよう』
また、今僕たちがいる土地は、地球とは別の次元に存在している、ファンタジーな世界で、ここはルゴナ大森林の入り口だとも説明された。
いや、説明されてもやっぱり分からないけど。
まぁ、僕の住んでいる辺りに、こんな森なんて無いし、当たり前といえば当たり前なんだけどね。
『取り敢えず、納得したフリでやり過ごす。話はそれから』
「それで、ここが地球とは違う世界で、貴女に召喚(?)された、ってのは理解できたんですが‥‥、ところで、僕は何の為に呼び出されたんですか?」
ネリネリさんは、笑顔で頷くと
『可愛いっていうか、綺麗だなぁ』
「青の魔王、アナタにはこれから、世界を救う為に魔王になってもらいます。」
『はい、わけわからん』
「少々手違いは有りましたが、それでもこの世界はアナタを求めています。ご協力願えますね?」
『っていうか、魔王ってなに?世界を支配しようとして、勇者にぶっ○されればいいの?いきなり呼びつけられて死ねってか!世界救えてないんじゃ!?』
益体の無いツッコミを脳内で入れていると
「先ずは、この世界の事を説明いたしましょう」
ネリネリさんは、僕の混乱を余所に、笑顔で続けた。
彼女の笑顔は、やっぱり綺麗だった。