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脇役〈冒険者〉たちの話  作者: hanabusa
いざ、アキバへ
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35.


赤司は〈鷲獅子にぴったりと体をくっつけ、体にかかる風の力を軽減させる。

彼が物言わぬ地図を睨み付け出した結論を、コンコンは理由も聞かずに実行した。

その決断をもとに、一行は〈鷲獅子〉のスピードを上げ目的地をヨコハマに変更して進んでいる。


(スリリングすぎるやろ、これ。俺の計算で運命全部決まるとか。・・・勘弁やわ)


前を向けば、他の仲間たちも身を低くして必死に〈鷲獅子〉にしがみついている。

誰か零れ落ちてくるのではなかと、内心冷や冷やしていたが、今のところは心配なさそうだった。

今いるのは、ヨコハマまでの中間地点といったところだろうか。

飛び始めてから3時間近く経とうとしていることを考えると、決して楽観視できるものではない。


しかし、赤司はある可能性に賭けていた。

昨日1日〈鷲獅子〉に乗ったことで、この生き物の移動速度がゲーム時よりも融通がきくことに気が付いた。

現実になりつつある(と、赤司は今のところ理解している)世界は、思ったよりも自由だった。

もちろん、変なところで制約もあるが、それも知識や機転さえあれば乗り越えてることも可能だ。

今回も、運が良ければヨコハマまで突っ切れるのではないかと考えている。

そのために〈鷲獅子〉を全力疾走させているのだが。


赤司はこの世界での生活に充実を感じていた。

今まで神童・天才ともてはやされ、日本の国内最高峰の大学で勉強をしていた。

だが、そこで出会う人間や、問題は彼にとってはただの厄介事でしかなかった。

無意味な報告会や付き合いに辟易としていた。


(全部、時間の無駄にしか思えへん。どれも馬鹿騒ぎするだけの、馬鹿の集まりやん・・・)


現実になる前の〈エルダー・テイル〉でも、人間関係に関してはシンプルにしていた。

フレンドリストの断捨離も、比較的コンスタントに行っていた方だろう。

そんな彼が今こうして、成行きで集まった集団で行動しているのだから驚きだ。


『すごいスピードやなぁ。振り落とされそうやわ』

『いや、じゃけんちゃんと掴まれ言いようが』


グループチャットから、コンコンと丹波の夫婦漫才が聞こえてくる。

赤司は呆れながらも、この2人には大きな信頼をおいていた。

勝手だがこの2人が一緒なら、どんなクエストでも無理難題でもできそうな気がした。


というか、いつもの冒険のメンバーだからというのも大きいだろう。

大枠を提案するコンコンと、細部を計画する赤司、そして実際に実行したときにフォローする丹波。

その3人を中心に多くの冒険を〈エルダー・テイル〉の中でこなしてきた。

だからこそ、今回の計画も赤司は同行を承諾したのだった。


「飛ばされて来よったら、なんぼでも拾うたる」

『ひゃー。赤司はん男前やねぇ』

『だからって落ちてええ訳ちゃうで!』

『もー、みんな騒がしいなぁ』


なんだか締まらない会話だが、緊張感が充満していた空気が少し和んだ。

特に年少組の3人は、さっきから全く言葉を発していなかった。

その子たちの顔に、少しでも笑みが戻ったのは大きいだろう。

赤司はほんの少しだけ安堵して、砂時計を確認した。



雷牙はコンコンと丹波そして赤司のやり取りに、声をあげて笑う。

ずっと暗くて重かった心が、少しだけ明るく晴れた気がした。

正直、彼は今疲れていた。

前からの強風、〈冒険者〉の身体でも感じる寒さ、緊張、それらが彼に疲労を蓄積させていた。

体は休めば元気になる。しかし、心の疲れというのだろうか、どんよりとした気持ちはなかなか取れないでいた。


「吹きさらし少し疲れたね、雷牙くん。大丈夫?」

「大丈夫です。クロノさんの方が風当りがきついんじゃないですか?」

「うーん。まぁなんとか大丈夫だよ」


前で〈鷲獅子〉の手綱を握るクロノが、気を遣って声をかけてくれた。

ずっと黙っていたからだろう、声が少しかすれていた。

それでも、風に負けないように声を張り上げる。


兄のように接してくれる〈冒険者〉に、雷牙は懐かしい感情を覚えていた。

元の世界にいるはずの3歳年上の兄に、彼の雰囲気はよく似ていた。

聞いた話によれば、クロノはその兄よりもかなり年上だった。

というか、この旅で同行している〈冒険者〉のはほとんどが、雷牙にとっては年上だった。

雷牙にとって彼らは、普通だったら関わりあうことがなかったであろう「大人」たちだ。

この非常事態でなければ、ミナミの街ですれ違っても互いに気にも留めない相手だっただろう。


(不思議やな・・・。なんで俺この人たちとおるんやろう?)


〈鷲獅子〉の背中で風の力に耐えながら、雷牙は自分の前にいるクロノの背中を見る。

その先には、自分の助けてくれたコンコンの金髪がなびいている。


もう一度、不思議やなと心の中で呟き、彼はより身を低くした。



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