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脇役〈冒険者〉たちの話  作者: hanabusa
それぞれの戦い・下
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63.


「・・・それぞれにも、お願いしたい役割があります。

まず、ハーフレイドの指揮は赤司はんに、AGEはんには、うちと壁役。

丹波はん、クロノはん、タカムはんには前衛での戦闘。

そして、セルクルちゃんには後衛からの支援を、その他の部分は今後埋めていく予定です・・・」


コンコンが、計画を一通り説明すると、部屋はしんっと静まり返ってしまった。

誰もが困惑し、どうコメントするかを決めかねている。


「だから、ここにアニアさんがいないのか・・・」

AGEの言葉には、さっきまでの余裕は全く感じられなかった。

計画を修正できるとばかり思っていた彼にとっては、大きな誤算だった。


「アニアちゃんは、もうヨコハマにいはります。

・・・おそらく、既に中華サーバーのプレイヤーたちと接触しとるかと・・・」

コンコンは、恐る恐る赤司の顔色を窺う。だが、その表情を見て、さっと視線を外すのであった。


「・・・想像以上に、無茶苦茶な計画やったなぁ・・・」

ぽつりと、赤司は呟いた。その声音は落ち着いているようにも聞こえた。

だが、その表情は怒りを通り越して、呆れと達観が見え隠れしている。


「これは、俺もどうしようもないで・・・。

俺らよりも、先にヨコハマの連中に知らせてしまうとは、軽く見られたもんやなぁ・・・」

「それは、最初にアニアちゃんに伝えて、彼女が今すぐにでも出発したいって言うから、つい・・・」


赤司の刺々しい言葉を受けて、コンコンの肩身は狭くなる。

言い訳をしてみるものの、それは逆効果で、場の空気は冷え切ってしまった。


「その前提がちょっと変だよね・・・。せめて、同じ時に聞かせてほしかったよね・・・」

クロノも気まずい表情を見せる。

丹波に至っては、自分が全く頼られなかったことにショックを受け、何も話せない。


そんな中、AGEが申し訳なさそうに、でもしっかりとした口調で断りを入れた。

「申し訳ないけど、俺たち兄弟の参加は、2人と相談してから決めさせてもらいます。

正直、参加したくないけどね・・・。自分はまだしも、弟、妹を巻き込むのは、気が進まないしね」


最初の明石の言葉で、ある程度予想がついていたとはいえ、AGEの返答はコンコンにとって、痛手だった。

パーティーの要である壁役は、信頼できるAGEをと思っていたが、そこが空白になってしまった。


「そうだねぇ。俺も、少し考えさせてほしいな。

面白そうだとは思うけど、なんかその対応はちょっと違うんじゃないかって思うよね」

困ったような表情のクロノもやんわりと、不参加を匂わせる回答をしてくる。


「俺も、その計画には参加できひんな。何よりもヨコハマの奴らが不憫すぎる」

「でも、ヨコハマの人らも、アキバに来れるんやし・・・」


言いかけたコンコンの言葉は、赤司の声にかき消される。


「ヨコハマの奴らやって、事前に何の相談もなく、そんな要求突きつけられて、いい気分せんと思うで?

アニアを助けたいっていう、お前の気持ちは分からんくもない。

けどや、それで他の大勢を追い詰めて、不快にして、それでほんまにいいんか?」


自分よりも、10近く若い少年に、ここまで言われるとは想像していなかった。

コンコンは、今まで何かと周囲の人間に開けて通されてきたことを、初めて実感する。


「そんなん・・・考えすぎで禿げてしまいますわ・・・」

「・・・普通はそこまで考えるもんやって」

「なんで、うちのやることは上手くいかんのやろう・・・?」

その様子を見て、コンコンは唇を震わせた。


「お前が全部自分で抱え込んで、勝手にいろいろ行動してしまうからに決まっとろう。

〈霊峰フジ〉に初日の出見に行ったときも、そうやったやないか」

赤司の手厳しい指摘をくらい、コンコンはまた身を縮めるのであった。


「はぁ・・・。お前の計画をもとに動こうが動かまいが、ヨコハマの奴らとの約束をどうにかしなあかん。

アニアの件は、かなり後回しになってしまいそうやなぁ・・・」

赤司の表情は、その声音と同じくらい暗かった。


彼だって、アニアとその「半身」のことを、全く顧みていないわけではない。

どちらかというと、かなり気にはしていた。

しかし、この勝手な計画で混乱した中、どうしても優先順位的に後回しにせざるを得なかった。


「ほんまに、恨むで・・・」

そう言って赤司が睨んだのは、コンコンではなく、丹波の方だった。


睨まれている方は、ぼんやりとしてその事実に気付いている素振りもない。

その様子に、再度大きなため息をついてから、赤司は思考を巡らせる。

彼と約束してしまったからには、赤司もなんとか場を丸く収める努力をしなければならないだろう。


「明日、ヨコハマに行って、謝罪会見するしかないやろうなぁ。

そこで、相手の反応を見てから、アニアのことをどうするか決める以外、手はないやろう・・・」

赤司は、矢継ぎ早にコンコンと丹波に指示を出した。


最後に、赤司がアニアに念話を入れる。


「アニアか?どうやそっちは?・・・おう。・・・おう。・・・そうか。

・・・実はな、ちょっとな問題があって俺とコンコン、丹波で明日そっちに向かうことになったんや。

俺らが着くまで、極力大人しくしとき。・・・理由?それは・・・、着いたら言うわ」


念話の向こうで不安そうな少女に、赤司は精一杯優しい声で伝えた。

同時に、自分のキャラではないと、鳥肌がたつのだった。


(はぁ・・・。これから、あのおバカ姉さんの尻拭いかいな。いつもながら、ちょっと俺のことをこき使いすぎちゃうか?)


赤司は心底嫌そうな顔をしながら、大いに頭を抱えるのだった。


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