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脇役〈冒険者〉たちの話  作者: hanabusa
ヨコハマにて
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アキバの街は、ミナミに負けず劣らず閑散としていた。

大手ギルドは鳴りを潜めているようだったし、その他の〈冒険者〉たちも地面を見るのが忙しいらしく、頭上を行くコンコンたちに気が付いたのは少数だった。

中心から少し外れた、中世風の小奇麗な建物の前にコンコンたちは降り立つ。


「ここです。セルクルが案内してるはずなんですけど・・・」

「あ、AGEさん!セルクルさんが、すごく慌ててお部屋もどられましたよ?」


木製の扉を開けると、店番をしていたのであろうセドが、元気よく声を上げる。

彼の発する言葉に、AGEは少し安心した。

そのまま、後ろのコンコンらに、愛想を振りまく彼にAGEは細々したことを頼む。


「ありがとう、セド。この人たちに部屋を取りたいんだけどいいかな?」

「あ、はい。父さーん。お客さんだよ!」

「えらい、すいまへんねぇ。よろしお願いします」

「いえいえ。おや、遠方からおこしですか?聞き慣れない、言葉ですねぇ・・・」


宿の店主は、急に増えた宿泊客にも嫌な顔ひとつせずに、丁寧に対応してくれた。

彼との何気ない雑談は、ささくれ立っていたコンコンを少し落ち着かせてくれた気がした。


「なんで、こないな事になってしもうたんやろうねぇ・・・」

「おや、何かお悩みでしょうか?」

「なんや、疲れてしまいましたわ」

「宿屋には、難しいことはわかりません。特に〈冒険者〉が考えるようなことは。

でも、宿は疲れたときにしっかり休める場所ですよ」


ふくよかな体系の店主は、その体格に相応しい柔らかい口調でコンコンを労う。

その言葉に甘えて、コンコンは自室のベッドに転がり込んだ。


(ちょこっとくらい休憩しても、罰は当たらへんやろ・・・)


しばらくしてから、部屋の手配を全て済ませたらしいAGEがコンコンを訪ねる。

彼女はそれを迎え入れつつ、疲れた表情を見せていた。

アニアのことも気になるが、AGEは彼女の様子も気になっていた。


「こないバタバタになってしもうて、ごめんやで。AGEはん」

「はぁ・・・、一体、なにがあったんですか?」


AGEの問いかけで、コンコンの顔に苦悩の表情が追加される。

同じ部屋にいた丹波も難しい表情を浮かべる。

やはり、AGEはとんだトラブルメーカーをアキバの街に招き入れてしまったようだ。

今までの比較的、平安だった日常は当分お預けかもしれない。


「僕らは、もしかしたらミナミに遠征しに行かなあかんかもしらん・・・」


コンコンがやっと開いた重い口は、予想外なことを言い出す。

それだけ絞り出してしまえば、彼女の言葉は洪水のように流れ出す。

今まで頭の中で渦巻いていた考えが、音となって止めどなく漏れ出してくるのだった。


「え?」

「今回はきちんとパーティーを組んで、計画的に攻め入らなあかん。

それに、装備もいまのままやったら不安やし、情報も圧倒的に足らへん。それに・・・」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!全然話が見えてこないんですけど!」


まくし立てるように話すコンコンを、AGEは慌てて止める。

告げられる言葉の真意が分からないため、聞いているほうは混乱するばかりだ。


(やっぱり、コンコンさんは人に何かを説明するの苦手だな。絶対に苦手!)


心の中で悪態をつきながら、AGEは何とか彼女から情報を得ようと工夫する。

しかし、どんな言葉をかけても、今の彼女には立石に水だった

結局、横で黙っていた丹波が助け舟を出してくれるまで、話は見えないままだった。


「まぁまぁ、コンコンちょっと落ち着き。さっきから全然説明になってないで」

「だって、落ち着けるような状況ちゃうし・・・」

「そんなに切羽詰まってるんですか?」


AGEの問いかけに、コンコンは言葉を失う。

彼女なりに、今の状況を説明したつもりが、全く伝わっていないことにショックを受けた。


「ちょっとミナミに、取りにかえるものができたんじゃ」

「取りにかえるもの?」


丹波はおどけてそう言ってのけたが、コンコンの顔は全く笑っていなかった。

AGEにはそれがどの程度難しいものなのか理解できなかったが、2人の様子からなんとなくそれを感じ取る。


「俺たちが逃げ出して来た場所に、アニアの大切な仲間が取り残されてるらしいんや」

「それも、ちょっと込み入ってて・・・。ね・・・」


コンコンは丹波に意味ありげに目配せをする。

それに頷いた丹波はため息をついた。


「こういうんは、赤司の得意分野なんやろうけどなぁ」

「赤司はんには、もう十分働いてもらいました。少し休んでもらわんと・・・」

「いや、お前が下手に動くほうが、赤司は嫌やと思うで?」


どさくさに紛れて、丹波が正論を述べるものの、誰の耳にも届かなかった。

AGEは元から好き勝手跳ねている天パを、よりグシャグシャにかき上げる。


「新しいクエスト発生ですね・・・」


終わりは始まりという言葉が脳裏をよぎる。

やっと落ち着くと思っていたが、また新しい冒険が始まるようだった。


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