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脇役〈冒険者〉たちの話  作者: hanabusa
ヨコハマにて
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37.


夜、コンコンの部屋の扉をうるさくたたく音がした。

部屋に緊張が走った。

怖がる胡桃をアニアに任せ、部屋にある大きな箪笥に隠れさせる。


(丹波や赤司たちやったら、念話をよこしてくるはず。となると、昼間の中国人かしら?)


意外と冷静な自分に驚きつつ、彼女はフレンドリストから丹波を選択し、念話を入れる。


『なんや?こんな時間に?』

「部屋に来客。このまま繋いどいて」

『お、おう。俺らもそっち行こうか?』

「うーん。・・・いつでも来れるようにしてはって」


装備を身に着け、彼女は警戒して扉を開ける。

そこには大柄な男性と、若い青年が立っていた。

コンコンは軽く会釈をする2人を、鋭い視線でにらみつけた。

すると、青年の方が口を開く。嫌味のない、聞き取りやすい声が話し出す。


「夜分遅くにすみません。少しお話しをよろしいでしょうか?」

「話の内容にもよりますわぁ。どういったご用件でっしゃろうか?」


穏やかな笑顔を浮かべながらも、コンコンは冷ややかに相手を値踏みする。

相手もそれが分かっているのか、愛想のよさそうな表情を向けてきた。

〈人間〉の青年は中国サーバーの独特な衣装なのか、青いゆったりとしたセットアップの上着とズボンを身に着けている。

細い目は温厚そうだが、その奥に鋭さを秘めていた。


「別にみなさんに危害を加えるつもりはありません」

「そういうこと言うほうが、より怪しいってご存知やろうか?」

「えぇ。ただ、事実ですので」


2人の青年がにこやかににらみ合う。

間に挟まれた大男は、落ち着かない様子で2人を交互に見比べている。

根負けして、先に口を開いたのはコンコンだった。


「まぁ、こんなところで立ち話もなんですけぇ、下の食堂にでも場所を移しまししょう」

「それでは、お話だけは聞いていただけるということでいいですか?」


コンコンの提案に、青年は多少の安堵表情を見せた。

もちろんコンコンはその瞬間を見逃さない。

釘を刺すように鋭く一言付け加える。


「お話だけ、ですけんね」

「招致しております」

「では、10分後に食堂で」


コンコンは一度部屋の扉を完全に閉める、緊張を解しながら2人の少女を隠した箪笥の戸を開く。

2人に部屋を出ないように伝えると、部屋の立ち入り設定を確認し、念話に向かって話し出した。


「そういうことやけぇ丹波はんは、赤司はん連れて食堂に来たって」

『いや、そういうことって!行って大丈夫なんか?』

「まぁ、なるようになるんちゃうかな」

『おいおい・・・』


丹波の不安そうな声を聴きながら、彼女は装備を整える。

赤司と丹波が部屋に顔を覗かせるのを待って、3人は連れだって階段を下りる。

食堂に足を踏み入れたときには、すでに相手側はテーブルに座っていた。


例の青年を中心に、先ほどの大男を含む4人の男女がその両脇を固めている。

みなステータス画面には、コンコンたちには親しみがない文字が並び、レベルは一様に90に達してした。

コンコンはいつもの飄々とした態度で、テーブルの向かい側に座る。


「お待たせしまして」

「こちらこそ夜分遅くに、無理をいってしまって申し訳ない」


青年が座ったまま軽く頭を下げる。

それに倣う形で他の男女がバラバラと頭を下げた。

赤司は相手を見て、億劫そう口を開く。


「それで、あんたら誰なんや?」

「私は达喜ダーシーと申します。〈道士〉でレベル90です。

お気づきとは思いますが、我々は中国サーバー出身です」

「僕はコンコンいいます。なんで中国サーバーのプレイヤー方がヤマトに?」


自己紹介もそこそこに、コンコンは核心に触れるであろう質問を投げる。

その問いに、相手の〈冒険者〉たちの表情が曇った。

重々しく口を開いたのは、ダーシーの右隣に座っていた〈エルフ〉の女性だった。

浅黒い肌に涼しげな金色の瞳、銀髪を顎で切りそろえた彼女は、思い出すのも耐え難いと言わんばかりの表情で話し始める。


「あの、私たちは、ヤマトに避難してきたんです」

「避難・・・?中国サーバーで何が起きとるんや?」


ますます混乱させられた丹波は、怪訝な顔で目の前の5人の〈冒険者〉を見渡す。

キャラクターの顔だけでは判断できないが、大男を除き、どの顔も幼い。

どうやってヤマトにたどり着いたのか、そして中国の状況とは。

コンコンたちに、疑問は増えるばかりだった。

ダーシーが苦笑して、その場を仕切るように再度口を開いた。


「少し長くなりますが、それもお話します。しかし、それがメインの話ではないことは、覚えていてほしい」

「ええでしょう。お話にはお付き合いしまひょう」


この奇妙な取り合わせの〈冒険者〉たちの夜は、まだ始まったばかりであった。


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