―――PG01、02、発進
―――デュランダルフォートレス艦内・艦橋
果てまで暗い宇宙空間にぽつりぽつりと小さな光が瞬いてる。その小さく弱い光は、闇に飲み込まれて消えてしまいそうで何とも心許なく見える。しかしそれらは決して消えることなく瞬き続ける。それは己の存在を主張している様でなんとも力強いものに思えた。
そんな宇宙空間に、確固たる意思を持ち力強く進み続ける宇宙航空機が一機あった。その宇宙航空機―――デュランダルフォートレスト艦内では微かな、しかしはっきりとした緊迫感が漂い戦闘の準備が進められ、乗員たちは静かにしかし慌ただしく活動していた。
「エネルギー出量、安定、オールグリーン。前方に障害無し!各機体準備大丈夫だよ!」
そんな艦内の艦橋において、クレハが前方の様子やモニタを確認、操作しながらそう告げた。
艦内のPG保管庫内において機械音が鳴り響くのがモニタを通して伝わってくる。
庫内には二機のPGが起動されており、その中にはそれぞれ人が乗っているのが見えた。
「それにしても二機も動かすなんて久しぶりですね。二人とも経験はあるといえ、大丈夫なのですか?琴吹艦長」
その様子を見ていた制御士の男が無表情のまま冷静に尋ねた。
「大丈夫だろ。俺が采配を間違えると思うか?」
俺が自信を持ってそう答えると、クレハがくすくすと微笑む。
「いいえ?」
「いいえ。間違えられたら困ります」
制御士はほんの少し眉を顰めながらしかし冷静にそう答える。
「だろうな」
俺は口元に不敵な笑みを浮かべてほんの少し俯きながらそう答えた。
刹那顔を上げると、俺は真剣そうな表情へと戻り声を上げた。
「合戦だ、錨を上げろ!目的は地球に物資を送ること、ただそれだけだ。無理な争いはするな!いいな!」
その時、モニタに二人の操縦士―――エイジとイバラの姿が映し出され、二人がニヤリと悪っぽく微笑むのが見えた。
「いつも通りね、了解」
「おう!俺様を誰だと思っていやがる!いずれも全宇宙を掌握する悪の根源……」
「いや、エイジ。俺たちが悪の根源を名乗ったら仕舞いだろう。言い方変えろ」
俺はエイジのその言葉に少し困ったように微笑んでそう言った。
その言葉を聞いたエイジが少し考えるような仕草を見せる。
「そりゃそうだな。じゃ、赤報隊か、新撰組か……」
「どっちも殺されてるじゃないの」
「う、うっせ!」
イバラが馬鹿にしたように微笑んで言うと、エイジが少し恥ずかしそうに慌てながらそう怒った。しかしなおもイバラがニヤニヤと微笑んでいる。
俺はそのやりとりを見ながら、ひとつ咳払いをした。すると、二人がきちんと正面に向き直り、口を噤んで真剣そうな顔つきに直る。
俺はそれを確認すると、二人をじっと見つめながら口を開いた。
「とにかく、いいな!……無理な争いはするなよ?」
「「了解」」
二人のしっかりとした返事を聞くと、俺はほんの少しだけ口元を緩ませ、またすぐ後、元に戻した。俺は真剣そうな顔つきでモニタに向けて叫ぶ。
「よし、いい返事だ。デュランダルPG01、02、発進!」
イバラとエイジ二人の、真剣そうに光る目と悪そうに微笑んだ口元が見えた。