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脇役〈冒険者〉たちの話  作者: hanabusa
それぞれの戦い・上
57/82

57

私、hanabusaは、関西圏に住んでおります。

しかし、関西の言葉とは、大変難しゅうございますね。

なぜ、こんなにも関西弁の登場人物を、登場させてしまったのか、

後悔している次第でございます。

方言を含めまして、お見苦しいところが多々ありますが、ご容赦くださいませ。

57.


アキバに到着して以来、赤司は宿の自室で過ごすことが多くなった。

知人は多いが、友人の少ない彼に、互いの無事を確認しあうような相手は数多くいない。

この日も、本当ならそんな1日のはずで朝を迎えた。


「赤司。ちょっと邪魔するでー」

「邪魔するなら帰れ」


ノックもせず、当たり前のように部屋に入ってくる丹波に対して、赤司は手元から顔も上げずに言い放つ。

こちらに来てから、彼が1人で赤司を訪ねてくるのは初めてのことだった。


「その言い方は酷いわなぁ・・・。まぁ、ええけど。

そんなことよりも、アニアの件で赤司に頼み事があるんじゃが。いいか?」

「・・・話してみい」


丹波の普段あまり見せない真剣な表情に、赤司にも緊張が走る。

普段は物事の表に立とうとしない彼が、こんな話を持ってくることが驚きをだった。

事の全貌を知らない赤司には、ほんの少し不安の残る話でもあった。


「悪いな。まず、アニアがミナミに戻りたがってるのは、知っての通りやけん省くな?」

丹波は、赤司の返答も待たずに話を続ける。

そんな彼の様子に、赤司は苦笑しつつも、心の準備と思考を整えるのであった。


「その理由は、自分の半身の安全を確保するため・・・」

「半身・・・?」


聞きなれない言葉に、赤司は眉をひそめる。

どんなに親交がある人物でも、相手を半身と呼ぶのは、赤司の基準では普通でない。

その後も、丹波の口からは、彼の興味を引く単語が並ぶ。


「こう呼ぶんには理由がある。

〈大災害〉の時、アニアはログインしとった。そして、今はアニアとして俺らと旅をしてきた」


「そうやなぁ」と、赤司が相槌を打つと、丹波は妙なことを口走るのだった。


「ただ、問題がある。アニアは2つのアカウントでログインしていたじゃ。

そんで、今ミナミにおるのが、もう1つのアカウントのキャラクターらしい・・・」

「・・・」


あまりのことに、赤司は言葉を失った。

今まで、1人のプレイヤーに1つのキャラクターという常識が、崩れてしまったのだ。


「その・・・、そのミナミの半身っていうんは、中身は何が入ってるんや・・・?」

「・・・分からん。けど、おそらく、アニア自身やろうな・・・」


衝撃発言が並ぶ中、赤司は頭を抱える。

ショックが大きすぎて、目の前がくらくらしてきた・


「は、はははっ・・・。なんやそれ・・・。冗談きついわ・・・。この世界は、どれだけ俺らを驚かすねんろうな?

1人の人間が、2つのキャラクターとして存在しとるなんて・・・。」


赤司の取り乱し振りに、丹波も黙りこくってしまう。

彼には分らない、天才なりの苦悩を感じ取ったのかもしれない。


「なんで!・・・なんで、そんな重要なことを、コンコンは俺に教えへんのんや!」

そんな、おとなしく赤司の次の言葉を待っていた丹波に、赤司が急に怒りをぶちまけだす。

今までショックで停止していたかれは、怒りと疑問という原動力を得て、また活発に活動を始めた。


「うぉっ・・・!急に怒鳴るなや・・・」

丹波は、その剣幕に驚いて身を引く。

コンコンの代わりに、この恐ろしい関西人の怒りを被るのは避けたいことだった。


「それはやな、コンコンとしては、赤司に負担をかけたくないっていう思いがあるんや。

赤司にも、少し休んでもらいたいっていうあいつなりの気遣いで・・・」

「そんないらん気遣い必要ないねん」


自分とコンコンの保身のために、一応は言い訳してみるものの、赤司には通じなかったようだ。

必要ない!と、一刀両断されてしまった。


「すまんなぁ・・・。実は、俺もあいつが何考えとるかよう分からんねん。

ずっと部屋に籠りっぱなしやし、行動を起こしている気配が全くない・・・」


赤司の怒りが思いのほか根深いことに、丹波は首をすくめることしかできなかった。

怒れる赤司も、その言葉を聞いて少し冷静さを取り戻す。


「それでなんじゃが、正直、このことをコンコンだけに任せておくんは不安でしかない」

「俺も同じ意見や」


2人の意見が合致したところで、丹波は赤司を拝み倒す。

何事にも、自分に責任があると思いたがるコンコンは、なかなか他人の手助けを受け入れたがらない。


「だけん、赤司にも動いてほしいねん。

コンコンが何を考えとるか分からん今、お前に頼るしかなかろう」

「頼られても困るんやけどな・・・」


心底迷惑そうな顔の赤司を、同情しながらも丹波はなだめる。

ここで彼に投げ出されてしまったら、より悲惨な結果が待っているだろう。


「まぁ、そう言わんと。あいつに任してて、無理くりな作戦で行動したないねん。

あいつが立てる計画はよう知ってるやろ?力で押し切る型で、付いていく方が大変や・・・」


「うん。うん」と赤司が同意の相槌を打つ中、丹波の言葉は続く。

今までコンコンが始めた計画を、何とか形にしてきた2人とっては身に染みていることだ。

初日の出を拝むという名目で、〈霊峰フジ〉の頂上まで行った時の話は触れたくない過去だ。


「特に今回は、いろんな人間を巻き込んでのことになるやろう。

何よりも、この状況や。キャラクターを動かしてるだけじゃすまん。生身でいろいろせなあかん。

それだけ慎重になるべきやと思う。だからこその、お前なんや」


丹波の言っていることは十分に分かるが、赤司はできる限り関わり合いたくなかった。

しかし、それはあくまでも『できる限り』であって、不可避確定の今回は、逃げるのは自分の首を絞めることだろう。


「はぁぁ~。お前の言うてることがよう分かる。分かりすぎて辛いわぁ。

・・・まぁ、俺がこき使われる分、お前らもしっかりこき使ったるから、覚悟しときや」


赤司の不穏な返答に、肩のにが降りるのを感じると共に、丹波は背筋が凍る思いをするのだった。

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