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プロローグ
――曖昧な記憶を辿ると、浮かんでくるのは後悔と苛立ちだった。
豊かに過ぎるとしか言えない大森林の入り口に、向かい合う人影がひと組。
薄藤色の美しい長髪をゆるく纏めた、清潔感あふれる白い服の女性。
感極まったと言って差し支えない表情を取り繕って
「よくぞ私の下へ参りました、青の魔王よ」等と宣っている。
青の魔王と呼ばれた、もう一つの人影は、全身を黒い布に覆われ、その表情を窺い知る事は出来ず
また、何の反応も見せない為、木々の葉の風を受ける音や、鳥の囀りが、二人の周囲に満ちるばかりであった。