―――デュランダル、作戦開始
―――月近宙
『イバラ、聞こえるか!』
俺がそう言うと、イバラの元へ声が届いたらしくイバラの表情が少し動いた。
「聞こえるわよ!ちょっとスバル、どうするのよこれ!何が起きたのよ!」
イバラが焦ったようにそう怒鳴った。エイジの様子に相当驚いているらしい。イバラがここまで焦っているのは珍しかった。俺はそんなイバラの声に答える。
『恐らくだが、あのエイジの口走った言動からするに、エイジは親を殺したギアを見つけて暴走しているんだろう。エイジは昔家族を殺されてるからな。詳しくは聞いたことないが、あいつが何か思い詰めていたことは前から気づいていた。だからこれは、今回エイジをPGに乗せた俺のミスだ。すまない』
「だからエイジあんなこと言って……。全く、なんていうミスしてるのよ、スバル。こっちはすごい迷惑よ。……だからこのミスを切り抜ける策も当然用意したんでしょうね?」
イバラがこちらをまっすぐ向いて、真剣な眼差しを向けた。それは言動にそぐわず、こちらを信頼しきった目だった。そんなイバラを見て、俺は少し口角を上げた。頭を小突いて、イバラの方をまっすぐと向く。
『あぁ、安心しろ、当然だ。勝算は、まだある』
俺がそう言うと、イバラが少し微笑んだ。
「でしょうね。失敗したらただじゃおかないわ。で?作戦は」
『とりあえず、イバラはこのままエイジのサポートを頼む』
俺がそう言うと、少しイバラが眉を顰めた。
「サポート?作戦はそれだけ?」
俺はそれを聞いて、力強く頷く。
『あぁ、イバラの作戦内容はそれだけだ。エイジのことを頼む。大丈夫だ、俺を信じろ』
俺がそう言うと、イバラも自身に満ちた顔で返事をした。
「了解。任せといて」
そう言ってイバラが力強く操縦桿を握った。