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―――少年少女、野宿


―――京都・森林内

 昼間この世界を照らし出していた太陽が地平線の彼方へと沈み、青く澄んだ空は暗い闇に飲み込まれた。どこまでも続く闇に、宇宙がすぐそばまで近づいてきたようなそんな気がして、俺は宇宙そらへと手を伸ばす。しかし実際にはそんなはずはなく、俺たちと宇宙の間には計り知れない距離が憚っていた。不安に駆られ、悲しそうに手を下ろそうとすると、その時俺の手の隙間から闇に冷たく輝きながら浮かぶ月が覗く。俺はそんな月を捕まえるように手を握った。しかし手を顔の前まで持ってきて開いても、そこには空っぽの何も掴むことの出来ない自分の手しか無かった。俺は悲しそうにそれを見る。宇宙そらを見ると、相変わらず月はそこに冷たく輝き続けていた。

 その時、ぱちっと何かが爆ぜる音が響いて、俺の視界に小さな光の玉が現れた。俺はそれにはっとして、意識をここに取り戻す。その光の玉は、夜空に向かって昇っては儚くその姿を消していった。目の前には暖かな篝火がゆらゆらと漂いながら消えることなく灯り、その奥にはかすみが腰掛けている。それを見ると俺は少し安心して肩を下ろした。俺たちの近くに建っているテントの中では麻美と万華がすやすやと寝息を立てている。二人は仲が良さそうに近づき合い、手を握り合って寝ていた。

 夜になり、俺たちはテントを張って一夜を過ごすことにした。周りには木々が闇の奥まで立ち並んでいる。時折風が吹いては、カラカラと木々が揺れ音を奏でた。

 そんな森の中は、いつも寝泊まりしている二条城周辺の風景とは当然ながらまるで異なっていた。それを見て、俺はぼんやりと思い出した。

 「そういえば、京都から出るのって初めてだったな、俺たち。今気づいたけど」

 俺がそうぼんやりと呟くと、それを聞いたかすみが少しぽかんと俺を見つめた後、笑い出した。

 「そんなのも気づいてなかったの?」

 「う、うるさいっ」

 俺は恥ずかしそうに口を尖らせる。しかしかすみのくすくすと笑う声が響いてきて、俺もつられて微笑んだ。

 「確かにそうなのよね、旧時代みたいに何処へでも気軽に出かけられるわけじゃないもの。今じゃあ、文明レベルもたった百年で八百年くらい後退したしね」

 かすみは夜空を見上げて、何かに思いを馳せて懐かしむように目を細めた。俺もそんなかすみを見て夜空を見上げると、遠い昔―――地球が栄えていた頃の事を思って目を細める。

 「確かになー……。今じゃ地球生まれなんてほんの少し……。ほとんどの人類が宇宙そらに飛び出したんだから仕方ないか。俺らの先祖がたまたま運悪く地球ここに取り残されて、たまたま俺たちが地球ここで生まれたんだ」

 俺がそう言うと、かすみも夜空を見上げたまま同意した。

 「そうだね。今のさとるの言い方を引用するなら、私はさとるや麻美や万華にたまたま出会ったんだ。でもそれはとっても幸せな奇跡の巡り合わせだったと私は思う」

 そう言うと、かすみは嬉しそうに微笑んだ。それを見て、俺も微笑む。

 「うん。そうだよな。俺もたまたま偶然かすみや麻美や万華に出会えて、本当によかったと思ってる。ほらみろよ、あの寝顔」

 俺はそう言うと、テントの方を見遣って笑った。するとかすみもテントへと視線を移す。 

 「むきゅう……眠いですよ……」

 「夢の中でも眠いなんて、何してるのよ、万華は全く……」

 かすみが万華の寝言を聞いて呆れたように微笑んだ。

 「微笑ましくっていいじゃないか」

 俺が面白そうに微笑むと、今度は麻美が少し身じろぎをしてむにゃむにゃと口を開く。

 「うるさいよ、全く……痴話喧嘩しすぎだ……」

 「夢の中まで俺たち喧嘩かよ……」

 「ほんと、何やってるんだろうね……って痴話喧嘩って所にツッコミは無しなの!?」

 麻美の寝言に俺がそう苦笑すると、そんな麻美の寝言と俺の言葉を聞いてかすみも苦笑いしかけ、途中で驚き慌ててツッコんできた。俺はそんなかすみを見て少し驚き、不思議そうに首を傾げた。

 「あ、あぁ。だって俺たちそんな感じだろ?」

 「え!?そ、そんな感じってまさかさとるも私のこと……」

 かすみが何故かあわあわとし始め、小さな声で恥ずかしそうに何かを呟いている。ぼんやりと篝火に照らされているかすみの顔がほんのり赤く染まっているのが見えた。

 そんなかすみのことを見ながら、俺は優しく微笑み答えた。

 「だって、家族だろ?俺たちって」

 そう答えた瞬間かすみが落胆したのが見えた。うずくまって顔を上げてくれない。

 俺は何でかすみが落胆したのか分からず、慌てて謝り宥めようとする。

 「お兄は全く、ダメダメですねー……」

 そんな時、万華がむにゃむにゃと小さな寝言を呟いた。





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