5-アナライズ
「まずは最初に作った刀から解析してみるか」
鞘から刀を抜き取りアナライズと念じる。
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【ヒヒイロカネの刀】
ヒヒイロカネで作られた刀。
レア度:スペシャルレア
種別:刀
ATK:2800
付加効果:万物切断
特殊効果:破壊不能
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「解析機能も問題なさそうだな。スペシャルレアか。非常にいい響きだ……。ヒヒイロカネって伝説の鉱物とかそんな感じだったような? しかし、ネーミングがダサすぎる……」
ロールプレイングゲームでは当たり前のようにありそうな名前だが、咲哉的には気に入らないらしい。
「龍殺刀、龍滅刀、龍切丸……。うーん、どれもいまいちピンとこないな。よし、『神龍刀・咲哉』と名づけよう!」
刀に自分の名前をつけるなんて恥ずかしくはないのだろうか。
まあ、刀に刀工の名前がつくことも多い事実はあるが。
「おお、なんだ!? 微妙に変化したぞ」
恥ずかしい名前を付けられた刀に奇妙な変化が現れていた。
刀身を見てみると、刃先に向かって登る龍が浮かび上がっていたのである。
刀の変化にびっくりして、慌てて解析をし直す咲哉だったが、この後さらに驚くこととなる。
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【神龍刀・咲哉】
ヒヒイロカネで作られた刀。
龍神の守護が授けられている。
レア度:エクストラレア
種別:刀
ATK:4500
DEF:1200
付加効果:万物切断・龍神の咆哮
特殊効果:破壊不能・龍族友好度増加(大)・龍神の守護
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「龍神の咆哮に龍神の守護って、何か色々と増えて大変なことになってしまった……。たかだか刀に名前を付けただけなのに」
中二病的な名前を付けただけで自分の手には余るような刀となってしまい、微妙に焦る咲哉だったが、刀が強くなるのは素晴らしいことだと思って諦めていただきたい。
「これは名付けたことで、新しい力を刀が得たってことだよな。ん!? ひょっとして……」
何かに気づいた咲哉は自分のステータスを確認してみる。
「やはり、そういうことか」
ステータスを見ると、新たなスキルが増えていたのだ。
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【ネームオーダー】
スキルランク:レジェンド
名付けを行うことで対象に新たな力を授けるスキル。
授ける力を選ぶことはできず、名前の霊力により効果が自動的に決定される。
名付け方によっては、名前に霊力がなく、力が付与されない場合もある。
INT値が大きいほどスキル効果が高くなる。
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「世界構築スキルで作ったものに名前を付けたことで得たスキルってことか?」
正しいスキルの取得条件は、スペシャルレア以上の物を3回作成して全てに名付けを行うことだった。
咲哉の作成したスペシャルレアな物は、オートフードメイカー、アナライズスコープ、神龍刀・咲哉だ。
この全てに名前を付けたことでネームオーダーのスキルを獲得したのだ。
ちなみに、この世界でスペシャルレア以上の物を作り出せる職人は雀の涙ほどしかいない。
よって、ネームオーダーはレジェンドスキルと呼ばれるに相応しい大変希少なものだ。
しかもINTが高い咲哉の行うネームオーダーは、この世界では誰も匹敵できないほど絶大な効果を発揮する。
「スキルの力で刀がパワーアップしたのなら、まあ、特別問題はないか」
自分が名付けたことで刀が新しい力を得たわけではなく、スキルの力でパワーアップしたのなら問題ないと咲哉は思っている。
実際はいい方を変えただけで結果は両方同じなのだが、咲哉の気分はずいぶん違うらしい。
せっかく得たレジェンドスキルなので、全ての装備品に名付けを行うことにした咲哉。
アナライズで性能の確認もしてみる。
