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転生クエスト - ヤンキーが異世界に転生したら -  作者: 早手祐也
【第一章】 モンスターカーニバル
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6-老賢者

 現れた老執事に話しかけることなく、咲哉は続けてネームオーダーを行う。


「お前の名前は¨ワイズ・オールド・マン¨だ!」


 咲哉の付けた名前は、巷で『ワイズ・オールド・マン』または『オールド・ワイズ・マン』と呼ばれ、老賢者を意味する。

 何でも知っている老執事なら相応しい名前といえよう。


「初めまして、咲哉様。ネームオーダーありがとうございます」

「うむ。これからはワイズと呼ばせてもらう。よろしくな」


 微妙に上から目線な咲哉は、自分専属の執事ができて調子に乗っているようだ。


「早速でわるいが、聞きたいことがある。この島の生態系についてだ」


 地図を見せながら島の生態系を確認する咲哉。


 ワイズの話によると、草原や森、湖や川には地球と変わらない虫や動物、魚が生息しており、咲哉以外に人はいないとのことだった。


 その話を聞いて安心していたのも束の間、驚愕な事実が判明する。


「はあ? モンスタープリズンだと!?」

「はい。モンスタープリズンでございます。この山脈と周辺の森には大変凶悪なモンスターが生息しております」


 モンスタープリズンとは、神が作ったモンスターの監獄であった。

 アスナルドに生息しているモンスターの中でも、特に凶悪で人の手に余るようなモンスターが閉じ込められている場所とのことだった。


「神のやつ、ろくな説明をせずに物騒な島を用意しやがって!」


 その頃神は、『咲哉に何かいい忘れておった気がするのう』などと、頭をかきながらぼんやり考えていたのはここだけの話である。


「モンスタープリズンなんて物騒なものがあって、この島は大丈夫なのか?」

「モンスターだけに作用する結界が張っておりますので、凶悪なモンスターが外に出てくる心配はありません」

「なるほど。じゃあ、安心か」

「おそれながら、咲哉様なら凶悪なモンスター相手でも、問題ないかと思います」

「問題ありありだろ! 俺はまだレベル1だぞ」

「世界構築スキルがあるではありませんか。スキルを使えば、攻撃の無効化はもちろんのこと、モンスターを一瞬で消滅させることもできます」

「なるほど。この島でなら、俺は何でもありってことか……」


 どこか遠い目をする咲哉。まるで自分が人間ではないといわれた気分である。

 しかし、咲哉は知らないが、神の使徒となって転生した次点で既に人であって人でない存在となってしまっている。

 咲哉に寿命は存在しない。

 不死ではないが不老なのだ。

 このことも神は咲哉に説明し忘れていたことであった。

 モンスタープリズンのことといい、不老のことといい、2度あることは3度あるというから他にもあるかもしれない。


「ん!? 待てよ。ひょっとして、世界構築スキルって物を生み出すだけのスキルじゃないのか?」


 ワイズがいったことは、『スキルを使えば、攻撃の無効化はもちろんのこと、モンスターを一瞬で消滅させることもできます』ということだ。

 世界構築スキルは機能が制限されているので生物を生み出すことはできない。

 よって、生物を消すこともできない。

 ワイズがいっているのは、何らかの物理エネルギーを発生させてモンスターを一瞬で消滅させるという意味のはずだ。


 攻撃の無効化は、アイテムや装備などを作れば可能だろう。

 しかし、ワイズは攻撃を無効化するアイテムや装備を作るということは一言もいっていない。

 おそらく、モンスターの攻撃を無効化するルールが作れるということではないだろうか。


 このことから咲哉は世界構築スキルが物を生み出すだけのスキルではないと思ったのである。

 そんな疑問にワイズは答える。


「世界構築スキルは物を生み出すだけのスキルではございません。世界を構築するスキルです」

「じゃあ、この島限定であれば、モンスターは俺を攻撃することができないというルールを構築することができるってことだな?」

「作用でございます」


 これは咲哉の想像を遥かに上回る事実だった。

 この島において世界構築スキルを持つ咲哉は神に等しい力を持っているといえるのだ。

 手から炎や雷を出すなんてことは当たり前にできる。

 島に雨が降ったときも、咲哉の頭上のみ雨を降らせないなんてことも可能なのだ。

 MPが許される限りの範囲ではあるが。


「うーむ……。予想以上に強大な力だな」

「強大な力に振り回されないように、徐々に使用して慣れていけばいいかと思います」

「まあ、確かにその通りか。あっ、そういえばワイズはゴーレムなのか? それともロボットなのか?」

「私めは魔導人形でございます」

「魔導人形? ゴーレムやロボットとどう違うんだ?」

「残念ながら、ロボットはこの世界には存在しておりません。鉱物をベースにして作られ魔力で動く物体の総称がゴーレムでございます。鉱物以外の物質で作られ魔力で動く人形の総称が魔導人形でございます」

「うむ……。まあ、ワイズは魔導人形ってことで……。あっ、そうそう、エネルギー切れで止まることはないのか?」


 難しい話になり微妙に混乱した咲哉は話題を早々と切り替えた。


「周囲から魔力を補充しておりますので、アスナルドから魔力がなくならない限り、止まることはございません」


 今のアスナルドに現存する技術では、周囲から魔力を補充するタイプのゴーレムや魔導人形は作り出せない。

 半永久的に自動で動くゴーレムや魔導人形は、かなり希少な物であり、まれに遺跡で発見されるのみであった。


「ちなみに、俺のステータスで、世界構築スキルを使わず正攻法でいったとして、モンスタープリズンでは戦えそうか?」


 この世界のことを何でも知っていると作られたワイズは、当たり前のように咲哉の装備やステータスも把握している。


「残念ながら、今の装備やステータスでは、かなり厳しいかと思われます」

「そうか……。やはり正攻法じゃ厳しいか」

「モンスタープリズンに閉じ込められているモンスターは、ステータスが異常に高いものと凶悪なスキルを使うものの二種類に分かれます」


 ワイズの説明によると、ステータスが異常に高いモンスターと戦うときは純粋な力勝負となるらしい。

 しかし、凶悪なスキルを使うモンスターに対抗するためには、ステータスの高さだけではなく、各種状態異常の耐性、即死耐性、ドレイン耐性などと様々な付加効果や特殊効果を持つ装備品がないと厳しいとのことだった。


「最初からあまり無理をするのもよくないか。あっ! いいことを思い付いたぞ!」


 そういうと、咲哉の姿がその場から一瞬で消えてしまう。

 ワイズの前から急に消えてしまった咲哉は、いったい何を思い付いて、何処に行ってしまったのだろうか。

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