エピローグ
「サクヤか? 何か用か?」
「ポムポム。神に取り次いでもらうことはできるか?」
「神様に?」
ポムポムに連絡をした咲哉の目的は、神と直接話をすることであった。
咲哉は神から何かあったら指輪を使ってポムポムに連絡するようにといわれていたが、神と直接話す手段は持ち合わせていなかったのである。
「ちょっと待ってろ。神様に確認してくる」
ポムポムから外道といわれた咲哉であるが、二人はそんな因縁などなかったかのように淡々と話を進める。
しかし、咲哉の内面は違った。
神と直接話すのにポムポムを頼ることしかできない咲哉は、過去を水に流したわけではなく、我慢しているだけだったのだ。
「サクヤか。ワシと話したいとは、何かあったのか?」
指輪から神の声が聞こえてくる。
ポムポムはきちんと神に取り次いでくれたようだ。
「ああ、頼みいことがあってな」
「頼みじゃと?」
「モンスタープリズンの結界を解いて欲しい」
「なんじゃと!?」
咲哉が神と話したかった理由は、モンスタープリズンの結界を解いてもらうためだったのだ。
全てのモンスターを取り込んだ今の状況では、結界は邪魔でしかない。
しかし、神を上回る力を持っていないと結界を解くことはできないのである。
「結界を解いて欲しいといわれてものう。モンスタープリズンの結界を解いてしまえば凶悪な……なるほど、そういうことか。お主、なかなか豪気なことをしたようじゃのう」
「ん? 分かるのか?」
「ワシは神じゃからな」
神は咲哉に意識を向けることで一瞬にしてその記憶を読み取ったのであった。
「わかった。そういうことならば結界を解いてやろう。しかし、かなり強力な結界を張ったのでな、そっちに直接出向かねばならん」
神がそいういうと、次の瞬間、咲哉の前に神が現れる。
「おわっ! ビックリさせんじゃねえ!」
「ほっほっほっ。すまんのう。なかなか面白いことになっているようじゃな」
バイクで空を走り回るメンバーを見て、神は興味深そうにしている。
「では、ちょっと結界を解いてくるからの、そこで待っておるのじゃ」
「ああ。よろしく頼む」
平然としているかのように見える咲哉であったが、実は神を前にして冷や汗をかいていた。
オグマを取り込んだことで覚えた強者を認識するインチュイションオブオーガのスキルで、神との力量差を感じていたからだ。
「親分! 今の老人は何者ですか! こういっては何ですが……あの老人からは親分以上の力を感じました」
バイクを走らせ、慌てて地上へと降りてきたオグマ。
「ああ、あの老人はな……」
「結界を解いてきたぞ」
咲哉がオグマに答える間もなく神が戻ってきてしまった。
オグマの顔がみるみる青ざめていく。
圧倒的なステータスを持つ咲哉でさえも冷や汗をかくのだから、オグマからすると堪ったものではないだろう。
「ずいぶん、早かったな」
「ほっほっほっ。これでもワシは神じゃからな。ワシにかかればこんなもんじゃ」
咲哉と話している老人を見つけ、次々と地上へ降りてくるメンバー。
「サクヤよ。その老人は誰じゃ?」
セトの問いに咲哉はさくっと答える。
「この老人はな、神だ」
しーんと静まり返るメンバーたち。
咲哉が嘘をつくとは思えないが、いきなり神といわれても理解が追い付かないのであろう。
真っ先に我に返ったセトは驚愕の表情を浮かべ咲哉に問う。
「かっ、神じゃと……? 何処の神じゃ?」
「何処のって……神はたくさんいるのか?」
面を食らった咲哉はセトではなく、直接神に確認をした。
「本当の意味での神はワシだけじゃが、アスナルドにはワシが作った神や世界に作られた神など、他にもまだまだおるぞ」
「なるほど……。で、あんたは何処の神ってことになるんだ?」
世界に作られた神など気になる言葉もあったが、咲哉はセトの疑問に答えるため話を進めることにする。
「ワシはアスナルドでは創造神と呼ばれておる」
この言葉を聞き、真っ先に反応したのはルチーフェロであった。
「そっ、創造神、さっ、様!」
いきなり両膝を付き平伏するルチーフェロ。
「何をやってんだ、お前は?」
「何をってサクヤ! 創造神様だぞ! 天族は創造神様を崇めているんだ! 天使長を含め一部の上位天使しかお会いできない至高の存在なんだぞ!」
「へーえー」
「へーえーってお前な!」
天族に取って創造神とは特別な存在らしい。
しかし、咲哉は何処吹く風である。
「ほっほっほっ。ルチーフェロといったか、よい、顔を上げるのじゃ。天族にはオフレコでここに来ておるからの」