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【金龍神の特攻服】
背中に金の登り龍が刺繍された特効服。
ウンゴリアントの糸で作られた布により仕立てられている。
金龍神の守護が授けられている。
レア度:エクストラレア
種別:セット服
DEF:2800
付加効果:耐火(大)・耐精神(大)
特殊効果:破壊不能・金龍神の守護
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【常闇の鎖かたびら】
アダマンタイトを細かい鎖状にして編まれた黒い鎖鎧。
闇聖霊の守護が授けられている。
レア度:エクストラレア
種別:鎖鎧
DEF:3000
付加効果:耐闇(極大)
特殊効果:破壊不能・物理衝撃吸収・常闇・闇聖霊の守護
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【ハイランダーブーツ】
風魔法と物理魔法の力を使い空を自在に闊歩、浮遊できる魔法のブーツ。
空間魔法で記憶している場所に瞬間移動をすることもできる。
蹴りを放つことで発する風の砲弾はあらゆるものを吹き飛ばし、風の刃は全てを引き裂く。
天界人を魅了する逸品。
レア度:エクストラレア
種別:靴
ATK:1800
DEF:1200
付加効果:耐風(大)・風の砲弾・風の刃
特殊効果:破壊不能・AGI増加(大)・空中浮游・瞬間移動・天族友好度増加(大)
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「全てがエクストラレアって、多分、すごいことなんだろうな。気になる効果もあるが後回しにして……」
ゲームの説明書を読むのが好きな人はおそらく多くはないだろう。
咲哉も例に漏れず、ちまちま説明文を見るのは苦手である。
世界構築スキルで付けた覚えのない付加効果や特殊効果が気になりつつも、後回しにする咲哉であった。
島の散策をするに当たって詳細な地図は手にいれたが、島の生態系も事前に知っておきたいところである。
人は住んでいるのか無人島なのか、モンスターは生息しているのかなど、せめてこのくらいは知っておかないとトラブルに遭遇する率が高くなるからだ。
「しかし、ポムポムに聞くのもムカつくしな」
神からは困ったことがあったらポムポムに聞けといわれていたが、それは咲哉のプライドが許さない。
よほど困ったときなら頭を下げる可能性もあるかもしれないが、今回はそこまでのことでもない。
どうしたもかと思案する咲哉。
「いいこと思い付いた! これだったらイケんじゃね!? その前に、MP回復ポーションでも作って飲んでおくか」
よほどMP消費量が大きいものを作ろうと考えたのか、MP回復ポーションを作り一気に飲み干す咲哉。
「うげっ……超苦い。次に作るときは味を考えないとな」
咲哉が作ろうと考えたのはSF映画に出てくるような人工知能を持つロボットだった。
分からないことの質問に答えてくれて、何でも相談できるロボットだ。
「しかし、ロボロボしているのもな。この世界に似合わなさそうだし……」
この世界に相応しくないオートフードメイカーを作った次点で、そんなことをいう資格はないと声を大にしていいたい。
「この世界に合いそうな感じだとゴーレムか。かといってゴツゴツしている外観は微妙だしな」
岩でできた巨人が咲哉のイメージしているゴーレムである。
理想は人と同じ外観で、コンシェルジュや執事のような感じにしたいと考えていたのだった。
「まあ、とりあえず、作ってみるか。アスナルドのことをポムポム以上に何でも知っていて、何でも答えてくれる。主人である俺のいうことには必ず従うが、間違っている場合は意見をきちんと進言する。人の言葉を理解し、人のように動くことができるダンディな老執事の容姿。俺以外には破壊不能な物体。世界構築スキル発動!」
これでもか! ってくらい考えうる理想を全て言葉にし、世界構築スキルを発動させた咲哉。
ポムポム以上に何でも知っていてというのは、完全にポムポムへの当て付けである。
ゴーレムやロボットではなく物体と表現したのは、できあがる存在を世界構築スキルの力にゆだねることにしたからだ。
MPをごっそり失った感覚に襲われ、強烈な疲労感を覚える咲哉。
そんな咲哉の眼前に執事服を着たダンディな老執事が現れた。