―――饒舌者、救出
―――月近宙
「どうだい?僕を捕虜にしてくれよ」
「どういう意味だ」
まだ幼さが表情に残こる少年―――アサギが、眉を顰めて困ったように微笑んだ。
それを見て、怪訝そうに俺は尋ねる。
するとアサギは不満そうに頬を膨らませて、少しふて腐れたように口を開いた。
「どういう意味って……。だって僕、このままじゃ死んじゃうじゃん?でも僕、まだ死にたくないんだもん。僕は、月のためなら命もかけて戦おう!みたいな熱い忠誠心は残念ながら持ってないんだよねー。月に命かけるより、僕はもっと生きて楽しいことしたいな。えーじゃあ、なんで戦ったのかって?うーん、そんなのなんとなくだよね。そんなものだよ、正直。でも、このままじゃ僕死んじゃうじゃん?でも生きたいから、だったら捕虜にして欲しいなぁって。そしたら、僕は生きられるし、君たちは情報を得られる。そしたらWIN-WINでしょ?ほら、WIN-WIN!WIN-WI……」
その時、アサギが酸素残量を見て顔色を変えた。相当やばいらしい。
「と、とにかく、悪い条件じゃないでしょ……?助けてよお願い!」
その時、アサギが手を合わせて懇願してきた。恐る恐る酸素残量を覗き見て、ぎょっとしてまた手を合わせる。
「ど、どうするの?スバル……」
クレハが困ったような表情で俺の顔を伺い見た。俺は少し考え込みながら、その少年のことを見つめる。
真剣そうに拝むアサギの周りでは、警告音がけたたましく鳴り響いており、赤いランプがチカリチカリと点滅していた。
俺は、アサギをじっと見つめる。
「よし、分かった。助けてやろう」
俺がそう言った瞬間、周囲が少しざわついた。しかし、俺は腕につけられた通信機器に向かって話しかける。
「イバラ、聞こえるか?出てくれ」
すると、なんだか不機嫌そうな返事が帰ってきた。声色からして、少し仮眠を取ろうとしていたところのようだった。
「……何?」
「……すまないな、イバラ、ちょっと頼み事があるんだが」
そう言うと、すごく不満げな返事が返ってきた。しかし、その後少し間を置いてから、「何をすればいいの?」とけだるそうに返事が返ってくる。
俺はそれを聞いて、画面の少年を見ながら口を開いた。
「今、半壊した敵のPGに乗る少年が、助けを求めてきた。彼を救出してくれ」
イバラの、はぁ?という怪訝そうな声が耳によく響いた。