「しっ、しかし!」
「ワシがよいといっておる。顔を上げるのじゃ」
神にいわれて渋々と顔を上げるルチーフェロ。
「けどよ、偉い神様なのかもしれんが、この神がお前らをこの島に閉じ込めた張本人だぞ」
咲哉はいきなりとんでもない爆弾発言をする。
ラーン、インドラ、ネヴァンから強烈な殺気が発せられた。
「まあ、待て。確かにお前らにも思うところがあるだろう。いきなりこんな何もない島に飛ばされて、閉じ込められたんだからな……」
何を考えて神が閉じ込めたという真実を打ち明けたのか、咲哉の話は続く。
「けどな、忘れてはいけないことがある。お前らはこの島に閉じ込められたからこそ、俺と会うことができたんだ!」
確かにモンスタープリズンに閉じ込められなかったとしたら咲哉と会う可能性はまずなかったであろう。
例え会えたとしても敵同士になっていた可能性だってある。
「俺はセト、セクメト、ヘカーテ、ラーン、スパルナ、インドラ、オグマ、ルチーフェロ、ネヴァン、ネメア……お前ら全員に出会えたことを本当に感謝している。俺はそう思っているが、お前らは違うのか?」
メンバー全員に問いかける咲哉。
「我はサクヤと出会い命を救われ、友になれたことは本当に感謝しておる」
これはセトの素直な気持ちだった。
「お兄ちゃんと会えたこと、セクメトも感謝してるー!」
いつもより饒舌なセクメトの素直な言葉。
「私はダーリンと出会わなければ、未だに夜の世界しか知らないままでいたでしょう。ダーリンと一緒でしたら、これからも新しい世界をまだまだ見せてもらえると思っていますわ。ダーリンと出会えたことを本当に感謝しています」
咲哉と出会ったことでヘカーテほど人生が変わった者はいないかもしれない。
「俺も師匠に会えたお蔭で地上で呼吸することや空を游ぐこと! 憧れの竜にもなれた! この出会いに感謝してるぜ!」
当時は咲哉を怒らせて恐怖にひきつっていたラーンであるが、今はすっかりなついている。
「サクヤがいれば……食べ物に困らない……感謝」
スパルナは今日も平常運転である。
「俺も新しい人生を与えてくれたサクヤとの出会いは感謝をしている」
死に場所を探していたインドラであったが、今は死にたいとは思っていない。
咲哉との出会いが人生に新しい風を吹かせ、生きることが楽しいのではないかと思えてきていたのだ。
「鬼族にとって強い男に忠誠を捧げるのは至上の喜びであり、神酒を惜し気もなく振る舞ってくれる親分の懐の深さにも惚れています。俺は親分との出会いを猛烈に感謝しています!」
何だかとっても熱いオグマであるが、嘘偽りのない素直な言葉であろう。
「僕も一応、サクヤとの出会いには感謝している。生きている内に創造神にお会いさせいただけたのも、サクヤのお蔭だしな」
女性の話題を口にしないルチーフェロとは意外であったが、一応、サクヤには感謝をしているようだ。
「口に出す必要がないほど当たり前に、私はサクヤ様との出会い感謝しているわ。今の私はサクヤ様なしでは生きられないの! サクヤ様愛しているわー!」
相変わらずのネヴァンであるが、空気を読んだのか、ヘカーテ、セクメト、ラーンと誰も便乗してこなかった。
その様子に咲哉がホッと胸を撫で下ろしていたのはここだけの話である。
「ネメアも優しいご主人様のペットになれて感謝しているにゃー」
あっさりしているが紛れもないネメアの本音であろう。
メンバー全員の言葉を受けて咲哉は再び口を開く。
「お前らの、その素直な気持ちを聞けて俺は嬉しい。俺もな、実は、神の力でこの島に飛ばされてきたんだ」
確かに事実ではあるが、咲哉は拠点として神から島を与えられたのであって、閉じ込められたわけではない。
微妙に誤解を招くいい回しである。
「けどな……俺は神に感謝をしている。それはな、この島に来たお蔭でお前らと出会い、仲間になれたからだ! お前らも俺との出会いに感謝をしているのなら、神を恨むのではなく、過去を水に流し、その心を全て感謝だけに変えて欲しい」
間違いない……これは仲間を一致団結させるために咲哉は神を利用しているのだ。
おそらく、ヤンキー時代に培った人心掌握術であろう。
「友、下僕、部下と呼び名は様々ではあるが、お前らは俺の仲間であり、俺の誇りであり、俺の宝物だ! これからも俺のために働いてもらいたい!」
メンバー全員から歓声が上がる。
咲哉が本当の意味でメンバー全員の心を掌握した瞬間であった。
神をも利用するとはエグい……エグすぎるぞ、咲哉。
