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召喚師(?)さんが召喚されました。  作者: 平野 笹介
第二部 生存 認識 旅立
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♯09 準備

 目の前の大カメレオン以外には、取り敢えずの脅威が無い事を敵性感知で調べ、いつでも対処できるように、相手を観察する。


 傾いた巨木の幹に抱きつく形で、目だけが異様に爛々と輝いている。

トカゲを横からプレスした様に平べったく、凸の文字を丸っこくした感じの胴体に、夜闇に溶け込もうとする細かな鱗の一つ一つが、奇妙に蠢いている。

ドラム缶程にもなる四本の脚は胴体とは不釣り合いな程太く、そこだけ発達した鱗は、鎧とも言える有様だ。

極めつけは、長大な尻尾で、恐らく体長の二倍はある、凶悪なムチと言える。


ステータスどころか、見た目の強度でも敵わない相手ではあるけれど、文目さんの魔法や、僕自身の結界・スキルを使用して戦闘を行えば、勝機は十分に有ると判断出来る。‥‥多分。



出来れば戦いたくはないけれど、こんな魔境を行軍する以上、魔法が通じないとか、そういう相手が出てこないとも限らない。


戦闘行為自体に慣れておかないと、今後どんな障害に悩まされるか知れないのだ。

なので、転移魔法も、今回は最後の手段に取っておく。


『危なくなったら、すぐに転移お願いします!!』

『気が向いたらね』


文目さん‥‥‥。



■■■



カメレオンが身じろぎして、ガッチリ目が有った。


そのままムチの様にしならせつつ、尻尾を高く掲げ、此方を見つめている。


どんな攻撃が来ても対応できるように腰を低く、余分な力を抜いて構えた時に、カメレオンが不意に動き

「青イ獣、我ガ縄張リニ、何ゾ用カ?」


声を発した。


めちゃくちゃ渋くて、良い声だった。




■■■



 挨拶をして、僕たちに自分から戦う意思が無い事、転移魔法の暴走で、人里の近くから飛ばされて、道に迷っていた(説明が面倒だったので誤魔化した)事を伝えると、どうやっているのか大きな目を細めて、カメレオンが大きく頷いた。


 唐突に全身の毛が逆立つ感覚に襲われるのと同時に、文目さんの大声が響いた。


『重蔵!伏せて!』


慌てて姿勢を低くした瞬間、僕の頭が有った位置を、物凄い速度で何かが通り過ぎる。


カメレオンの尻尾だ。


「ちょっと!」

口を開くも、続け様に襲い来る尻尾の連撃に、まともに言葉が続かない。

「待った!」ブォン!!

「なんで‥」ドゴォッ!!

「このっ!」ブアッ!!


猛攻の最中、カメレオンが厭らしい笑い声で僕の疑問に答える。


「愚カナ獣人ニ、一ツ教エテオイテヤロウカ?ヨク聞クガ良イ」


「今忙しいんで、出来れば尻尾を大人しくさせておいてもらえませんかね!?」


尚も迫り狂う(本当に狂ったように振り回してる)尻尾をなんとか躱わし、[四編結界]の準備をしつつ、文目さんに[各能力上限拡張]をお願いする。


因みに、この上限拡張。今の僕が耐えられる限界近くまで、ステータスを底上げしてくれる魔法らしい。


『説得出来なければ、最悪、魔法と結界でコテンパンに伸す!』


出来ればだけど!


 戦闘準備を頭の中で整えていると、カメレオンが尊大に言い放った。


「我ハ偉大ナル森ノ王!縄張リニ踏ミ込ンダ時点デ、下等ナ人種ナゾ、食ライ殺ス事ニ決メテオルノダ!」


『[各能力上限拡張]、[スキル補正上昇補助]、[結界各性能上昇]、[物理防御結界]発動。やっちゃいなさい』


過剰強化を頂戴して、余裕が出た僕の心に浮かんだ一言は言うまでもなく

『文目さん、声が冷たいです』だった。

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