と、咲哉をボロクソにいってみたが、咲哉がいっていたことは全て真実かもしれない。
その本音は咲哉のみが知るところであろう。
「ほっほっほっ。心から慕われておるようじゃな」
「まあな。俺の大切な仲間だからな。それより、神よ」
「なんじゃ?」
「この島に名前はあるのか?」
「名前か? この島はまだ誰にも発見されていない島じゃからな。名前はないぞ」
「じゃあ、俺が名前をつけてもいいか?」
「ほっほっほっ。好きにするがよい」
この島は咲哉が来たことで無人島ではなくなったが、未だに誰にも発見されていない未開拓の地であった。
「よし! お前らモンスターにとってこの島が楽園になることを願い! 俺とお前らが出会ったこの素晴らしい島を¨モンスターアイランド¨と名付ける!」
再びメンバー全員から歓声が上がる。
そのとき、歓声に混じり奇妙な鳴き声が頭上から響く。
「なんだあれは?」
上を見上げた一同が見たものは空を飛ぶ小型の龍であった。
「あれは龍族でも下等なワイバーンじゃな」
小型の龍はワイバーンと呼ばれる飛龍だったのである。
「おい! 神! この島にはこいつら以外にモンスターはいないんじゃなかったのか?」
「ほっほっほっ。咲哉は本当に面白いことをやらかす男じゃのう」
「あん? どういう意味だ!?」
「ネームオーダーの効果じゃよ。咲哉くらいINTが高いとネームオーダーで生命すら生み出せるようじゃな」
咲哉にモンスターアイランドと名付けられたこの島は文字通りモンスターの楽園となってしまったのだ。
山、川、森、荒野、平原、湖とありとあらゆるところでモンスターが生み出され、モンスターの巣窟と化してしまったかのようであった。
ちなみにモンスターはこの島にいるのが当然という記憶を持って生まれてきている。
完全な無から有を生み出してしまうとは、恐るべきネームオーダーである。
「ああ……またやらかしちまったみたいだな。まっ、新しい部下が増えると思えばいいだけの話か……」
予想外の事態に咲哉は完全に開き直ってしまうのであった。
「咲哉よ。やはり、お主には期待させる何かがあるようじゃの。よし、これを機会に、世界構築スキルの制限を一部解除してやろう
「なんだと!?」
まさかの制限解除に驚愕する咲哉。
「制限を解除するのは、生命の創造じゃ。といっても、モンスターのみじゃがのう。詳細は、ほれ、この説明書に書いてあるから読んでおくといい」
解除された制限はモンスターを創造する力だった。
ネームオーダーでモンスターを生み出してしまった咲哉であるから、モンスターを創造する力を与えてもいいと神は判断したのであった。
しかし、説明書があるとは……世界構築スキルを授けてくれたときにも説明書を渡して欲しかったと思う咲哉であった。
「制限解除はモンスターを創造する力か……」
新たにモンスターを創造する力を得て、益々人間離れしていく自身の能力に戸惑う咲哉であったが、モンスターの仲間しかいないこの現状では、特に何かが変わるわけではないと開き直る。
「では、ワシはそろそろ帰るぞ。使命を全うすることを願っておる。皆も咲哉のことをよろしく頼むぞ。さらばじゃ」
そういって神は咲哉の元から去るのであった。
神がいう使命の全うとは世界平和のことである。
しかし、咲哉がしようとしていることは統一という名の世界征服であった。
神から授けられた使命を反故するつもりなのか、それとも……。
モンスターアイランドと名付けられモンスターの巣窟と化した島。
最凶のモンスターが集い結成された暴走族モンスターカーニバル。
モンスターを生み出す新たな力を得た咲哉。
世界を征服するための地盤は着々と固められつつある――。
第一章モンスターカーニバル完結です。
最後まで読んでくれたことを本当に感謝しています。
ありがとうございます!!
もし、転生クエストを面白いと思っていただけたら、
ランキングUPのために、
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面白いと感じてくれたら……ということで無理強いはしませんので悪しからず。
第二章の更新はストック確保のため、12月14日(月)からとさせていただきます。
その前に閑話などをUPするかもしれませんが、
余力次第なのでまだ未定とさせていただきます。
状況は活動報告でもお知らせしますので、そちらもご覧いただければと。
それでは、これからも『転生クエスト - ヤンキーが異世界に転生したら - 』をよろしくお願いします。




